2015年8月27日木曜日

〈歌追い人〉

DVDにて待望の「ソングキャッチャー~歌追い人」(マギー・グリーンウォルド監督、2000)を拝見。通俗なエンターテイメントというよりは、私らルーツ・ミュージックに興味を抱くものの関心度合いをくすぐるテーマ性を据えた、女流監督の脚本による作家性の色濃い作品であった。
1907年の時代設定で、旧態依然であった当時の大学アカデミズムの世界では活躍の場が限られていた女性の音楽研究者が、ノースカロライナ州のアパラチア山中での村暮らしへと転じる。ブリテン諸島から移植され、都会に顕著な社会の近代化の影で歌い継がれてきたバラッドの数々に出会い、録音、楽譜起こしと収集を始めるわけだ。主人公モデルの有無や同定はともかく、それらの行為は確かに営まれて現在につながってきた面は否めない。
録音といっても初期の手法で機材も大がかり、レコード盤=蓄音機あるいはラジオといった音楽ビジネスの技術革新と大躍進への端緒が間もなくといった時代設定も絶妙。ムラ意識の強い土地柄と荒っぽく粗野な男性、その対局で悲哀ある女性たちの山の暮らしぶりが描かれる。
主人公の女性研究者のバラッド収集、採譜、出版へもといった活動は、暮らしの中で歌い継いできた人々の目線からは「音楽を盗む」行為ではないかという疑義が、プロットに織り込まれている。ストーリー・テリングとしてもうまいアヤ、この視線、忘れるべからずだな。
視聴前にミュージシャンの出演とパフォーマンスの予備知識はなかったもももの、ブラック系のタージ・マハールはやや取って付けた感じ、アイリス・デメントとの遭遇はラッキー感があり、まずまずと受け止めた。
バラッドはエンドロールを見ると、18曲くらい使われていて、エンディング・テーマでエミルウ・ハリス歌唱のものなど、最も象徴的なのは「バーバラ・アレン」。ストーリーの柱には、こうして現在、記録されているもの以外に、「失われたしまった」楽曲も多々あろうという哀歓もにじませる。
調べてみると市販のサウンドトラック盤は、映画音源というよりは、「インスパイア」もののVAアーティストで、これはこれで興味を持ってしまった。調達しようか。
DVDなんで、スタッフ、キャストのインタビューを流し観ると、この映画の世界観やルーツ・ミュージックに関する認識は、米国社会でも確立しているとはいえないらしい。

「ソングキャッチャー~歌追い人」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

◆追記◆
「歌追い人」にインスパイアされたコンピレーション・アルバム(2015/10/11)

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