2012年12月25日火曜日

25日はリーバ・マッキンタイア

新しいクリスマス・アルバム(CD)のコレクションとして、ウェブ通販で取り寄せ発注していた、ジーン・オートリー(Gene Autry)とリーバ・マッキンタイア(Reba McEntire)が、暦通りの起点日である本日到着。ともに複数のアルバムを基にしたコンピレーション盤というのが共通項。リーバから聴き始め、クリスマス・スタンダードが中心の編集と思い込んでいたものの、そうではなかった部分に新鮮な驚きがあった。トラディショナル・クレジットの楽曲も、他者のアルバムでは取り上げられる機会が稀?とか、あと、ヴァースもしくはこれに準じた前ふり語り付きもジャズ系ではないコンテンポラリーでは珍しいと感じた。より若いころと思わせる歌声による歌唱は安定。日本での認知度からはうかがい知れない、カントリー・シンガーとしての実力、長期にわたる人気・キャリアの一端を垣間見れた。
クリスマス・ソング鑑賞、手持ち分含め今シーズンは、カントリー系重点で聴き込めた。スタンダード以外、近作オリジナルではやはり、フィドルやバンジョーの調べが心地よいロンダ・ヴィンセント(Rhonda Vincent)の「クリスマス・タイムアット・ホーム」が出色。あと、アルバムではエミルウ・ハリス(Emmylou Harris)の『ライト・オブ・ザ・ステイブル』(2004年の増補盤)にあらためて感心。リッキー・スキャッグス(Ricky Skaggs)はじめ演奏も最高、かけ流すよりはオーディオ向きなのかと思う。これもスタンダードとあまり知られてないトラッド、新しい曲のバランスがほどよい。アルバム表題曲は1975年にシングル先行、ニール・ヤング、ドリー・パートン、リンダ・ロンシュタットによる豪華なサポート・コーラスなどもあり満たされた気分に。
通年で親しんできた(広義の)ゴスペルから、もう少し深めたかったというのが現在の心境。ニグロ・スピリチュアル系では「ゴー・テル・イット・オン・ザ・マウンテン」がある程度幅広く知られているか。今回、カントリー系のバージョンには当たらなかった。
日本標準でいくと、クリスマス(の雰囲気)は25日で終了。しかし、クリスマス・アルバムはホリデイ・アルバムでもあるし、個人的には年明けまで聴いていくことに。それにしてもこの冬は早くて厳しい。

2012年12月23日日曜日

ロバータ・フラックのホリデイ・アルバム

今シーズン新規購入したクリスマス・アルバム(CD)、レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)の『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』の後は間が伸びてしまったが、『ケニーとドリーのクリスマス(Once Upon a Christmas)』ロバータ・フラック(Roberta FLack)の『christmas songs』の2点まで。ともに、初発バージョンの再編集・リミックス盤というところに共通点あり。クリスマス・アルバム、ぅむ、米国じゃ最近、「ホリデイ・アルバム」といことが多いみたいだが、このジャンル、こうした形でのリ・リリース頻度が高いようにも思われる。その意味合いは???レディ・アンテベラムのアルバムも増補バージョンだし。
私にとって、ケニー・ロジャース(Kenny Rodgers)とドリー・パートン(Dolly Parton)の盤、ロバータ・フラックの盤とも、店頭にての初見。ドリーのクリスマス・アルバムは1枚も持っていなかったし、デヴィッド・フォスター(David Foster)のプロデュースものということで、前者には食指が動いた。『ボディガード』(ミック・ジャクソン監督、1992)、ホイットニー・ヒューストンによる「オールウェイズ・ラブ・ユー」のヒットは、このクリスマス盤初出の8年ほど後になるということか。
気分転換、趣向を変えてちょっと試してみたロバータ『christmas songs』(1997年初発の改訂盤?)はかなりはまってしまった。選曲はトラッドが半分程度。ソウルフルというのでもない黒人音楽の香り、ブルーに沈まないソフトなジャズフィーリングの歌唱が心地よい。アレンジがまた独特、定番「オー・カム・オール・イェー・フェイスフル(アデレス・フィデレス)」など事程左様に。新作系もまたロバータ・フラッタならでは節回しで。のオリジナル盤にも興味がわくが、、、。

ロバータ・フラック『christmas songs』の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

「ホリデイ・アルバム」についての追記
そういえば、今月上旬、第55回グラミー賞のノミネートが発表、「最優秀トラディショナル・ポップ・ボーカル・アルバム」にキャロル・キング(Carole King)の『A Holiday Carole』とあったが、これはちょうど1年前によく聴いていた『A Christmas Carole』なんだろうね。日本盤か。

2012年12月22日土曜日

♪ハーク、ザ・ヘラルド・エンジェルズ・シング

今シーズンのイッツ・ア・ワンダフル・ライフ、「素晴らしき哉、人生!」(フランク・キャプラ監督)はBS放送の録画で視聴。父の帰りを待ちつつクリスマスの集いへ、子どもがピアノ演奏の練習をしている聖歌は「ハーク、ザ・ヘラルド・エンジェルズ・シング」。「天使の歌を聴こう!」と呼びかけているわけで、守護天使が登場する、このファンタジー映画相応の洒落がきいている。
この楽曲、歌詞はメソジスト派系の讃美歌、曲は何と、由緒あるメンデルスゾーンだそう。カントリー系ミュージシャンのクリスマス・ソング歌唱は讃美歌系がよく馴染むと思うが、「ハーク、ザ・ヘラルド・エンジェルズ・シング」も然り。キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)のは、とりわけお気に入り。やはり、メソジスト派に縁が深い「アウェイ・イン・ア・メインジャー」もカントリー歌手好みで、かなりの確率でクリスマス・アルバムに収録されているとの心証、メルクマールですなぁ。女声はだいたいどれもいい感じ、リッキー・スキャッグス(Ricky Skaggs)も思い出して聞きたくなる。
「素晴らしき哉、人生!」で、ジョージ・ベイリー、メアリー夫妻の思い出の曲というと、やはり「バッファロー・ギャルズ」。前から気になってはいたが、ミンストレル(ショー)の系統なのかな。今度、調べてみましょう。

2012年12月17日月曜日

♪フェリス・ナヴィダ

クリスマス・アルバムを傾聴する日々も佳境へ。好んで聴き込んでいなかったセリーヌ・ディオン(Celine Dion)のCD『THESE ARE SPECIAL TIMES』を流してみると、「Felis Navidad」に耳にとまる。スペイン語の「フェリス・ナヴィダ」は、英語では「メリー・クリスマス」。そう、プエルトリコ出身のブラインド・シンガー&ギタリスト、ホセ・フェリシアーノ(José Feliciano)がオリjジナルでした。
ラテン系ではよく知られたクリスマス・スタンダード曲らしいが、英語圏系ミュージシャンのバージョンは少ない気がする。人々の安寧と幸せを祈る至ってシンプルな歌詞が、ラテンのリズムで語られる。ラテン的な陽気さを捨象して深みのあるアレンジを施したブラス・ロックのシカゴ(Chicago)と、ポルトガル語を交えて歌った小野リサの演奏は対照的だけど、ともにとても気に入っていて愛聴。フェリシアーノのオリジナルも聴きたくなってしまった。

2012年12月13日木曜日

アラン・ローマックス

今年は冬の仕上がりが早いなぁと、最寒期に向けて気合いを入れ直すこのごろ。
『American Ballads and Folk Songs』に前後して、『アラン・ローマックス選集 アメリカン・ルーツ・ミュージックの探究 1934―1997』(ロナルド・D・コーエン編、柿沼敏江訳)が届き、さすがに日本語の方が得意なので、こちらを先に読み通してしまう。何よりも、アラン・ローマックス著作ということで、邦訳自体が画期的だったのでは(2007年発刊)。
『American Ballads and Folk Songs』は、父ジョンとの共著で、ディスクに直接焼きつけるディクタフォンという録音機材で現地収集したフィールドワークが基になっており、この選集では、それら収集の経過の実際が語られ、フィールドのイメージが浮かび上がってきたのが、予習としても収穫だった。
レッドベリーを刑務所から解放するためのはたらきかけといった、よく知られた逸話などのほかで、認識が薄かった経歴も概括できた。民俗音楽の収集は北米にととまらず、カリブの島嶼や西欧などワールドワイドに及び、これらの経験と蓄積が「計量音楽学」、「計量舞踏学」の学際的研究傾倒に結びついていったという。たぶん本邦ではほとんど知らていなかった、アランのこうした学究活動は、マーガレット・ミード、グレゴリー・ベイトソンらに連関する文化人類学として、見識は真っ当に思えた。基底にエコロジカルな思考が流れているのも確か。
技術の進歩に支えられた録音・録画機材を駆使し、失われつつある楽曲・民俗パーマンスの記録、保存、研究に取り組む一方、もちろんテクノロジーの限界も心得る。都会のカントリー演奏家を「シティビリー」というのだそうだが、民俗音楽にこそ、そのヴァナキュラーな価値を一貫して最も重視するアランの慧眼に肯かせられる。
この書籍もサンプルCD付き、これから楽しむことに。

◆追記◆
放送録画ストックからジョン・ウー監督の「M:I‐2(ミッション・インパッシブル2)」(2000)を流し観して、内容としては「どうでもよかったな」と引けた感想を抱きつつエンドロールの楽曲クレジットをみると、スペイン語かと思われるタイトルに「アラン・ローマックスのアレンジによる」の記載を発見。3曲くらいはあったか。ローマックス収集曲が散りばめられていたとは。「どの曲?」と認識しないままに鑑賞を終えて、録画自体も消去してしまった。その後、サウンドトラック盤のデータなどをリサーチしてみたが、ローマック関係は収録されていないようだ。オリジナルスコアはハンス・ジマーだけど、どんな経緯でアラン・ローマックスが取り上げられたのやら。(2015/08/26)

2012年12月8日土曜日

レオン・ペイン

「ブルー・クリスマス」オリジナル録音、アーネスト・タブ(Ernest Tubb)のストックを探していたら、「アイ・ラブ・ユー・ビコーズ」とう楽曲に遭遇。この曲、知人遺品からちょうど発掘して聴いていたエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)のCD『The Sun Sessions CD』に、マスターのほか3つのテイクが収録されていて、驚きと喜び。しかも、オリジナルはパフォーマンス・作とも、以前、ハンク・ウィリアムス(Hank Williams)の歌唱で知られる「ロスト・ハイウェイ」の原作者であると記した、ブラインド・カントリー・シンガー、レオン・ペイン (Leon Payne)だったというから、興味倍増である。
ウィキペディア英語版などをみせていただくと、レオン・ペインの楽曲はカバーが多々あり、アメリカン・ルーツ・ミュージックの深みに触れた思い。手持ちで聴けた分のカバー・バージョンもそれぞれ傾聴に値するし、オリジナルも味わい深しである。

2012年12月6日木曜日

「恋のロンドン狂騒曲」

ウディ・アレン監督の「恋のロンドン狂騒曲」、製作は2010年とあったので、「ミッドナイト・イン・パリ」が本邦公開が先だったということかな。一般には、「ミッドナイト・イン・パリ」の方が好まれる映画なのだと思う。しかしながら、ウディ・アレンのファンとしては、「星に願いを」の歌唱が流れる導入からして、近作では一番、ストーリーテリングにマッチしたサウンドトラックが楽しめる作品であった。
クレジットはなかったと思うが、80~90年代のアレン作品の多くで音楽監督を務めたディック・ハイマン調が復活している。音楽のセンスにおいてソフィスティケイテッドの意味を教えてくれた、これぞアレン映画!のサウンドである。かつては、ピアノ演奏も採用されていたディック・ハイマン、ご高齢と思われますが、お元気なのでしょうか。
この映画、おそらくはプロットの収束において、何かしらの不満が持たれるのだろうが、その他は、アイロニーに満ちたコミカルな台詞回しで、繰り返し作劇されてきた恋のから騒ぎとパーソナルな不安がモチーフのアレン・ワールドそのもの。不安症候群のバックグラウンドに、老いがクローズアップされてきたのもむべなるかな、監督も相応の齢なのだから。

「恋のロンドン狂騒曲」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★☆☆☆
⇒アレン・ファンにはプラス

2012年12月5日水曜日

カントリー発のクリスマス・ソング

カントリー系のクリスマス・シーズン楽曲を聴きながら、「カントリー発のクリスマス・ソング」って何と考えてみた。スピリチュアル、ヒムやセクレッド・ソングなど讃美歌系を除くと、やはり、ジーン・オートリー(Gene Autry)の「フロスティ・ザ・スンーマン」「サンタ・クロースがやってくる」「赤鼻のトナカイ」の3曲が著名度が抜群なのかな。「フロスティ・ザ・スノーマン」はロレッタ・リン(Loretta Lynn)、「サンタ・クロースがやってくる」はエルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)とリアン・ライムス(Leann Rimes)によるリミックス・デュエットの歌唱が、それぞれ相当のお気に入りで、なるほどカントリーの香りがするが、「赤鼻のトナカイ」ではにわかにカントリー系の気に入ったパフォーマンスは思いつかない。而して、この3曲、お子様(ファミリー)仕様というのには意外感あり。
そう、エルヴィスといえば、「ブルー・クリスマス」。この楽曲を初めて録音したのは、アーネスト・タブ(Ernest Tubb)だったといのは再発見。こちらは確かに、レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)しかり、カントリー系ミュージシャンの録音は、それなりに多いように思われる。アーネスト・タブのオリジナル歌唱は聴いたことがないような、、、、と、よぎり、ちょっと探してみる。
これら4曲、第二次大戦後の5~6年後につくられている共通性もおもしろいところ。
しかし、カントリー系では、讃美歌やキャロルの歌唱に、深い味わいがあるのも魅力。引き続き、こちらも考えてみることに。

2012年12月3日月曜日

今シーズンも、カントリー畑のクリスマス・ソングで

レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)の『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』の後は、ニュー・リリースまたは未収集のクリスマス(ホリディ)・アルバムを仕入れていないが、早や12月に突入。クリスマス・ソング愛好家には、短い1か月あまりで、一年の音楽放浪の総括としても、やはり、カントリー畑を重点的に聴いていくことに。
さっそく、何枚かのコンピレーション盤や例の『エルヴィス・クリスマス・デュエット』などをかけ流している中、ワイノナ(Wynonna)って、アシュレイ・ジャッドとは異父姉妹だったと思い当たる。そう、母親は母娘デュオ、ジャッズ(Judds)のナオミ・ジャッド(Naomi Judd)。カントリー・ミュージック界ではよくあると思われる、這い上がりでカントリー・スターに上りつめたナオミの「日系?」説も何かで読んだ記憶があるが、にわかに真偽は分からず。
ワイノナのボーカルにもまして、アシュレイのフィーリングと演技のシブさは玄人好みだな。華があるラブ・コメ向きの美人というのではなく、サスペンスや社会派系にフィットした安定したパフォーマンス。「正義のゆくえ  I.C.E.特別捜査官」(ウェイン・クラマー監督、2009)も、まずまずでした。フィルモグラフィは、なかなか興味深く、未見は気になるもの多し。

2012年11月29日木曜日

「人生の特等席」

クリント・イーストウッド側近の監督デビュー作という「人生の特等席」(ロバート・ロレンツ監督、2012)。エイミー・アダムスが助演ということで早々に鑑賞。IT技術に依存したデータ・マネジメントに贖う現代のベースボール・ビジネス界で、心身に蓄積したキャリアの誇りを抱きつつ頑固に生きる老スカウトの生き様という、ストーリー・テリング自体、わが国のシニア・シルバー世代の消費志向に合致した製作であったと思う。
確かルイジアナ州の州歌で、、、などと、カントリー音楽のファンなら一言発したくなる、「ユー・アー・マイ・サンシャイン」。妻の墓標を前にその歌詞を噛み締めるイーストウッド、あるいは、カーリー・サイモン、レイ・チャールズのバージョン挿入と、この楽曲用い方が、映画のトーンを決め監督の嗜好を想像させる。眼を患った父のサポートと親子関係の再構築のため、ノースカロライナ(だったか?)へのスカウト旅行に同行した弁護士役の娘エイミーが、スカウト業の若者と地元のパブで踊るダンスは「クロッキング」といってたが、これは、アイリッシュ・フォークか。ストリート・ブルースマンのパフォーマンスとか、土地柄の描出が楽しめた。米国流の「ベースボール好き」温度も体感できて納得。
通して、エイミーとこの若者とのラブ・ストーリーのオチ、父娘関係がこじれる契機となった幼女時代の事件の顛末などプロットに、甘さがあるのが惜しいところかな。

「人生の特等席」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆
⇒シニア・シルバー世代はプラス

2012年11月27日火曜日

フォーク・リバイバル

CDショップ、店頭のワゴンセール、輸入もの1,000円盤セールから、ニューポート・フォーク・フェスティバルから拾った1960年、1959年の各3枚セットを聴き流す。ブルースやブルーグラスのパーフォーマーも出演、日本風の「フォーク」とは異なるコンセプトと見受けられれる。
前史の労はあったにしても、1959年スタートのニューポート・フォーク・フェスによって、フォーク・リバイバルはムーブメントに拍車がかかったのかなと思いを巡らしつつ、、、。而して、この「フォーク・リバイバル」というコンセプト、わが国でも同様の動きがあったにも関わらず、普及・浸透していないなぁと惜しい気持ちも。同系の畑から、マスを対象にした流行歌の創作といったシンガー・ソング・ライターの活躍で、音楽産業が膨張していった時流を経て、現在はデジタル複製技術の進化と著作権といった新たな潮目で、音楽のCD媒体が主役を落ちる日が秒読み段階であるように思われるし、複雑な音楽鑑賞ごころ。
繰り返しになるが、同時期のムーブメント中心人物の一人、ピート・シーガー(Pete Seeger)と異母弟妹、マイク(Mike)、ペギー(Peggy)の活躍が味わえて、都会人・インインテリゲンチャによるアプローチとしての「リバイバル」の意味合いに関心。マイクのニューー・ロスト・シティ・ランブラーズ(The New Lost City Ramblers)もよい味わい、ヒルビリー・ブルース調。ピート家はまさにフォーク・リバイバルのロイヤル・ファミリーか!
さて、戦前、ピートが父チャールズと同業が縁で助手をしていたという、フィールド楽曲取集の研究家・ローマックス(Lomax)父子の『American Ballads and Folk Songs』に着手。「フランキーとジョニー」も、「黒人の悪人」の章立てで「Frankie and Albert」として収録されてる。前ふりの注では派生バージョン300との記載も。ゴスペルで課題だったホワイト、ブラックの系統も、この時代、「ホワイト・スピリチュアル」、「ニグロ・スピリチュアル」の章区分に。さて、どういうことでありましょうか。
本日は初冬の嵐、まだ、冬支度終わってないのに、、、

◆追記◆
♪北国の少女(2011/11/15)
アニタ・カーターとミルト・オークン(2012/09/25)
ミシシッピつながりで、(2012/10/30)
♪グランド・クーリー・ダム(2013/03/28)
♪マン・オブ・コンスタント・ソロウ(2013/07/25)
ニュー・ロスト・シティ・ランブラーズに耳を傾ける(2013/10/22)

2012年11月19日月曜日

『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』から

今朝は積雪、いよいよ冬に向かって、、、
レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)のクリスマス・アルバム『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』、アルバム・コセプトを表している導入曲は「ホリー・ジョリー・クリスマス」。馴染んだように聞こえる通俗性のあるつくりは、「赤鼻のトナカイ」で知られたジョニー・マークス(Johnny Marks)の作詞・作曲であった。マイ・ストックで他のバージョンは?と考えてみるが、にわかに思い当たらず。録音は、そう多くないと思われる分、気にかけておくことに。
5番目はのトラックは「ディス・クリスマス」。前曲の延長上にあるコンセプトで、結構最近の楽曲かと思いきや、ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)作・オリジナルは1978年発表ということ。最も得手ではないソウル系か。アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)の歌唱が思い出されるが、オリジナルの記憶は薄く、これも課題に。

2012年11月17日土曜日

今シーズンは、レディ・アンテベラムから

今シーズンのクリスマス・アルバム第一弾として、レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)の『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』(輸入盤)を購入、聴き始めたところ。邦盤は出なかったミニ・アルバムの拡充盤だったかな。書下ろしオリジナルは1曲?と定番を中心に12曲で、カントリー・テイストというよりはポップな仕上がりでき聴きやすい。特に、「アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス」、「ファースト・ノエル」、「レット・イット・スノー、レット・イット・スノー、レット・イット・スノー」、「ハブ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス」、「シルバー・ベルズ」といった定番中の定番は、原曲のよさが生きつつユニットの持ち味もうかがえる好演と思う。
そのほか2~3曲気になるが、しばし聴き込んでみることに。

『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』の評価メモ
【自己満足度】=★★★★
【お勧め度】=★★★★

2012年11月10日土曜日

♪フランキーとジョニー

手持ちのミシシッピ・ジョン・ハート((Mississippi John Hurt)録音を探してみると、マーティン・スコセッシ・ブルース・プロジェクトのコンピレーションCD集に「フランキー」が収録されていた。オリジナルは1928年らしい。ジョン・ローマックスの採集にもかかった、このトラディショナル楽曲、今では「フランキー・アンド・ジョニー」として、巡り会うことが多く、ロバート・アルトマン監督の遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006)では、リンジー・ローハンが熱唱していたのが思い出される。
『Frankie and Johnny - 15 different accounts of the infamous murder ballad』という、リナ・ホーンやルイ・アームストロングの歌唱、エロル・ガーナー、ベニー・グッドマン、デューク・エリントンらのパフォーマンス・セレクション集の珍しいCDも愛聴しつつ、まことにもって、この「殺人物語唄」というジャンルの存在、そして、「フランキー・アンド・アルドート」など、この楽曲には三桁を超える亜種が存在していることへの理解は進まない。人口に膾炙した俗謡として存在しているよう。成立起源も諸説あるようで、ブルース、ジャズ、カントリー、フォーク等々の広くルーツ系で演奏されていることも興味深い。こんな系統を歌い継ぐ米国人って、どんな人たち?
セレクションCDにはジミー・ロジャースの歌唱も。こちらは1931年採録か。ジョン・ハートのパフォーマンス、あらためて聴き入る。

◆追記◆
TV放映録画で「ナイル殺人事件」(ジョン・ギラーミン監督、1978)を観ながら、既視感がつのりつつ、いつどこでだったか思い出せない。たぶん、封切り間近の映画館だと思うが。「オリエント急行殺人事件」(シドニー・ルメット監督、1974)に続いてのアガサ・クリスティ原作企画で、ベティ・デイヴィスからマギー・スミス、オリヴィア・ハッセー、ロイス・チャイルズら豪華スターキャスト。婚約破棄されて「ストーカー」と化したミア・ファローが略奪婚夫妻の新婚旅行を追ってナイルの船中劇。心情吐露の場面でふた節くらいミアが歌ったのが、この「フランキー・アンド・ジョニー」であった。肝心なのは、最初にこの映画を観た時には、これがバラッドの一節であるなどとはまったく意に介さないということ。齢とともに映画の楽しみ方は深まるようで。もちろん、原作にはないよねと考えつつ、脚本家を調べたらアンソニー・シェーファーだった。「ウィッカーマン」(ロビン・ハーディ監督、1973)は結構面白かったな。そう、ピーター・シェーファーとは双子の兄弟なんだね。
ミア・ファローははまり役でした。贔屓のジェーン・バーキンも出ていたし。(2013/12/24)

2012年11月1日木曜日

マリアンヌ・フェイスフルつながりで、

ロックファンだった知人遺品のレコード・CDを整理していて、エリオット・マーフィー(Elliott Murphy)、グレアム・パーカー(Graham Parker) といったコアかつラジカルで「大人っぽい?」彼の嗜好のマニアックさと重厚感に、あたらためて敬意をいだきつつ、たとえば、ベイ・シティ・ローラズ(Bay City Rollers)といった、ポピュラーな音盤が数枚まぎれ、その意味について、考えさせられることが何度かあった。
たまたま録画で視聴した、「あの胸にもういちど」(ジャック・カーディフ監督、1968英=仏) から、マリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)のアルバムが1枚あったことを思い出す。この意味合いは、、、、そう、エリック・バードン(Eric Burdon)、ジ・アニマルズ(The Animals)の「朝日のあたる家」に触発された、バージョン探究なんだろうなと。彼は意外とディランは薄くて、ジョーン・バエズ(Joan Baez)の音源もなかったが。
「あの胸にもういちど」のマリアンヌは、結構よかった。ゴダールものや同時期の「アンナ」も観ていると記録していたが、にわかに思い出せない。本邦公開作品では近年も多々出演作があるよう。こちらも認識薄かった。歌声から仕切り直してみるか。
アラン・ローマックス採集バージョンが最も人口に膾炙しているという「朝日のあたる家」。さらにさかのぼって、グレート・ブリテンのバラッド起源という説もあるということだが、、、これも今後の課題。

2012年10月30日火曜日

ミシシッピつながりで、

ミシシッピ・ジョン・ハート((Mississippi John Hurt)つながりで、録画ストックから「ミシシッピ・バーニング」(アラン・パーカー監督、1988)を観て、店頭で目にとまった廉価版CDセット『THE NEWPORT FOLK FESTIVAL 1960』を聴き始める。
「ミシシッピ・バーニング」はその内容に物議もあろうが、映画としておもしろい出来栄え。音楽演出の基軸は黒人系のゴスペルと思われるものの、私の現在の認識レベルからは、手がかりとなるサジェスチョンは得られなかった。今後の要調査。
ジョン・ハートが再発見されニューポート・フォーク・フェスに登場したのは、もう数年後らしいが、1960年の録音には、ブルースマン、ジョン・リー・フッカー(John Lee Hooker)やブルーグラス畑からフラット&スクラッグス(Flatt & Scruggs)が登場、そしてファミリーでフォーク・リバイバルに貢献したシーガー家からピート(Pete)、マイク(Mike)、ペギー(Peggy)の3兄妹のパフォーマンスが聴けたのが新鮮だった。リバイバル・ムーブメントの先駆けのころ、収録曲、他の縁者も興味深く、しばし対峙中。

2012年10月26日金曜日

「イエロー・ハンカチーフ」

「幸福の黄色いハンカチ」(山田洋次監督、1977)が米国に里帰りしたバージョン「イエロー・ハンカチーフ」(ウダヤン・プラッサド監督、2008)を録画で視聴。山田洋次プロットへのリスペクトがよく分かる、真摯なリメイクで、ルイジアナ辺り、南部の設定は妥当と思うが、評(お勧め度)は可もなく不可もなし。ただ、サウンドトラックで、耳が反応した挿入歌はブルース調。エンドロールでも流れて、ミシシッピ・ジョン・ハート((Mississippi John Hurt)の「ドゥ・ロード・リメンバー・ミー」と確認できたが、この旋律はカーター・ファミリーの「ワリイド・マン・ブルース」?って、思い当たる。
ちょうど、読書・探索中なので手持ちの本・資料で調べてみると、カーター・ファミリーのオリジナル「ワリイド・マン・ブルース」は1930年録音。ジョン・ハートの歌詞はゴスペルなんだろうな。元歌なのか、別系統のバージョンなのか、さらなる探究に思い悩むことに。ジョン・ハートも、もっと聴いてみなきゃ。

イエロー・ハンカチーフ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年10月23日火曜日

「最強のふたり」

東京国際映画祭発で、本邦でもヒット中という「最強のふたり」(エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ監督、2011仏)を拝見。それなりに楽しめたのは確かだが、この系統のコメディを見ると、わが国を顧みて、日本語表現の有様に閉塞を感じてしまった。
同じフランスのフランシス・ヴェベール監督作品なんかも相当のブラックかつシニカルな語り口、コメディの狂言回しに「障害者」が配置されるのは、ボビー&ピーター・ファレリー兄弟監督の常套。欧米スケールで、「最強のふたり」は、特段、奇をてらった演出ではなかったものの、特筆は介護人を演じたオマール・シーのネアカパワーによるブラッシュアップだな。
内向きの閉塞感、突き抜けるには、やっぱ洋画を観てマインドを上げていくのがよしか。


「最強のふたり」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2012年10月9日火曜日

♪ケンタッキーの青い月

昨日までに、ロックファンであった知人から引き継いだレコード約1,000アイテム、CD約900アイテムの整理にメドをつけ、とりあえず、アーティスト別で引き出せるようにする。アルバムタイトルかパフォーマー名か判別に苦心の盤も多々、労をかけて調べつつ、彼の嗜好はパンクとプログレッシブからの発展系に向いていると概括、ブリティッシュ系に重きが置かれ、それられのルーツをたどったコレクションも垣間見られた。
ちょっと気になって、1枚かけてみたのが、デイヴ・エドモンズ(Dave Edmunds)とニック・ロウ(Nick Lowe)らによる英系バンド・ロックパイル (Rockpile) で、1980年のライブを中心としたCD『PROVOKED BEYOND ENDURANCE』。最近はあまりロックを聴いていなかったが、私の好きなシンプルなサウンドの、難解でなく分かりやすいロックで、とりわけ、カントリー&ブルーグラス・シーンとロックを結ぶ、ビル・モンロー(Bill Monroe)の歴史的名曲「ブルー・ムーン・オブ・ケンタッキー」が収録されていることに感激してしまった。その次の曲もカントリー調だが、、、これは?と思案、調べてみようかというところ。
 そう、この時代のニック・ロウは、カーター・シスターズの次女、ジューン・カーター(June Carter)とカール・スミス(Carl Smith)の娘であるカーリーン・カーター(Carlene Carter)と結婚していたという話を思い出し、調べてみると、カーリーンとロックパイルのコラボレーション・アルバムがあるらしい。これもまた、聴いてみたくなってきた。

2012年10月8日月曜日

♪ドント・フォゲット・ディス・ソング

これもウェブ通販の恩恵、新刊の『the Carter Family : Don't Forget This Song 』(著作:Frank M..Young/David Lasky)が本日届く。コミック仕様本に、11トラックのCD付きと,、お買い得感プラス、グラフィック・イメージでカーター・ファミリーに親しめる高揚感が心地よい。こんな出版物がいまどき、、、、とは、米国においては、リバイバルの気運があるのか。そこにも関心。
 CD収録は、「ハロー・ストレンジャー」、「ユー・アー・マイ・フラワー」、「シングル・ガール、マリイド・ガール」など、メキシコ・ボーダー・ラジオ局時代のキャリアから、1939年録音らしい。オリジナルの状態がよいのか、現代技術によるシェイプアップによるためか、クリアな音楽が楽しめる。A.P.のボーカルにも新鮮さがある。
 アニタ・カーターからの続きで、しばらくは、これらで堪能できそう。

2012年9月28日金曜日

アニタ・カーターとドクター・ストレンジラブ

アニタ・カーター(Anita Carter)のCDアルバム『RING OF FIRE』から気になった楽曲をもう一つ。アニタのクレジットとなっている「ジョニー、アイ・ハードリー・ニュー・ユー」。スタンリー・キューブリックの「博士の異常な愛情」(1964)で、よく知られた旋律。他の映画でも耳にすることが比較的多いメロディーはアイルランド系民謡と記憶していたが、調べてみると、南北戦争の時代にマーチとしてスコア化されたポピュラー楽曲「ジョニーが凱旋するとき(ホエン・ジョニー・コムズ・マーチング・ホーム)」で、その源流にあたるのは「ジョニー、アイ・ハードリー・ニュー・イェー」というトラディショナル・フォークなのだそう。
確か、ほぼ同時期に製作された、南北戦争パートのある「西部開拓史」(監督:ヘンリー・ハサウェイ 、ジョン・フォード 、ジョージ・マーシャル、1962)でもマーチ曲が挿入されていた。南北戦争にまつわる米国史と厭戦(反戦)気分を象徴する位置にある楽曲なのかな。
当該歌唱は、ミルト・オークン(Milt Okun)プロデュースによるニューヨークではなく、ジェリー・ケネデイ(Jerry Kennedy)によるナッシュビルの1962年録音で、アニタが古謡をベースにアレンジしたバージョンということらしい。いわゆるカントリー調ではない、フォークスタイルの印象、この意味合いも興味深いところ。

◆追記◆
♪ジョニーは戦場に行った、なの?(2014/03/02)

2012年9月25日火曜日

アニタ・カーターとミルト・オークン

アニタ・カーター(Anita Carter)のCDアルバム『RING OF FIRE』を聞きながら、フォーク調の編集が気になって、ブックレットを参照しつつ、少しく調べてみた。1964年のニューヨーク録音は、ピーター・ポール&マリー(Peter, Paul and Mary)、ハリー・ベラフォンテ(Harry Belafonte)、ブラザーズ・フォー(The Brothers Four)、ジョン・デンバー(John Denver)ら多くのミュージシャンでを手がけ、フォーク・リバイバル期に、大衆への訴求力ある音楽製作で力量を発揮したミルト・オークン(Milt Okun)の役割が大きかったことが判明した。
ボブ・ディラン(Bob Dylan)やトム・パックストン(Tom Paxton)楽曲採用のほか、「ノー、マイ・ラブ、ノー」、「マイ・ラブ・ラブズ・ミー」などの選曲やアレンジがオークン。オークンの采配が生きた歴史的録音となっているわけだが、解けなかった疑問も。
「ノー、マイ・ラブ、ノー」をタイトルとする曲は、トラディショナルとしてクレジットがあるが、PP&Mの「悲惨な戦争(Cruel War)」として知られたもので、こちらではストゥーキーとヤーロウの作となっている。歌詞に変わりないようだが?
「マイ・ラブ・ラブズ・ミー」は、古いシャンソンの「愛の喜び(Plaisir d'Amour)」の旋律。といえば、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)の「好きにならずにいられない(Can't Help Falling In Love)」の録音が数年先行しているのに思い当たるが、こちらは異なる歌詞。クレジットにはレイ・エヴァンス(Ray Evans)とジェイ・リビングストン(Jay Livingston)とあった。アルフレッド・ヒッチコックの「知りすぎていた男」(1956)の劇中歌「ケ・セラ・セラ」やクリスマスの定番「シルバー・ベル」など、映画畑に縁が深いヒットメーカーコンビ、このシャンソン翻案バージョンはどのような敬意と経歴があるのか?と、、、

2012年9月24日月曜日

〈ゴーストワールド〉に生きる

アナログ放送受信時代の録画ストックを思い出して、「ゴーストワールド」(テリー・ツワイゴフ監督、2001)を観る。ソーラ・バーチスカーレット・ヨハンソンのボリューム感が、学卒で社会へと踏み出すティーンエイジャーのリアルな日常を体現。ティーン好きのコンテンポラリーなパンク、ロック感覚から入っていくが、ジャズ、ブルース、ラグタイム等のルーツ系コレクターの中年男が狂言回しとなる。
サウンドトラック、楽曲面では、聴き直して再認識した部分多々あるものの、秀逸は、やはりスキップ・ジェイムス(Skip James)。「デビル・ガット・マイ・ウーマン」との出会いいいじゃない。モチベーションが妙にかぶってしまう。
さて、私の乗れるバスはやってくるか?

2012年9月19日水曜日

アニタ・カーター

週明けに待ち望んでいたカーター・ファミリー、メイベル・カーターの三女、アニタ・カーター(Anita Carter)のCDアルバム『RING OF FIRE』が届く。探しものへのアクセス、まことにインターネット・オンライン社会の利便性に感心、ありがたさも身に染みる。
CDは1962~1964年録音のオリジナル・レコード再編盤なのかな。製作時期がフォーク・リバイバルの隆盛という時代背景を反映し、アルバム・コンセプトは「フォーク・ミュージック」に聞こえるものの、天性の優しく柔らかな歌声と「ガール・ネクスト・ドア」感の親しみやすさに魅了されてしまった。私見ではファミリー一番の美貌と美声。
収録曲は、当時のコンテンポラリー・フォーク、トラディショナル、カーター・ファミリー・クラシックがほどよいバランスで、興味深く聞ける。意外なところでは、初期ディランの「フェアウェル」。ふと考えたのだが、表題曲の「リング・オブ・ファイア」はジョニー・キャッシュより先に録音していたのか。この曲も含めたて、アニタ自身はソロ活動において商業的な成功を得ていないが、果たしてそれは不幸なのか、幸いなのか?とりあえずこのアルバムを聞けることは、リスナーにとって心穏やかなことといえる。
とりわけファミリー・クラシックには誘引、「アイ・ネバー・ウィル・マリィ」に心動かされ、長女・ヘレンのコーラスでサポートされた十八番、「ワイルドウッド・フラワー」もまさにお家芸の秀逸さである。
こうした歴史的録音の米・英盤CDでは、ブックレットが充実しているのも嬉しい。何分、本邦文献では情報量自体が不足。当面はアニタに没頭しつつ、読解に精を出すことに。

◆追記◆
♪リング・オブ・ファイアー(2011/12/07)
アニタ・カーターとミルト・オークン(2012/09/25)
アニタ・カーターとドクター・ストレンジラブ(2012/09/28)
アニタ・カーターとハンク・ウィリアムス(2014/02/25)
ディランの♪フェアウェル(2014/06/01)

2012年9月17日月曜日

隠れた、カントリー・ミュージック映画

ゴールデンラズベリー賞候補の常連でもあるし、自分の視聴嗜好からは最も遠いジャンルと思い込んでいた、「スティーヴン・セガール」ブランドのプログラム・ピクチャー[沈黙の断崖」(原題:Fire Down Below、フェリックス・エンリケス・アルカラ監督、1997)を、TV放映録画にて鑑賞。ケンタッキー州のとある田舎街が舞台で、ステレオ・タイプなヒルビリー堅気をプロット・ベースにしたヒーロー・アクションとロマンスが展開される普通の通俗映画。関心したのは、やはり、要所に典型的なカントリー・ミュージックを配していることと、ネガティブなカントリー地域の描出。
映画出演では実績のある、クリス・クリストファーソン(Kris Kristofferson)、レヴォン・ヘルム(Levon Helm)が、名前のある役をあてがわれているほか、マーティ・スチュアート(Marty Stuart)、トラヴィス・トリット(Travis Tritt)らが劇中演奏シーンでミュージシャンとして登場。鑑賞後、気になって調べてみると、ほかに、ランディ・トラヴィス(Randy Travis)、エド・ブルース(Ed Bruce)、マーク・コリー(Mark Collie)などのコアなカントリー・ミュージシャンがカメオ出演していることが判明。セガールのギター・パフォーマンスはお遊びとして、意外にも「マニッシュ・ボーイ」がサウンド・トラックに入っているなど、音楽面で楽しめる「拾いもの映画」であった。クリストファーソンが敵役、悪徳企業のオーナー経営者を怪演しているもの見どころ。
ちなみに、日本語サイトではほとんど、この映画の音楽に言及しているものは見当たらず、サウンドトラック盤にも行き着けず。さらなる解読のためにも、録画は消去しないでもう一度観てみることに。
そう、村上由美子氏の『イエロー・フェイス ハリウッド映画にみるアジア人の肖像』、あるいは、井上一馬氏の『ブラック・ムービー アメリカ映画と黒人社会』にならったアプローチで、こうした「カントリー観」抱合映画をフォローしていきたいものである。

2012年9月14日金曜日

1985年のフォークジャンボリーから

今週は数年前に亡くなった知人から引き継いだCD約1000点近くの整理、彼はロックファンだったので、「うた好き」の私とは傾向が異なるものの、重なりがない訳ではない。洋もの、和もの7対3くらい。ロックのルーツ系が散見できるので、徐々に。とりあえずは、オムニパス、コンピレーションものから聞いていこうと、セレクトしたのが『武蔵野フォークジャンボリー’85』
収録出演者は、遠藤賢司、なぎら健壱、斉藤哲夫、大塚まさじ、渡辺勝、中川イサト、高田渡で、パフォーマンスも充実。どれも名演だが、ロック・スピリッツあるカッコよさなら遠藤賢司、斉藤哲夫、うた好きの私は、なきら健壱「フォークシンガー」、大塚まさじ「プカプカ」に反応。大塚氏のバージョンに味わい、とりあえず1週間堪能。

2012年9月13日木曜日

「夢売るふたり」

「テイク・ディス・ワルツ」(サラ・ポーリー監督、2011)に続いて、表現を曖昧にとどめることを好む西川美和監督の「夢売るふたり」(2012)。旧作で初めて長編を観たのは「ゆれる」(2006)、巷の評判は相当の作品であるが、作品、評判ともに、私には腑に落ちなかった。「ディア・ドクター」(2009)で、概ね西川監督が表出したい世界観が分かったような気がして、その理解によって、「蛇イチゴ」(2003)も納得して観られる佳作だと思った。アイデンティティ喪失論とは異なる文学的なアプローチによる、リアル世界を生きる、外見「曖昧な日本人」の描出は、そのれ自体、日本人が好むテーマなのかな。
西川作品はキャスティングと演出の妙にも味があり、「夢売るふたり」も然り。しかしながら、西川ワールドとしてはエピソードと伏線が満載な分、収斂しない着地点で、寛解感に到達できなかったのは残念だった。

「夢売るふたり」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年9月8日土曜日

「テイク・ディス・ワルツ」

「マリリン 7日間の恋」(サイモン・カーティス監督、2001)に次いで、今年2本目のミシェル・ウィリアムズ。ほどほどな肉付きの小柄で、日本人好きする童顔、生活感がにじむ若妻の日常小世界を演じた本作「テイク・ディス・ワルツ」(2011)、は、前作品とはまた異なるミシェルを堪能できた。ミシェルのファンなら、お買い得、邪気のないエロス(?)で満悦感に浸れる。2005年に出産、2008年には突然のヒース・レジャーの死と、節目を超えてきたミシェル。よい仕事しているなぁと思う。
さて、映画のできは、というと、悪くははないが、想像力を刺激する曖昧さを提示しつつ昇華がない。而して、ミシェルとほぼ同世代、カナダのサラ・ポーリー監督、女性の視点と感性ならでは意志のある世界の描出とコラボレーションは、及第と納得できる。

「テイク・ディス・ワルツ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年9月2日日曜日

ロック古典

2月の引っ越しを契機に、ロック好きの友人遺産として継承したCDから再度発掘し、『クラプトン・クラシックス』(1991年)、『ローリング・ストーン・クラシックス』(1987年)を、聴き直す。もともと、ロックはそれ程といった距離感があったものの、ビートルズ、ストーンズは第2世代的に後追いながら、好みの音楽として親しんできた。そこでのインパクトがまた、アメリカン・ルーツ・ミュージックへの傾倒に導いてくれたのだが。振り返ってみて、本邦ではミュージシャンのルーツ探究コンピレーション・アルバムとしては、このストーンズ辺りが走りであったか。
ストーンズをよく聞いていた当時、「ブラック・ミュージックがルーツ」などといった言い方もあり、クラプトン盤ともに、発行元の意向か、確かにブルースおよびR&Bが中心、共通するミュージシャンも多い編集になっている。ライナーノーツの小出斉氏も共通。この分野では碩学を極めている小出氏、ストーンズ盤の「ブルース/ソウル/R&B」の元歌録音リスト(当時)提供に歓心。そうでした氏監修の書籍『ロックがカヴァーしたブルース・スタンダード100曲』(2010年)は、辞書に頼るがごとくお世話になっておりました。
私の最近の傾向からの1曲は、クラプトン盤、ステイプル・シンガーズ(The Staple Singers)の「スウィング・ロウ・スウィート・チャリオット」。あと、ビートルズ、ストーンズって、カントリー、ロカビリーも好きだよなぁとよぎりつつ、その系統のコンピレーション盤はないものかと。

2012年8月28日火曜日

やはり、季節の変わり目にはCCR

北海道も残暑、っていうか、今季、最も暑い日が続く。もうそこまで秋が来ていると思うのだが。
オデッタ(Odetta)を聞き流して、「コットン・フィールズ」、「ミッドナイト・スペシャル」といったレッドベリー(Leadbelly)つながりで、またまた、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(Creedence Clearwater Revival)にもどってくる。季節と身の回りの変わり目であり、私にとってはモチベーションを整える景気付けの儀式に。

2012年8月21日火曜日

「桐島、部活やめるってよ」

夏休みは、お子様メニューが中心で選択肢が限られる中、「桐島、部活やめるってよ」(吉田大八監督、2012)。スクリーン鑑賞は基本、事前情報を入れないで臨んできて今回も然り。気分よく見終えられた、が結論であるものの、いろいろ考えるところが残ったのも確か。あるいは、そのような映画的脚色と翻案が加えられていた、ということか。
例えば、複数の視点で同じ時系列を繰り返すなどといった手法により青春群像劇としては、多義性を醸す心理描出に成功している。
原作は小説だというが、フジカシングル8による撮影に興じる映画部により主軸を置いたプロット展開で構成しているあたり、この監督も自主製作世代か(私はたぶん本作が初鑑賞)。古くは大林宣彦監督、近年は特に岩井俊二監督系等において、自主製作体験を通した物語描出が試みられるが、この映画の高校生はジョージ・A・ロメロ発のゾンビ偏愛で、絵に描いたような「映画オタク」として提示される。スティーヴン・スピルバーグ製作の「スーパーエイト」(J・J・エイブラム監督、2011)でも、ゾンビだった。ゾンビの波及力、増殖力、恐るべしである。
観ながら気になって考えたのは、時代設定かな。映画部の撮影機材は、たぶんシングル8のZXM500。フィルム生産終了は2009年?校舎と近隣の雰囲気はちょっと昔っぽいが地方都市のせいか(ただし、ことばは首都圏風?)。でも携帯電話普通に使っていたし、映画部員のアイドルは「満島ひかり」らしいし、2010年にはなっていない、まあまあ現代ってことなのかな。
あと、今どきの話題としてティーンエイジャーのいじめが起こっている心理環境を彷彿。大人目線で、「そんな小さな社会空間で。学校だけが社会ではない」といわれる、その壺の内での心持ちの行き詰まりが、よく表現されています。

「桐島、部活やめるってよ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年8月17日金曜日

ザ・ハイウェイメン

『The Perfect Country Collection』の25タイトル目として、ザ・ハイウェイメン(The Highwaymen)の1986年リリースの『HIGHWAYMAN』にたどり着く。この4人の顔のアルバム・ジャケットと何とはなしに記憶していたものの、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)、ウェイロン・ジェニングス(Waylon Jennings)、ウィリー・ネルソン(Willie Nelson)、クリス・クリストファーソン(Kris Kristofferson)による、カントリー・ミュージックのスーパー・ユニットであったことに感激してしまった。
かといって、収録楽曲は力みがなくバランスよいパフォーマンス。ウィリーの声も若く伸びがあって、感じよい時代のもの。キャッシュ作品ならではの独特のリズムと物語りが際立つ「ビッグ・リバー」、4人で分かっているもよし。

2012年8月15日水曜日

再び、♪ファーザー・アロング

25タイトルのCDボックスセット『The Perfect Country Collection』、半年少々かけて傾聴して、未消化分もわずかに。本日はブラッド・ペイズリー(Brad Paisley)は2003年の『Mud on the Tires』というアルバム。ニコール・キッドマンはキース・アーバンと結ばれ、レニー・ゼルウイガーはケニー・チェズニーとの浮き名が聞こえていたのをはじめ、男性カントリー・ミュージシャンにも美形が多いと納得させてくれる好例のブラッドである。
このコレクションでは極めて最近のアルバムでサウンドに新規さがあるわけでないものの、シブさを併せた聡明な楽曲群に、まずまず納得。アリソン・クラウス(Alison Krauss)と共演「ウィスキー・ララバイ」のオリジナルはここだったのかと、ちょっとニンマリ。そして、エンディングは、またしてもカントリー・ゴスペル「ファーザー・アロング」、現代にも生きているカントリーならではのアルバム編集に感心してしまう。この演奏も気に入りました。

2012年8月9日木曜日

オデッタがうたう歌

スタンリー・ブラザーズ(The Stanley Brothers)をなかなか離れられず、本日からやっとオデッタ(Odetta)。これも1956年から1960年までの7アルバム+ラジオ音源(?)を4CDに収録した海外廉価版。スタンリーズ同様、こんなにもまとめて聞いたたのは初めて。図太さが魅力の個性に満ちたボーカルとギター・パフォーマンスはもちろん、取り上げられている楽曲(ソング)の数々は、アメリカン・ルーツ・ミュージック好きにとって興味がつきないものばかり。これまで別のアーティストで聴取してきた中からも、先駆者・レッドベリー(Leadbelly)採録の「オールド・コットン・フォールズ・アット・ホーム」や「ミッドナイト・スペシャル」、「テイク・ディス・ハンマー」、ヒルビリー系の「ダーク・アズ・ア・ダージョン」や「ミュールスキナー・ブルース」、スピリチャル発でも「サムタイムス・アイ・フィール・ライク・ア・マザーレス・チャイルド」と「マザーレス・チルドレン」の両方、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」の元歌「グローリー、グローリー」、さらにブルースもあり、収録一曲一曲の素性を明かしてみたい衝動に駆られ、真に私にとってタイムリー。
1960年代に隆盛を迎えた米国のフォーク・リバイバルで一翼を担っていたと聞いているが、本邦での知名度はジョーン・バエズ(Joan Baez)やジュディ・コリンズ(Judy Collins)に比べると格段に低いのでは?ジョーンやジョディのパフォーマンスはフォークを標榜しつつ、清廉されてソフィストケイトともいえるにのに対しオデッタは対極。「フォーク・シンガー」といっても、これだけコンセプトが異なるのはバック・ボーンに主因か。レッドベリー同様、ブラックなブルースの血脈を醸しだす。
スタンリー・ブラザーズとの共通点は、やはり、ボブ・ディラン(Bob Dylan)が無名時代から好んで聞いていたとのことである。

2012年8月2日木曜日

スタンリー・ブラザーズ

ネット社会の進展で、商業音楽界におけるメディアの意味合いの変化が著しいものの、アルバムやコンピレーション企画でLPやCDに馴染んできたので、おのずと歴史的な録音を志向する。減少・縮小しているCDショップの店頭では、海外製作による名作アルバムの復刻やテーマ編集などの廉価版ボックス・セットに、いつも目が留まり、先日はスタンリー・ブラザーズ(The Stanley Brothers)とオデッタ(Odetta)に食指が動いてしまった。
スタンリー・ブラザーズは、1958年から1960年までの8つのアルバムを4CDに収録(ちなみに、これで1,000円)。これまで、こんなにもまとまって聞くことはできていなかったものの、この古そうで新しいブルーグラス・デュオのパフォーマンスにピタリとはまり、魅せられてしまった。この間のテーマ「ホワイト・ゴスペル」として、数々のヒム、セイクリッド・ソングが入っているのも嬉しいところ。
ボブ・ディラン(Bob Dylan)はスタンリー・ブラザーズをリアル・タイムで聞いていて、相当のファンらしい。にわかにつながらないものの、この関係も思い出しつつ、聞いているところ。

2012年7月31日火曜日

ザ・バンド&ボブ・ディラン

シンコーミュージックからムック本『ザ・バンド&ボブ・ディラン』が発刊されているのを店頭で発見、音盤コレクターではないので、この手の出版物はこれまでほとんど購入していなかったが、さすがに入手してしまった。本年4月19日に71歳で逝去したザ・バンドのリーダー、レヴォン・ヘルム(Levon Helm)の追悼企画ということである。
1960年生まれで、十代のころはラジオ・テレビを媒介に内外の流行歌・コンテンポラリー音楽を聞いてきた私にとって、マーティン・スコセッシ監督の「ラスト・ワルツ」(1977)と、1978年のディラン初来日にあわせて発売されたコンピレーション・アルバムの3枚組LP『傑作』との出会いが、「アメリカン・ルーツ・ミュージック」への傾斜といった、現在につながる音楽嗜好を方向付ける契機になっていたと思い起こす。今も、ディランやレヴォンらを「ルーツ・ミュージックの伝道師」と見立てて、その音楽性を楽しんでいる。
さて、ゆっくりパラパラ読んでいきましょう。しかし、「ラスト・ワルツ」はサウンドトラック盤とは別に、完全版の4CDボックスが出ていたことも発見。レヴォンは追悼企画で『ダート・ファーマー』(2007)の本邦初CD化も。食指が動きそう。

2012年7月28日土曜日

「少年は残酷な弓を射る」

今週は、「ブラック・ブレッド」(アグスティー・ビジャロンガ監督、2010)、「少年は残酷な弓を射る」(リン・ラムジー監督、2010)と、二様のダークサイドに踏み込んでしまった。テーマのありようはともかく、正直、ともに後味はよくなかった。
後者は、弓を銃に置き換えると、物語の中核を成す事件自体は、度々、米国で発生しているそれ。「生まれて来る子はモンスター?」、あるいは、コントロールできずに「モンスターに育ってしまったら」といった懸念や恐怖は、もしかすると親となる人はだれしも、脳裡に潜んでいるのかもしれない。問題は血(DNA)に帰結するのか。「ローズマリーの赤ちゃん」(ロマン・ポランスキー監督、1968)、「オーメン」(リチャード・ドナー監督、1976)などは、同系のプロット設定を有しているが、根本的に異なるのは、この映画では宗教が払拭され、自由を享受できる現代人の陥穽である心理で劇作を試みたこと。
最近もメディア報道でクロース・アップされている、わが国におけるいじめ問題で加害者側の親と重ねるという見方も可能か?
カットバック多様のシナリオ構造、事件・行為の前後を描出する婉曲な演出はアート系映画で常套だが、成功しているとは言い難い。そう、「ミュール・スキナー・ブルース」に始まる楽曲の使用もグラフィティ調で同様。主演女優のはまり具合には感心と称賛。

「少年は残酷な弓を射る」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年7月26日木曜日

ゴスペルの迷路

『魂のうた ゴスペル 信仰と歌に生きた人々』(1997年、原題:GOSPEL LEGENDS)という邦訳本を読んでいるところ。著者はチェット・ヘイガン氏。対比して今さらながら、本邦では、出版物をはじめとしたゴスペル関係言説が、黒人に軸足を置いたものであることに疑念を抱く。米国人の研究においても、白人のそれを「コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック」とするなど、コンセプト整理と分類に諸説があるようだが。
この1年くらいは、そこそこ、ゴスペル・ミュージックにアプローチしてきたつもりで、、前掲書では若干の回答を提示してくれるが、繰り返して、当初抱いていたいくつかの課題にもどり、考え込むことになる。①個別のゴスペル楽曲の起源、あるいは、歴史的成り立ち②黒人、白人が歌うゴスペル楽曲の相違と交歓③ゴスペルの世俗昇華―などの課題である。
キリスト教に根差した歌の範疇には聖歌、讃(賛)美歌、祝歌、霊歌などのコンセプトがあり、それらと重なる部分を持ちつつ、20世紀に「ゴスペル」が成立、辞書的には、(教会に立脚するのではなく)民俗的な宗教歌とする意味を有するというが。
一般のポピュラー・ミュージック同様、楽譜集の出版、ラジオやレコードなどマスメディアによる流通システムの形成を通じた小産業体の成立過程や、ライブ・コンサートにあたる伝道集会のイメージが見えてきたのが収穫。特に後者、やはり、宗教そのものと宗教社会的な理解が足りないということが一番か。

2012年7月19日木曜日

「ただ君だけ」

「ただ君だけ」(ソン・イルゴン監督、2011)は、期待して見た人の満足を確保した韓流恋愛映画であった。孤独な男女の接近を描写しつつ、カットバックで明かされる、各々の過去の重大事件が交差するといったシナリオ構造は現代映画では常套だが、何よりも、この主演男優・女優の容姿とキャラクターのはまり具合がよい。
エンディングは、あらかた予定調和への収斂が想定されるストーリー・テリングに抗して、観客を軽くいなすようなプロットとその演出力に、脚本にも名を連ねねる監督の力量を感じた。
ところで、孤児院で育った設定の男役は、劇中の洗礼名が「マルセリーノ」。映画がらの引用であることが、台詞で分かるものの、日本語字幕(音声・韓国語は分からなので)では特定映画を示していない。私にとって、ヴィクトル・エリセ、ペドロ・アルモドバル、アレハンドロ・アメナーバルらが出てくる以前、スペイン映画といえば、「汚れなき悪戯」(ラディスラオ・ヴァホダ監督、1955) であった。そう、修道院で育てられた孤児、汚れなき悪戯児童としてのマルセリーノ。映画の展開としては、孤児であること以外、ほとんどリンクしていない。このような引用はハリウッド作品でも散見され、名作視聴による映画教育が機能している反映なんだろうか。監督は若手だと思われるのだが。
「汚れなき悪戯」は、キリスト教観に基づく奇跡が描かれているが、深層は、避けられない死を前ににした人間の心の安寧(落としどころ)だと思う。この映画を知っていて、「ただ君だけ」に入るとエンディングに不安を感じつつ見ていくことになるが、それも監督の計算のうち、とは考えすぎか。
あらためて「汚れなき悪戯」、見直してみたくなりました。


「ただ君だけ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2012年7月17日火曜日

〈ウィー・ワー・ソルジャーズ〉

ランドール・ウォレス監督による2002年の米国映画。邦題は「ワンス・アンド・フォーエバー」で、かつてTV放映で観て、コンテンポラリー・カントリーっぽい挿入曲が気になって、サントラ盤を探してみたが廃盤、最近やっとのことセコハンで入手、思ったよりも出来のよいコンピレーション・アルバムで満足しているものの、ちょっと複雑な気持ちにもなった。
これは「オリジナル・サウンドトラック」盤だろうか?
という疑問。14曲(トラック)収録されているが、劇中で使用されているのは2曲のみ?、エンドロールで流れているもののほか、フィルムには収録されず、キャンペーンソング、イメージソングの位置付け?の楽曲による編集盤。サントラは、別にスコア盤も発売されていたことも合わせて考えるに、ハリウッド映画ビジネスならではの仕掛けかと。「オリジナル・サウンドトラック」というラベルは日本風なのだろうが。
パフォーマーはジョニー・キャッシュデイヴ・マシューズ(Johnny Cash & Dave Matthews)による「フォー・ユー」に始まり、キャロリン・ドーン・ジョンソン(Carolyn Dawn Johnson)、メアリー・チェイピン・カーペンター(Mary Chapin Carpenter)、モンゴメリー・ジェントリー(Montgomery Gentry)、ラスカル・フラッツ(Rascal Flatts)らで、ライナーノーツによると、基本、この映画を見て書き下ろした楽曲であるという。何にせよ、それぞれの楽曲の質は高い。今後は、歌詞の方も読み砕いていくことに。
映画の方は、この時点でのベトナム戦争を総括すべき視点の提示。メル・ギブソン主演だけに、パワー・ゲームかとの予断が裏切られた点では良心的。而して、こうした戦争もの、正直、日本人ではある私は、米国人の立ち位置では観ることができないなぁと最近は思うようになってきた。

2012年7月16日月曜日

「オレンジと太陽」

先週のスクリーン鑑賞は結局、ケン・ローチ監督の御子息というジム・ローチによる「オレンジと太陽」一本のみ。戦後、1,970年ころまで、英国が「福祉」として実施した豪州への児童移民。出自の記憶と記録を失った移民サポートのため、社会的には忘れ去られようとしていたこの施策の解明に取り組んだ、ソーシャル・ワーカーの著作がベースといい、取り上げたテーマや映画の演出タッチは、さすがに父子と思わされるものであった。
国策ではあるものの、福祉・宗教など複数の団体もこの移民に積極関与したことが描かれ、告発される。さて現代を省みて、政策を動かす思想基盤の変化や、このテーマ自体にも興味が尽きないのだが、何よりも、わが国にも構造的に近似の話が多々あるのではとの、感慨が頭を巡り出す。
もちろん、戦前から戦後も、さまざまなシチュエーションと意味づけで行われた移民。あるいは、拘束と隔離を柱として実施されていた感染症や精神保健分野等の福祉施策、東アジアの諸国と軋轢が表面化する度に話題になる、戦中・戦前施策に関する歴史認識等々。それぞれのイベントに、その以前と以後があること、自分は知っているか落ち着いて考えてみることにする。

「オレンジと太陽」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2012年7月11日水曜日

MLBでケリー・ピックラー

本日、メジャー・リーグ・ベースボールのオールスター戦を見ていると、ケリー・ピックラー(Kellie Pickler)の「ゴッド・ブレス・アメリカ」歌唱に遭遇。キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)と同様、TVオーディション番組「アメリカン・アイドル」出身のケリー、今が旬で、よりアイドル色が強いなぁとのイメージ。現代ミュージシャン、この辺りのパフォーマンス映像は、インターネット情報化社会の恩恵で、容易にアクセス可能なことを今さらながら確認。懸案キャリー歌唱の「インディペンデンス・デイ」も堪能してしまった。
ご両人が「アメリカン・アイドル」で歌った履歴を調べてみると、マルチナ・マクブライドMartina McBride)、ボニー・レイット(Bonnie Raitt)のオリジナルなどで共通し、カントリーの本道といった印象。女王道を歩んで欲しいだけに今後も気にかけて置こうか。
ネット動画あるいはYouTubeシスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe、1915~1973)のギターパフォーマンスが観られ、ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson、1897~1945)の歌唱が聞けるのも便利、ありがたいことです。

2012年7月6日金曜日

♪インディペンデンス・デイ

キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)つながりで、カントリー・ミュージック聞き始めの1年半ほど前、店頭で見つけて読んだ『カントリー音楽のアメリカ:家族、階層、国、社会』(2008年)を思い出した。わが国の大学文学部に在籍するロバート・T・ロルフ氏が、「商業ルートに乗り広く歌われた主流のカントリー音楽」60曲ほどを取り上げて、米国の社会・文化・風土とそれらを形成する人々の心性を学究者視点で解読した労作。オリジナルは英文というが、こなれた日本語訳で、われわれ日本人が一般に思い描くアメリカとは違ったイメージを勉強させていただいた。
ロルフ氏は、同書で「最も成功した今日の女性カントリー歌手の一人」で、某歌手のような「天文学的数字ほどのヒットはないが、つまらない作品ばかりを歌うこともない」と、マルチナ・マクブライド(Martina McBride)を評し、持ち歌3曲を詳説しており、その一つが「インディペンデンス・デイ」。今回思い出したのは、現在の若者層はこの楽曲をキャリー・アンダーウッドの持ち歌だと思っているのではとの、脚注での指摘。キャリーは、近年日本でもBS某局で放映されるようになったTVオーディション番組の出身で、出演中から歌っていたという。これも、聞いてみたくなる。
徐々に、カントリーも耳に馴染んできたので、この本で論じられている内容の理解も進んできたかな。

2012年7月5日木曜日

♪マザーレス・チルドレン

カーター・ファミリー(The Carter Family)の「マザーレス・チルドレン」は、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」などと同様、ニグロ・スピリチュアルからゴスペルへの脚色と昇華を歩んだ楽曲だった。ライナーノーツなどの解説によると、.A..P.カーターは黒人労働者が歌った「マザーレス・チャイルド・シーズ・ア・ハード・タイム」に着想を得ているという。この曲は、ブラインド・ウィリー・ジョンソ(Blind Willie Johnson)がマザーズチルドレンハブ・ア・ハード・タイム」として録音している。
ブラインド・ウィリーのこの楽曲についても、『黒人霊歌は生きている―歌詞で読むアメリカ』(2008年)で、たウェルズ恵子氏の考察がある。ご指摘の通り元歌は、スピリチュアルの「サムタイム・アイ・フィール・ライク・ア・マザーレス・チャイルド(時には母のない子のように)」。「マザーレス・チャイルド」という言葉の含蓄に注目したカーター・ファミリーの翻案バージョンのほか、ジョージ・ガーシュインGeorge Gershwin)がフォーク・オペラ「ポギーとベス」にフューチャーし、スタンダード・ソングの定番となった「サマータイム」はスピリチュアルの旋律にインスパイアされていることが知られる。あるいは、ウェルズ氏も言及したように本邦では寺山修司の作詞があり、つながりが見えてきた分、その時代と心性を読むことに興味をそそられる。
「マザーレス・チルドレン」、近年の録音ではロザンヌ・キャッシュ(Rosanne Cash)の歌唱が気に入っている。

2012年7月2日月曜日

カーター・ファミリー

アメリカン・ルーツ・ミュージックのコアな部分を担っているカーター・ファミリー(The Carter Family)のファンを自称しているが、末裔・系譜等のミュージシャンによるカバーバージョンしか知らない楽曲も多々あることを省みて、新たにCD2枚組のセットを2種、ネットで探して調達。うち1種は『THE ACME SESSIONS 1952/56&1956』という2008年英国盤で、何と、A.P.とセイラに、その子息、ジャネット、ジョーによるセッションで、興味深く聞き始めた。計58トラックあるものの、基本は約250曲あるといわれるオリジナル・カーター・ファミリーの録音楽曲が元歌のよう。
ロバート・アルトマン監督の遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年)で、メリル・ストリープとリリー・トムリンが演じる姉妹デュオの歌唱「金の時計と鎖」も、オリジナルは手元になかったが今回の両セットにはそれぞれ収載。等々、楽曲リストをつくってみたい誘惑に駆られる。
さて、7月。気候も落ち着き、次のステップを見据えねば。

◆過去のメモと追記◆
□♪ワイルドウッド・フラワー、NGDBから始める。(2011/11/03)
♪Will the Circle Be Unbroken、カントリー・ゴスペルとは、(2011/11/06)
♪ダイヤモンドの原石)(2012/01/14)
♪マザーレス・チルドレン(2012/07/05)
アニタ・カーター(2012/09/19)
♪ドント・フォゲット・ディス・ソング(2012/10/08)
ルーツをたどり、レスリー・リドルへ(2013/02/04)
♪大きなまだらの鳥(2013/05/11)
♪キャン・ザ・サークル・ビー・アンブロークン(2013/05/12)
ウィーバーズまで戻って、♪バリー・ミー(2014/02/21)

2012年6月29日金曜日

《黙阿弥の明治維新》

北海道も、やっと夏の陽射しに。今週は、スクリーンでは取り立てて記憶すべき映画に巡り会えなかったものの、渡辺保氏の『黙阿弥の明治維新』(2011)を読了。これも1997年発刊書籍の岩波現代文庫化。『江戸演劇史』(2009)をはじめ、ここ数年は歌舞伎に関する見識の鍛錬で渡辺氏の著作にお世話になっている。近代演劇の誕生を黙阿弥のワークに見い出す、眼光と批評力はさすが。何よりも、近世から近代へ、時代の変わり目を、断絶ではなく連続として、政治と世相、生活者感覚を踏まえた検証を提示しているところに目を見張る。
黙阿弥の引退作「島鵆月白波(しまちどりつきのしらなみ)」(1881、明治14年)で、舞台に視覚的なセッティングもなされたという招魂社(護国神社、靖国神社の租)が据えられた意図を読み解くなどといった、歴史の語り口である。
何分、歌舞伎と本邦の映画(特に黎明期)は関係が深いということもあるが、芝居を観る、戯曲を読むことへの渇望にも駆られる。批評精神を含むメディア機能を担っていた歌舞伎という芸能の特性から、「脚色」という言葉の深みを知った。

2012年6月21日木曜日

《李香蘭と原節子》

先日、四方田犬彦氏の著作・岩波現代文庫李香蘭と原節子』(2011年)を読了。2006年(明治39年)が満鉄(南満州鉄道株式会社)の設立100年で、研究出版物や報道等の情報量が増えたこと、同年にNHKで「中国映画を支えた日本人―”満映”映画人秘められた戦後―」が放映されたことなどを契機に、しばし、その周辺学習がテーマとなっていた。同書は2000年刊の『日本の女優』がベースとのことで、こちらは未読だっただけに、映画史家・四方田氏の冷徹な慧眼に基づく論説は、私が得ていた読書知識の整理・統合にとても役立った。
同書タイトルの2人の女優に加え、前述NHK番組で紹介された、満映(満洲映画協会)出身の映画編集者・岸富美子氏の3人が主役、そろって1920年(大正9年)生まれである数奇さゆえの結節点を基に比較批評が語られている。冷徹さの基軸は、2人の女優を、それぞれの「神話」として歴史的に分析していること。ナショナリズムと歴史認識って、リアルタイムで繰り返し政治・経済課題に浮上してくるが、こうしたテキストは、歴史に学び、糧とする意義を確認させてくれる。
四方田氏も提起しているが、上海・中華電影の川喜多長政、甘粕正彦の下、満映で映画製作の実務を担った岩崎昶の両氏について、映画人としての通史研究成果を、もっと知りたいと思い直したところだ。
あと、四方田氏ほど、関連の歴史的フィルムが観れていないのには、羨望の念。

2012年6月20日水曜日

「サニー 永遠の仲間たち」

今週のスクリーンは、「サニー 永遠の仲間たち」(カン・ヒョンチョル監督、2011)から。「タイム・アフター・タイム」(シンディー・ローパー発の)を始まりとエンディングに配置、「ラ・ブーム」(1980)のテーマ曲(?)やボニー・Mの「サニー」を据えて、1980年代のコリアン・グラフティをコンセプトとする女子高在籍者チームの人情譚。ジェネレーション映画ともいえるので、これら選曲によってこそ、鑑賞者の支持度に温度差が出るように思う。
さて、私には。日本でも、まだ、大衆的に(?)洋楽が聞かれいたころで、同様の楽曲群がヒットしていたこともあり、ほとんどフィットして充足感を持って観終えることができた。物語の性格上、カットバックを積み上げた語り口といった確かな技量をはじめ、エンターテイメント性の関する韓国映画製作の力を示している佳作であった。一方、欠点ではないが、韓国現代史にとって80年代は政治・経済の転換期で社会性の薄い分、監督は、劇中の「1986年に高校生時代」より、若い世代ではと、よぎったが、どうなんだろう?
ユーロビートのディスコサウンドとして記憶している「サニー」、オリジナルはナッシュビルに縁があるボビー・ヘブ(Bobby hebb)、これはイメージ薄くなっていて、聴き直してみたい。


「サニー 永遠の仲間たち」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2012年6月19日火曜日

♪ククルクク・パロマ

先日、ペドロ・アルモドバル監督の「私が、生きる肌」(、2011)鑑賞から、「トーク・トゥー・ハー」(2002)でのカエターノ・ヴェローゾCaetano Veloso)の「ククルクク・パロマ」歌唱を思い出していたところ、前後して、TV放映録画で観た「ガン・ファイター」(ロバート・アルドリッチ監督、1961)で、同曲の劇中パフォーマンスを認知できた。
日本で知られたメキシコ発の楽曲はそうたくさんない中、この曲は、たぶんそれなりに著名か。個人的には、子供時代のわが家に初めてステレオセットが導入されたころに、購入されたハリー・ベラフォンテHarry Belafonte)のアルバム所収の歌唱で親しんでいてた。この盤は、ベラフォンテの1974年来日を契機にしたベスト編集、自分ではなく、家族のだれかが買ったもの、今となっては記憶は遠いが、サウンドは残る。バージョン、映画等での楽曲つながりに関心、さらに思い出してみたいが、、、
さて、「ガン・ファイター」、玄人映画ファン好みの職人監督・アルドリッチならではのグッド・ワーク。アルドリッチの西部劇は、もっと観てみたい。

2012年6月16日土曜日

「ソウル・サーファー」

キャリー・アンダーウッドが出演していると知り、にわかカントリーファンとして、それだけの理由で「ソウル・サーファー」(ショーン・マクナマラ監督、2011)を鑑賞。「ファミリー・ツリー」に次ぐ今年2本目のハワイもので、サウンドトラックも結構、期待していたが、キャリーの歌唱がない(たぶん)のは残念、まあ、その辺りはそこそこであったか。それで、キャリーはサーフィンするの?って予断は、主役のサーファー少女と親しい宗教活動者(preacherっていうのかな?)役ということで、納得。
さて、映画は予告編通りの、サメに左腕を奪われた隻腕少女サーファーの実話に基づいた復活劇以外の何物でもない。コンピューターグラフィックスを除く映画技法やシナリオ構成に、特段のハイクオリティや工夫、意外性は感じられないものの、モチベーションを大いに刺激する感動作に仕上がっていて、お買い得感があった。推奨リスト入りである。
主役を演じたアナソフィア・ロブは演技にも増して、顔構えが意思を体現していること、クリスチャニティに裏打ちされた心性が、あまたのスポーツ系感動ヒューマンドラマに比して、落ち着きと深味を与えていたと思う。もっとも、この心性、キリスト教に特有という訳ではありませんが。

「ソウル・サーファー」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★★

2012年6月14日木曜日

「少年と自転車」

ファレリー、コーエン、タヴィアーニ、ウォシャウスキーときて、私の好みからは最も遠い作風の兄弟共同監督ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ「少年と自転車」(2011)。欧州にあって、底辺層、特に社会的なハンディキャップを抱えた人々を描写する姿勢が嫌いな訳ではない。彼らへの眼差しには優しさがあるものの、ユーモアに欠ける語り口に齟齬があるのかな。
痛み分けとも受け取れ、不安を払拭しきれない「少年と自転車」の幕切れは、巧みな選択と思う。一方、親にネグレクトされた少年の心理と行動の痛さ強調が昇華することになる、里親で美容師役、セシル・ドゥ・フランスの心の移ろいを表現して欲しかったというのが感想。

「少年と自転車」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年6月12日火曜日

「幸せへのキセキ」

キャメロン・クロウ監督、かなり久々の新作で「幸せへのキセキ」(2011)。原題は「WE BOUGHT A ZOO」とストレート、この邦題はどうか思う。原作に基づいたストーリーはともかく、音楽ライター出身のクロウ作品は、サウンドトラック、挿入歌群が楽しくシブイ。妻を病で失ったマット・デイモン演じる突撃報道作家一家の長男の名前に「ディラン」と付しているのも遊び心。ちゃんと、ボブ・ディランの歌唱も採用されていたし。音楽担当はシガー・ロス(Sigur Ros)のヨンシー(Jonsi)となっていた。北欧・アイスランド系?
クロウ監督のもう一つの持ち味、少年心の描出も上々の出来、大人目線では、飼育員役、スカーレット・ヨハンソンをクロース・アップ連続でとは、観客サービスであったか。

「幸せへのキセキ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★★★

2012年6月10日日曜日

〈クレイジー・ハート〉

「カントリー・ストロング」(シャナ・フェステ監督、2010)続きで、その姉妹編ともいえる「クレイジー・ハート」(スコット・クーパー監督、2009)のサンウンドトラック盤も再聴。ジェフ・ブリッジス、コリン・ファレルら出演者自身によるパフォーマンスと、コンテンポラリー+歴史的録音もほどよく採用され、いわば、コンピレーションアルバムとして心地よく聞ける。
ルーヴィン・ブラザーズ(The Louvin Brothers)、デルモア・ブラザーズ(The Delmore Brothers)の兄弟デュオも気が利いていると思いつつ、今回の再発見はキティ・ウェルズ(Kitty Wells)。カントリー・ホンクというよりも、バラード?しっとり系の「サーチング(フォー・サムワン・ライク・ユー)」の歌唱で印象的で、劇中の場面は思い出せず、映画の再視聴もしたくなる。
音楽担当はカントリー映画ではお馴染となったT=ボーン・バーネット と、スティーブン・ブルトン。

2012年6月6日水曜日

「私が、生きる肌」

「オール・アバウト・マイ・マザー」(1998)以来、ほとんどの新作が本邦でも公開され、その質の高さには納得させられるスペイン人監督、ペドロ・アルモドバルの2011年製作「私が、生きる肌」。安部公房原作の「他人の顔」(勅使河原宏監督、1966)やキム・ギドク監督の「絶対の愛」(2006)などを思い出させる着想であるが、提示されたのはアルモドバル・ワールドそのもの。映像美、何よりもエレナ・アナヤの姿態に憑依されしまい、結末を予想する思考が働かないほど、時の経過を忘れさせてくれる。
審美センスに長けたアルモドバルの創作は、自身の性的嗜好が独特の色合いを醸していると思う。旧作では「真摯な性愛」として語りうる範疇がほとんどであったが、今回は、ジェンダーではなくセックスのトランスが織り込まれたことで、性愛は幻想に帰着したかにも受け取れる。
あいかわらず、音楽も秀逸。この間のアルモドバル作品は、基本的にアルベルト・イグレシアスが音楽担当。「トーク・トゥー・ハー」(2002)では、カエターノ・ヴェローゾのフィーチャー、劇中歌唱があったけど、今回の結婚パーティーシーンの黒人女性歌手も、なかなか。
あと、たまたま同日に観た「裏切りのサーカス」(トーマス・アルフレッドソン監督、2011)の音楽もアルベルト・イグレシアスだった。そうか、めずらしくサントラ盤まで買った「ナイロビの蜂」(フェルナンド・メイレレス監督、2005)もそう。調べてみるもんです。
調べて分かったこと、もう一つ。「私が、生きる肌」にアントニオ・バンデラスの主演(なかなかの好演)は意外と思っていたが、アルモドバルと旧知の関係だったとは。初期のアルモドバルも観てみたい、、、である。

「私が、生きる肌」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年6月2日土曜日

「ルート・アイリシュ」

イラクの現況と軍事分野の民営化という、わが国の国民意識からは相当、離れているかに思われる主題を扱ったケン・ローチ監督の「ルート・アイリッシュ」(2010)。一貫して労働者層の視点で描き続けたローチ作品で、イギリスは階級社会であることを再認識してきた。(資本主義)社会の歪みを提起する語り口は、必ずしも幸せや救済に帰結しないが、今回は、友の仇討劇として、「一般受け」はしないであろう陰鬱な印象を残すドラマを提示してくれた。
ほとんどスターダムの俳優が出演しないローチ映画の演出には、ヒューマニティ、とりわけ、優しさの描出に特色がある。「ルート・アイリッシュ」では、提示した問題の迷宮に入り込むにつれ、リベンジを画策する男の怒りとバイオレンスが増幅していく。これが現実、イラクの、欧州のジレンマということか。ウディ・アレンと、ほぼ同世代でのケン・ローチ、老境のあり方では好対照の表現であった。ローチ作品の脚本は、概ねポール・ラヴァーティが仕事しているってこともあるのかな。
「宇宙開発も民間で」が現在進行形。軍事分野に限らず、グローバリゼーションと新自由主義の下での「官卑民尊イデオロギー」っていうのも気にしたい昨今である。

「ルート・アイリッシュ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年6月1日金曜日

「ル・アーヴルの靴みがき」

「ル・アーヴルの靴みがき」(2011)、アキ・カウリスマキ監督作品では何年かぶりの長編。こちらも、カウリスマキ節は健在、小津安二郎に学んだと思われるショット、カットつなぎは、相当の冴えをみせている。この映画の広報・キャチフレーズは「心をみがけば、奇跡はおこる」で、鑑賞後感は、ちょっと旧作群と異なるところに一考を要する。
底辺生活を送る主人公・靴みがきや不法移民といったシビアな要素をプロットに据えながら、暮らしと小コミュニティの人間関係を描き、希望を提示した人情喜劇にまとめたところが時代へのメッセージ。ウディ・アレンの表現とは違っているが、両者の方向性は支持したい気分だ。両監督とも、ほとんどの作品が人間生理に見合った上映時間にまとめられているのも、テンポよし、心地よくエンディングを迎えられる理由と思う。
表現をシンクロする手法としての音楽もアレン同様に、独特の色合いを出している。もっとも、カウリスマキの世代は私と近く、ロックのスピリッツに共感部分があるものの、奇妙でクールな仕様にらしさがある。「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」(1989)などといった奇天烈なバンド描いた作品もあった。自らの嗜好なのが、フィンランド人の嗜好なのか、映画表現として意図しているのかは分からないが。

「ル・アーヴルの靴みがき」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2012年5月31日木曜日

「ミッドナイト・イン・パリ」

アキ・カリウスマキケン・ローチウディ・アレンと、劇場公開で9割方観てきた、お気に入り監督連の新作を続けて鑑賞。はずれはなし。米国音楽とパリというと、「ラウンド・ミッドナイト」(ベルトラン・タヴェルニエ監督、1986)を思い出すが、アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」(2011)は、自身のフェイヴァリット、コール・ポーターを据えて(出演させて)対照的な夜の世界を創造、米国知識人が抱く力みのないフランス文化リスペクトであった。
ニューヨーカーのアレン、イギリス、スペインと国(東海岸)外ロケ作品が続いているが、パラノイア気質と自虐ネタベースの語り口は健在。20世紀的な教養主義はネット時代へのアンチテーゼという訳ではなく、嫌味に感じず、文豪や画家ら文化人に遭遇するエピソードの描出は、シネマオマージュとの観方も可能だ。心地よい軽さにまとまっているのは、老境にかかってきたからこそか?
キャスティングも見もの。いつの間にか、アレン映画には俳優たちが集まるようになってしまった。セーヌ河岸で思い出したのは、アレン旧作の「世界中がアイ・ラヴ・ユー」(1996)。この作品のキャストもすごかったけど、河岸でのダンスシーンはアレン本人とゴールディ・ホーンだったか。
音楽担当はステファン・レンベル、音楽監督ではなく?そう、コール・ポーター自身の演奏音盤は手元になかった。これも探して、流してみたくなる。

「ミッドナイト・イン・パリ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年5月24日木曜日

「ファミリー・ツリー」

「ファミリー・ツリー」「サイドウェイ」(2004)のアレクサンダー・ペイン監督ということで食指が動く。エキセントリックな人物描出に特徴。ジョージ・クルーニーの娘の姉妹役など、あまり心地よいキャラクターと受け取れないが、物語が進んでいくにつれて、ほどほどに落ち着いていくのが脚本・脚色の手腕と納得できる。
「わが母の記」に次いで家族劇、原題は「THE DESCENDANTS」だそうで、ハワイを舞台とする一族劇でもある。尊厳死や妻の不倫の発覚といった、シビアなプロットが柱となっているものの、この土地の風土と音楽によって醸されるトーンで、ほどよいコメディに仕上げている。
コンテンポラリーのハワイアン・ミュージックも満載。確かに、劇中のヨーデル歌唱が入ったライブは「イカしていた」。ハワイ州も、もちんUSA。伝統音楽と本土・大陸音楽の出会いによるハワイアン成立のルーツついて、あらためて興味を抱く。キーパーソンであるスラック・キー・ギターのギャビー・パヒヌイ(Gabby Pahinui)の演奏も使われているみたい。学習のため、サントラ盤も欲しくなった。
スティール・ギターもハワイアン発だった?カントリー(ヒルビリー)ミュージックとも関係が深い。そう、「何でヨーデルなの」ってこともありますし。

「ファミリー・ツリー」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年5月22日火曜日

「わが母の記」

当面、暇になったからか、モチベーションの移ろいか、やっと最近、劇場スクリーンで映画を観る機会を増やせるようになった。先日は「わが母の記」。冒頭から矢継ぎばやの家族会話、原田眞人監督の演出が冴えている。描かれている昭和の暮らし、森田芳光監督の「阿修羅のごとく」(2003)を彷彿させ、落ち着いてしまう。VFXは用いているのだろうが、「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)ほどではない。サイエンス・フィクション、アクション、ファンタジーやホラー系等々の濃厚な映画が隆盛かつ嗜好される現代にあって、この昭和の暮らしものの映像描出にこそ、映画的な興奮を覚えてしまう。
「東京物語」(小津安二郎監督、1953)へのオマージュ表現は、原田監督の志の表明か。「クライマーズ・ハイ」(2008)以来の好調を堅持、森田監督亡き後、昭和も徐々に薄れて行く中、「日本映画」の継続と展開で大いなる活躍が期待される人材である。

「わが母の記」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年5月21日月曜日

「カルテット」ではディキシー・ハミングバーズ

CD4枚組のゴスペル・コンピレーションアルバム『GOOD NEWS』の2枚目は、ゴールデン・ゲート・ジュビリー・カルテット(Golden Gate Jubilee Quartet)、ディキシー・ハミングバーズ(The Dixie Hummingbirds)ら、カルテットものを中心に構成。そう、現代日本では「ア・カペラ」と呼ばれることが多い、主に無伴奏の合唱演奏スタイル「カルテット」は、ゴスペル・ミュージックの発展期に確立したという。日本でカルテットというと、クラッシックの四重奏(唱)を思い浮かべ、まして、ア・カペラでは宗教感覚が払拭されポップな印象すらある。しかしながら、ア・カペラの原義は宗教(キリスト教)音楽の範疇なのだろう。カルテット、ア・カペラともにイタリア語が原語。さかのぼったところで宗教性で交錯に、また気づく。
録音をみると1930~1940年代。この辺りの奥行き、カントリー・ミュージック以上に、本邦では希薄だったのではと、よぎりつつ、まさに、その後の、ソウル、R&Bといったポピュラー音楽への影響を一考してしまう。
ゴスペルへの旅で、多彩なミュージシャンの録音で聞いてきた「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」、ここにきて、ディキシー・ハミングバーズのバージョンに味わいを見い出せたのが収穫。

2012年5月17日木曜日

1975年の〈ナッシュビル〉

ロバート・アルトマン監督の「ナッシュビル」(1975)、昨年のリバイバル上映には行けなかったものの、今年2月発売のDVDを入手、先日の「カントリー・ストロング」(2010)に続いてDVD鑑賞。20数年ぶりに観た感想は、あせない衝撃力とロケ撮影によるフィルムの質感。約2時間40分、主だっては24人という群像劇で、まず、初見時の人物像記憶はかすれていたこともあって、引き込まれるように観た。記憶との相違は思っていたより歌唱・演奏シーンが多くて長く、いわゆるカントリー調ミュージック以外に、讃美歌・ゴスペルのシーンも、よく出てきたこと。
一般には「米国の縮図」みたいな映画評が多いように思うが、私は「カントリー・ストロング」に前後して観たので、「ナッシュビル人はどう見てるの?」と考えてしまった。
そこで、DVD。普段はほとんど利用しない特典機能から、「監督の音声解説(字幕)」をオンにして再視聴。地元(出来合い)のカントリー・ミュージックを映画で使わなかったから公開時は不評だが、現在は人気がある、などのコメントで、疑問の一部を監督自身に解説していただいた。便利な世の中、繰り返し見る時間があればですね。繰り返し見るに足る映画ではあります。
それで、そうでした。描かれているライブ・パフォーマンスの楽曲のほとんどは、ヘンリー・ギブソン、カンレン・ブラックらミュージシャン役で登場している俳優自身による作品。音楽監督のリチャード・バスキンによるアレンジは、あるというのだが。これも今回の認知、収穫。

2012年5月16日水曜日

「カントリー・ストロング」

「カントリー・ストロング」(シャナ・フェステ監督)、2010年製作、グウィネス・パルトロウ主演、架空(?)のカントリー・ミュージック女王物語なのだが、本邦では劇場未公開。店頭で目にとまったサウンドトラックCDは、ためらいなく購入し、しばしの後、日本版DVDも発売され手元に置いたものの、諸般の事情からやっと視聴できた。
想像していたような、コンテンポラリー・カントリーの世界が描かれていたというのが率直な感想。ティム・マッグロウ、レイトン・ミースターの若手男女の役どころも含めて、ソフィストケイテッドとは対極の人物像の描出で、安易な二分法には固執しないが、ニューヨーカーとはいわないまでも米国の都会人は、この映画をどう見るのだろうか(そもそも、見ないのか)、興味が沸いてくる。
ちょっとベタっとしているが、もちろん私は嫌いではない。
サントラ盤にはサラ・エヴァンス(Sara Evans)、リー・アン・ワーマック(Lee Ann Womack)、フェイス・ヒル(Faith Hill)ら、物語の主役に匹敵する実力者の録音が収載、映画には登場していないと思ったのであるが、ちょっと注意散漫だったか。次回は心して観ましょう。
製作の一人がトビー・マクガイアとなっているのも、気になるところ。

「カントリー・ストロング」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年5月15日火曜日

『グッド・ニューズ』

『GOOD NEWS』というタイトルの4枚組CD、ゴスペル100曲集に食指が動いてしまう。何故かレジで半額と、お値段も私にとって相当の福音。4枚目は、ソウル・スタラーズ(The Soul Stirrers)、ピリグリム・トラベラーズ(The Pilgrim Travelers)、ファイブ・ブラインド・オーイズ・オブ・アラバマ(The Five Blind Boys of Alabama)、ファイブ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピ(The Five Blind Boys of Mississippi)ら、カルテットもので構成。ソウル・スタラーズはサム・クック(Sam Cooke)が在籍していた?この輸入盤、シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)の4枚組と同様、PROPERブランドで、ブックレットのライナーが充実しているのもお買い得。サム・クックの録音か、英語力アップも念頭に、じっくり読んでみなくては。
天候、上向きかと思ったら、雨模様に。桜も八重に移行かな。

2012年5月8日火曜日

♪スタンド・バイ・ミーのルーツ?

私の住む街もやっとこさ桜の季節に。
「スタンド・バイ・ミー」、世代的にはスティーブン・キング原作、ロブ・ライナーの1986年監督作品で印象づけられたが、元来、ベン・E・キング(Ben E. King)のオリジナルはR&Bクラシックとして好みのパフォーマンスであった。もちろん、ジョン・レノン(John Lennon)のアルバム『ロックン・ロール』収載バージョンも大のお気に入り。そして、なんとなく、そんな気もしていたけど、この間の学習でこの楽曲もゴスペルが下敷きになっているのではと思い当たり、シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)のCDの同タイトル曲パフォーマンスで再認識できた。
もっとも、ゴスペルでは「ダーリン、ダーリン」という唄い回しがあるわけでなく、そばにいてほしいのは、もちろんジーザス。歌詞の本歌取り、大衆消費社会・ミュージックシーンでの創作手法として聖から俗へという体裁、認識薄かったけど結構埋もれているんだろうなと心に止めておく。

◆追記◆
再び、♪スタンド・バイ・ミー(2013/03/02)

2012年5月3日木曜日

♪スイング・ロウ、スイート・チャリオット

札幌は昨日、桜が開花したそう。連休後半は好天が期待できずかな。5月もスピリチュアルで。「スイング・ロウ、スート・チャリオット」、われわれ邦人にも最も知られた黒人霊歌の一つ。私もよく知っているつもりでいて、旧約聖書の世界から引かれた歌詞は、これまであまり気にかけたことがなかった。チャリオット、単に「馬車」とする訳出が多いものの、「戦車」としている例が散見される。戦闘用の2輪馬車だそうで、「ベン・ハー」に出てくる形状を思い浮かべてしまうのも常であった。
最近やっとこさ、ユダヤの民の試練を奴隷の境遇に重ね合わた隠喩の味わいに目覚め、また、これも白人によって演奏されることが多いことを再認識した。何故に白人が黒人霊歌をという素朴な疑問から手持ちのCDのライナー・ノーツを読んでいると、新たな謎に遭遇。この楽曲、ワリス・ウィリス(Wallace Willis)という作者がいるのだそう。さて、この人物とは?本日までのところ、よく分からなかった。

2012年4月28日土曜日

クラレンス・ファウンテン

シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)の「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」にインスパイアされ、このしばらく、手持ちの音盤から同曲をはじめとする、ゴスペル&スピリチュアルのいくつかを集めて聞き比べをしていた。
雑誌の付録で残しておいたCDにクラレンス・ファウンテン(Clarence Fountain)の「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」が収録されていて、このR&Bアレンジとクラレンスのボーカルには圧倒されてしまった。サープを除く、ホワイト系のカントリー・ゴスペル歌唱と、おおよそ対照的。クラレンスはブラインド・ボーイズ・オブ・アラバマ(The Blind Boys of Alabama)のシンガーだが、このCDのクレジットではボーカル以外、ギター、ベース、ドラムスはアンノウンとなっていた。ゴスペルとは「演奏スタイルのジャンルではない」と気づかせられる、まさ、目からウロコの快演である。
巷間では大型連休の初日。今季いちばんの天候で、北海道の桜も連休中には開花しそう。

2012年4月22日日曜日

トレイン・ソング

やっとこさ、先週後半から天候も回復、車のタイヤを履きかえる気になった。
シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)の4枚組購入時、店頭で目にとまった10枚組のコンピレーションアルバムを少しずつ聞き始める。テーマは「トレイン・ソング」。Aトレインはともかく、「ディス・トレイン」はサープのおはこらしく、妙なつながりで展開。鉄道放浪者を唄ったホーボー・ソングは、以前、ブログ内でメモしたが、ホーボーほか、レイルロード・ヒーロー、貨物列車にまつわる唄をジャンル横断的に200曲集めた仕様。大陸の広がりと開拓の歴史、米国ならではのコンセプトジャンルで、お気に入りのヒルビリー・ルーツ系も多いが、1枚目ではドリス・デイ(Doris Day)、グレン・ミラー(Glenn Miller)、アラン・ローマックス(Alan Lomax)等々、パフォーマーのバリエーションで楽しく聞ける。トータルでは、馴染のないミュージシャンが多く、また、勉強しつつ傾聴ということに。加えて、「この曲もトレイン・ソングだったのか」と教えられるものもあり、英詞、きちんと反芻しなくては、ですね。

◆追記◆
〈北国の帝王〉(2011/12/29)
♪ロック・アイランド・ライン、、、も、トレイン・ソング(2013/09/24)

2012年4月17日火曜日

Aトレイン

シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)はデューク・エリントン(Duke Ellington)と共演していた!?映像も見てみたい。デューク・エリントンといえば、「テイク・ジ・Aトレイン」。桜の旅の途中、約2か月ぶりにスクリーンで森田芳光監督の遺作という「僕達急行 A列車で行こう」を観る。脚本も手がけた、森田語りは「釣りバカ日誌」の後継かと受け取れる、伝統的なサラリーマンもののプログラムピクチャー仕様で、力みがなく心地よい。鉄道マニアの生活、音響に凝ったつくりへの采配も、まさに職人技。
力みなさに、モチベーションが整い、薄らいでいた映画鑑賞も仕切り直したい気分に。

2012年4月13日金曜日

奈良の旅で♪ワイルドウッド・フラワー

桜の旅で訪れた、奈良は極めて寒い日だった。「入江泰吉」の名を冠した写真美術館が目的。東大寺の境内で育ち、戦後間もなく地元にもどり、かの地の仏教美術・文化に傾倒した入江泰吉氏、ちょうど東大寺をメーンにした展示が行われており、琴線に触れる。東大寺の四季もよし、仏像を写したものはモノクロでも、製作者の完成度に増して魂が宿っているかにみえる。
万葉の草花を、桜はヤマザクラを愛したという入江氏。館内を巡りつ「ワイルドウッド・フラワー」の旋律が沸き出した。あと、ヤマザクラとソメイヨシノ、見た目の違いと区分、認識が酸かったなぁー。

2012年4月12日木曜日

映画記念碑

あまりの寒さ続きで、待ちきれず関西に桜を見に出かけた。帰りがけ神戸のメリケンパークを散策中、「映画記念碑」なるものがあることを、たまたま知り、写真に収めたつもりになる。明治29年(1896年)の映画上陸を記念し淀川長治氏らが建立したような記述があったが、もどって調べてみると、どうやら記念碑は私の認識と異なり「のぞき窓」を模した近接(写真、手前の左奥)のアーキテクチャーだった。神戸市のホームページによると、この映画とはエジソン発のキネトスコープのこと。シネマトグラフも神戸上陸と思っていたが、それはもう少し後だったのかな。

2012年4月6日金曜日

シスター・ロゼッタ・サープ

シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)が活躍したのは先の大戦前後くらいなのかな。ここ数か月離れられず、ついにCDショップで4枚組を入手、聞き流す。驚き。まさに、ルーツ・ミュージック。店頭ではゴスペルの棚にあるのだが、パフォーマンスはポップ感覚の懐と広がりがありブルーズ、ロック、ソウル、ジャズ等々への継続性が見て取れる。ギターパフォーマンスのオリジナリティもさることながら、ビリー・ホリディ調の歌唱にも考え込む。ビリーとほぼ同時代。この関係性、まだまだ探ってみたいことがある。本邦文献では、あんまし読んでいた記憶がないが。
ちょっと、桜を渇望するリアル旅に出て、しばし傾聴しつつ、いくつかの手がかり考えみることに。

2012年4月1日日曜日

4月もCCRから

昨日、本日と気温上がらず。しかしながら、庭の雪は日を追って領土縮小していく、春の気配。臨時仕事も昨日で一段落、引っ越しで運んできたガラクタをかたづけながら、モチベーションを整える。カーオーディオはあいかわらず、クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(Creedence Clearwater Revival)。
まだまだ、やることあるので日一日、積み上げていかねば。映画と音楽がなかなかついて来ないし、、、

2012年3月24日土曜日

今月の眼差し

約1か月間のスポット仕事も最終週へ。まだ引っ越しも残っているのだが、そろって区切りの年度替わりに。このひと月はブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)に依存したものでした。なかなか、暖かさが上がって来ないけど。
そんなんで、映画も観に行けてない。ちょっと前進は、佐野眞一氏の著作、文庫版『甘粕正彦 乱心の嚝野』に眼差しをもどしたこと。甘粕正彦については、李香蘭とともに、真正面からとりあげた「日本映画」が未だかつてないというのは残念でもったいないこと。何故に?ベルナルド・ベルトルッチの「ラストエンペラー」(1987年)では坂本龍一が演じてた、、、あんまし、思い出せない。
明日も雪?、気合いで乗り切って、4月からはどんな感じ。どちらに流れていくやら。

2012年3月18日日曜日

CCRで春をこう

3月末期限、アパートの引き渡しに向け、やる気を出して、荷物運びを進める。水道の凍結も復旧、油断できないが、なんとかなりそうか。景気づけに運搬車中、カーステレオでクリーデンス・クリアウォーター・リバイバル(Creedence Clearwater Revival)をかける。荷物運んで、雪わりもしてよい感じだったが、午後から寒波、明日は冬に逆戻りだとか。やっとこさ、寒い冬をしのいだと思ったのだが。春の歩みも遅い。景気づけが必要である。
ちなみに、本日運んだメインは、亡き知人から引き継いだロック系のLPレコード千数百枚。本当は余裕をもって、分類・整理しながら運びたかったのだが。これも咀嚼していかねば。
流れ上、心の落ち着きどころもなく、とりあえず、日々のことをこなしていくことにフォーカスするよりない。

2012年3月11日日曜日

雪割り

やっと、雪割りのシーズンに。昨日はかなり陽が射したけど、今日は曇りがちでいまひとつ。もっと快調に雪割りしたかった。ボチボチやってきた引っ越し作業も、そろそろメドつけねば。そのためにも気温が欲しいなぁ。
コンピレーションCD3枚組で、シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)の曲を認識する。「ディス・トレイン」と「アップ・アバブ・マイ・ヘッド、アイ・ヘア・ミュージック・イン・ジ・エア」。うーん、これも、いわゆるゴスペルイメージとは対極の、ポップな楽器編成による突き抜けたパフォーマンス。コンピで流し聞きでなく、この方にも向き合わねばと思う。
そう、ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)、『黒人霊歌は生きている―歌詞で読むアメリカ』(2008年)でウェルズ恵子氏は「辻説教師」(jackleg preacher)として、その「生業」の実態を説明している。本邦の歴史を顧みて、聖(ひじり)、私度僧等を、あるいは瞽女(ごぜ)ら不具者に担われた門付けに代表される前近代の芸能を想起する。この対比も探究したいのだが、、、まずは、雪割りと引っ越し。

2012年3月10日土曜日

♪ダーク・ワズ・ザ・ナイト

ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)のCDを聞き続け、もしやと思い出し、出版後まもなく読んでいたウェルズ恵子氏の『黒人霊歌は生きている―歌詞で読むアメリカ』(2008年)に、ブラインド・ウィリーの章立てを再発見する。「喪失の痛みを抱いて、ブルーズへ」の章で、ロバート・ジョンソン(Robert Johnson)と2分した論説が記されている。
「ゴスペルの父」トーマス・A・ドーシー(Thomas A. Dorsey)と同時代を生きた、ブラインド・ウィリー。ニグロ・スピリチュアルからゴスペルへの接続と昇華、その関連性と区分(?)に興味が増していただけに、ブラインド・ウィリーの立ち位置と独自性に誘引される。学識者ならではの知見からウェルズ氏は、示唆に富む解説と論考を提示してくれている。「B・W・ジョンソンの歌のほとんどが、オリジナル曲ではなく、一部がメソジスト派の讃美歌で、ほかの多くは当時のストリートシンガーたちも歌っていた民間聖歌だったようだ」との指摘には、もっと詳しく知りたいと思わざるを得ない気持ちもあるが。
ヴィム・ヴェンダース監督「ソウル・オブ・マン」(2003年)でも、「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」が地球外知的生命体に向けたメッセージ楽曲の一つに選ばれて、その音源が宇宙に放たれた件が紹介されていたが、ウェルズ氏は、そのハミング歌唱の意味に言及している。元歌はあれども、自身が投影された唯一無二の歌詞世界が、パフォーマンスのベースとなっている。
「ソウル・オブ・マン」のサントラも聞いてきたが、ブラインド・ウィリーへの向き合い方が足りなかった。ウェルズ氏の論述の意味もやっと、少々分かってきた、このごろである。

2012年3月4日日曜日

春の支度とおさらいの1日に、

昨日、本日と寒気もどっているが陽射しの強さは日ましで、久々に仕事に就いたことと合わせ、春は気持ちよく迎えられそう。この間、ゴスペル続きだったので、きょうの休日もゴスペル中心でいくことに。カントリー系の穏やかな歌唱が、朝の陽射しにマッチしている。映画も見たいところだが、引っ越し作業を進めねば。春の支度と。
まあまあ、福音のおさらいの1日にしましょうか。
荷物運びのかたわら、並行してカーステレオでヴィム・ヴェンダース監督「ソウル・オブ・マン」(2003年)のサントラ。やっぱ、ルシンダ・ウィリアムス(Lucinda Williams)の「ハート・タイムス・キリング・フロア・ブルース」、ボニー・レイット(Bonnie Raitt)「デヴィル・ガット・マイ・ウーマン」はかなりよい。今週はスキップ・ジェイムス(Skip James)に入っていくか。

2012年3月1日木曜日

私の福音

昨日から新しい職場に出勤。20数年前暮らした札幌市東区の某地区で、懐かしさと目新しさ、思いのほか方向転換の意志に見合った(たぶん)モードで進んでいる感じか?ゴスペル志向の最中で、春直前での変わり目。通算、20年ほどの会社勤めからの転換としての道ではあるが、どう転んでいくことか。
ブランクが空いていたが今回の引っ越しを機に、亡き知人から引き継いだ音源集に、徐々に直で向き合おうという気に。その1枚、CD『クラプトン・クラシックス』にはブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)の「ジーザス・イズ・カミング・スーン」が、、、これも福音、私にとっても、、、かな。これって、この前の購入盤にはないようなー、たぶん。

2012年2月26日日曜日

バーバラ・ヘンドリックスに教わる

ブラックとホワイトを巡って、やっぱり、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」に繰り返し戻ってくる。カントリーミュージシャンたちが歌っているのは、もちろん、A・P・カーター(A.P.Carter)作詞。旋律に前史があるのは、何とはなく意識していたが、ゴスペルで歌われているのは「グローリー、グルーリー !(ハレルヤ!)」として、そして本日の気づき、そのルーツはニグロ・スピリチュアルの「ホエン・アイ・レイ・マイ・バーデン・ダウン」。20駿年前に購入したバーバラ・ヘンドリックス(Barbara Hendricks)の黒人霊歌集で再発見する。「この重荷をおろしたら」という、元歌の歌詞はシンプルで典型的なスピリチュアル。ザ・バンド(The Band)の「ウエイト」とは呼応関係、発展系になっているのにも感心。
それにしても、この辺の関連、日本語文献では読んだ記憶がないのだが、、、どうなんだろう。

2012年2月25日土曜日

最後に、♪ファーザー・アロング

今日は寒が戻ってます。ブラック・エース(Black Ace)の「ファーザー・アロング」への気づき(ゴスペルを巡るブラックとホワイト、2012/02/09)で、もっと早く認識しておくべきことも。ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(NGDB)『Will the Circle Be Unbroken』のボックスセット、CD5枚目の最後、つまり、ボリュームⅢのアルバムで締めを務めたランディ・スクラッグス(Randy Scruggs)のギター・インストゥルメンタル曲、そして、ボーナスDVDのタイトルでもあった。何やら意味深長。ちなみに、DVDには表題曲のライブ演奏はないと思っていたのだが、、、
ただ、厳密に言うと「ファーザー・アロング」はエンディングではなく、遊び心的ボーナス・トラックの「ウエイト」が演奏されフェイド・アウトしていく(♪ウエイト、カントリー・ゴスペルとロックの出会い、2011/11/08)。
寒さの中、部屋の椿が一輪咲く。ゴスペルからスピリチュアルへとなびいてきているが、明日はどちらに。

◆追記◆
再び、♪ファーザー・アロング(2012/08/15)
ジョージ・ジョーンズ逝く(2013/04/28)

2012年2月24日金曜日

ギターを持った伝道師

本日、回線移設完了でいよいよ新しい環境へ。昼間はやっと、日一日と氷雪が解ける感じに期待。今週はついに、ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)のCD16曲入りを入手、ピッタリはまる。ブラインド・ウィリー、そうですか、「ギター・エヴァンジェリスト」って言い方もあるのね。「ダーク・ワズ・ザ・ナイト」、うなっている、ギター、いいね。クレジットはトラディショナル1曲を除き、すべてウィリー。ジェントルな歌い口もある、「アメイジング・グレイス」の元歌(旋律)って感じで、中盤から移ろいでいく。
そうそう、AV環境も復調。録画映画も消化していかなくちゃ。

2012年2月19日日曜日

上映されなかった、C・イーストウッド映画

引っ越し作業は寒気で進まず、本日もマイナス20度近い冷え込み。あと数日はこんな感じか。その後の降雪が抑制されているのと、陽射しの強まりに元気づけられているのだが。移転先へ先に居を移しつつネット環境は週末になるのでしばしの間、DVD・録画類の鑑賞でモチベーションを高めようか。
ヴィム・ヴェンダース監督「ソウル・オブ・マン」(2003年)のサントラ盤、ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)本人音源は表題曲のみだった?CDも手元になかったかな、もっと聞きたい。そう、ブルース100年の映画プロジェクトで、連作のうちクリント・イーストウッド監督の「ピアノ・ブルース」(2003年)だけは札幌でかからなかったので、これもまた、あらためて観たい気持ちが高まってきた。DVDか。この方向だと、ジャズに再接近することになりそう。いわんや、イーストウッドの周辺で音楽を探ると、またまた深みにはまりそう。それもよいか。

2012年2月18日土曜日

〈ソウル・オブ・マン〉

ヴィム・ヴェンダース監督「ソウル・オブ・マン」(2003年)は、3人のブルースマンに焦点を当てているが、映画タイトルに転用された表題曲を演奏するブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)を描いた映画手法は映画史に記憶されるべきもので、ブルースの歴史と音楽性を表現する相乗効果で成功している。
コーラスの黒人女性ひとりを伴った演奏と生活を映した「コマが足りない」感じのモノクロームのフィルムは、「よくぞこんな歴史的映像が残っていたものだ!」と、感心半分、不思議半分な心持ちを抱かせる。ヴェンダースによると1920年代前半に使われていた手回しカメラ(骨董品!)で撮影した再現ドラマなのだというから、繰り返し観て吟味したくなってしまう。
ヴェンダース担当の本作はブラインド・ウィリーとスキップ・ジェイムス(Skip James)、J・B・ルノアー(J. B. Lenoir)の古典曲を、ルシンダ・ウィリアムス(Lucinda Williams)、ベック(Beck)ら現代ミュージシャンたちが解釈するといったトリビュート企画が、もう一つの柱となっているだけに愛着も増す。
神にも増して、悪魔も歌うブルースマン。ゴスペルフィールドからアプローチしてきたのだが。

◆追記◆
ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)関連で、、、
♪ダーク・ワズ・ザ・ナイト(2012/03/10)
♪マザーレス・チルドレン(2012/07/05)
ディラン、ファースト・アルバムの元歌対比集(2014/06/08)
ほかに、
T=ボーン・バーネットつながり(2014/07/08)

2012年2月17日金曜日

ゴスペル・ギター

ブラック・エース(Black Ace)からシスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)で、ロゼッタの「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」から離れられず。歌唱にも特徴があるが、何といってもギター。スピリチュアルならではのアカペラ・ゴスペルとは対照的に、かき鳴らされるリズムのはっきりしたブルース調ギター。ちょっと、ほかの曲も聴いてみたくなる。
ゴスペル・ギターで思い出したのは、ブルース100年の映画プロジェクト。第1作として観たのが、ヴィム・ヴェンダース監督「ソウル・オブ・マン」(2003年)で、カーステレオでサントラCDを流して記憶をたどる。ブラインド・ウィリー・ジョンソン(Blind Willie Johnson)、スキップ・ジェイムス(Skip James)、ちゃんと聞かなくちゃ。
生活の変わり目として、6ヵ月間の通い充電期間もそろそろ終了。春に向けて動き出すか。でも、今朝のマイナス20度はつらかったなぁ。

2012年2月12日日曜日

♪ピース・イン・ザ・バレー

ものの本によると、トーマス・A・ドーシー(Thomas A. Dorsey)が「ブラック・ゴスペルの父」と呼ばれているそうで、「ピース・イン・ザ・バレー」は代表作品の一つだということを知った。ジョニーキャッシュ(Johnny Cash)、エルヴィス・プレスリー(Elvis Presley)の歌唱には親しんででいて、レッド・フォリー(Red Foley)の録音も手元にあった。たまたまか、ブラック系を聞いていないような気がするが、、、認識不足か。
ブラックとホワイト、「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」、その後、エラ・フィッツジェラルド(Ella Fitzgerald)、シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)の歌唱をみつける。スピリチュアルルーツなんだろうな、ジャズバージョンがあるとか、さらに探究中。
雪降らなくてよかった。でも、寒かった。明日からこそはと、希望。

2012年2月11日土曜日

♪ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン

本日も早朝はマイナス20度近い冷え込み。体が慣れてきたのと春への期待でどうにか持ちこたえる。最高気温もマイナス7度の予想だが陽射しの強さも日ましで、天気がよければ氷雪を溶かしていくのが心地よい。このモチベーションを得て、引っ越し本格着手へ、との気持ちになる。とりあえず、荷物運んで、、、掃除が最大の難関。
本日は移転先のAV環境を整え、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(NGDB)『永遠の絆(Will the Circle Be Unbroken)』のボックスセットのDVDでも観ようかな。ここでまた、仕切り直し。このサークルも一回転。
明日も晴れたらいいな。

2012年2月9日木曜日

ゴスペルを巡るブラックとホワイト

今朝はマイナス16度くらい。寒気が戻りつつも、もう少しの我慢と、春への期待で前向きに気持ちを整える。この間とどまっている、コンピレーション3CDセット『THE ESSENTIAL GUIDE TO GOSPEL』1枚目でブラック・エース(Black Ace)の「ファーザー・アロング」に気づく。ブラックの歌唱、、ミシシッピ・フレッド・マクダウェル(Mississippi Fred McDowell)のような濃厚ブルースではなく、フォーク、ヒルビリーっぽい香りがあるのが特徴。
気づいたのは,ほぼこの同時期、アーネスト・タブ(Ernest Tubb)の「ファーザー・アロング」をカーステレオのCDで流していたこと。カントリー・ブルースか?、ゴスペルを巡るブラックとホワイトの関係性、ブラック・エースの立ち位置、調べてみたくなる。

◆追記◆
最後に、♪ファーザー・アロング(2012/02/25)
再び、♪ファーザー・アロング(2012/08/15)
♪ロック・オブ・エイジズ(2013/01/05)
ルーツをたどり、レスリー・リドルへ(2013/02/04)
ジョージ・ジョーンズ逝く(2013/04/28)
ソングスター!?だったのか。(2013/07/18)

2012年2月5日日曜日

〈スーパー8〉

映画界をフィルム力で支えてきた寡占・巨大企業、米イーストマン・コダック社が米連邦破産法適用を申請と、報じられたのは先月下旬であったか、デジタル化の進展状況を知らしめるニュースであった。映画の自主製作に少しは関わった経験のある映画ファンにとって、昨年公開の「SUPER8/スーパーエイト」(2011年)は、「物語の出来栄え」はともかく、ノスタルジーを醸し増幅する仕掛けに誘引力があった。パーソナルユースのムービー製作システム、コダック・スーパー8で自主製作に興じる主役・少年は、スピルバーグの子供時代を描いたかと紛う導入から展開が、トリビュート・トゥ・スピルバーグを基軸に、凡庸な言葉ではあるが「映画愛」に満ちている。
もっとも、製作チームの少年らが歌っていたのは、ザ・ナック(The Knack)の「マイ・シャローナ」、ラジオからはブロンディ(Blondie)が流れてくるなど、時代設定は1970年代末か1980年くらいで、たぶん監督のJ・J・エイブラムスの記憶。自主製作映画のシナリオコンセプトは「レイモンド・チャンドラー風ハードボイルドのゾンビアレンジ」で、特殊メイクのディック・スミスへのオマージュも。現在までの隆盛を誇る「ゾンビ」の定型をワールドワイドに普及したジョージ・A・ロメロ監督の「ゾンビ」は1978年、私どもの映画記憶でもある。

2012年2月4日土曜日

♪アメイジング・グレイスに共通して、

コンピレーション3CDセット『THE ESSENTIAL GUIDE TO GOSPEL』の1枚目続きで、パッツイ・クライン(Patsy Cline)の「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」。黒人系ゴスペル、カントリー双方で広く長く歌われているスタンダード、その意味では珍しい楽曲なのかなと考えてみる。ほかに思いついたのは、「アメイジング・グレイス」くらい。この曲は、昨年公開されたマイケル・アップテッド監督の映画「アメイジング・グレイス」(2006年)でも描かれたように、奴隷船の船長を経験した英国人の作詞。ニグロ・スピリチュアルではないので、これだけ黒人に受け入れられているのも妙、とか思ったりっも。
「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」、新しいものではサラ・エヴァンス(Sara Evans)のバージョンが手元にあるのを見つけて聴いている。この組み合わせも、ちょっと意外、でも、カントリー・ミュージックらしさにも思える。

◆追記◆
スコッチ・アイリッシュと♪アメイジング・グレイス(2014/10/02)

2012年2月1日水曜日

ローズ・マドックスの時代

コンピレーション3CDセット『THE ESSENTIAL GUIDE TO GOSPEL』の1枚目、ローズ・マドックス(Rose Maddox)の歌唱は「ターン・ユア・ラジオ・オン」と「ギャザリング・フラワーズ・フォー・ザ・マスターズ・ブーケット」で、後者はマドックス・ブラザーズ(The Maddox Brothers)によるパフォーマンスとして。ゴスペルのタイトルは、これまでほとんど記憶してこなかったけど、ともに曲調は耳に馴染んだものとして響く。トラディショナルというより創作曲らしい。
「ギャザリング・フラワーズ・フォー・ザ・マスターズ・ブーケット」は別なCDセットで、ローズよりやや年長、キティ・ウェルズ(Kitty Wells)の歌唱を見つける。大恐慌による荒廃から大戦を経てといった、ほぼ同世代による、カントリー・クラシックの女王道といえる演奏が心地よい。(カントリー)ゴスペルの楽曲目録も整理してみたくなる。
寒波続いて今朝もマイナス20度?月も替わったし、今日ぐらいで底打ちにしていただきたいものです。

◆追記◆
マドックス・ブラザーズ・アンド・シスター・ローズのアルバム(2013/05/21)
ヒルビリー・バンド(2013/05/31)
この春はローズ・マドックスで、(2014/03/08)

2012年1月31日火曜日

ストーンズが歌ったゴスペル

『THE ESSENTIAL GUIDE TO GOSPEL』というコンピレーション3CDセットで、ゴスペルを再学習中。1枚目は「ルーツ&パイオニア」がコンセプトというが、ローズ・マドックス(Rose Maddox)、ミシシッピ・フレッド・マクダウェル(Mississippi Fred McDowell)の歌声に耳が止まる。フレッド・マクダウェルって、ローリング・ストーンズ (The Rolling Stones) の「ユー・ガッタ・ムーヴ」のオリジナルを歌っていたブルースマンだったね!フレッド・マクダウェル歌唱の原題は「ユー・ガット・トゥ・ムーヴ」だったか、。そこで、気づいたんだが、この曲って「ゴスペル/スピリチュアル」だったんだ。何て、ブルースとゴスペルの垣根の低いことか。ゴスペルといっても教会で歌う讃美歌ではない、俗と聖が直でつながるシンプルな世界観の歌詞。カントリー・ゴスペルもそうだが、宗教観をベースにした多様な表現のゴスペルが、ここかしこに存在していることを再認識した。
少し調べてみると、フレッド・マクダウェルが創作したという訳ではなく、スピリチュアル・俗謡としての歴史があるらしい。古い録音ってほかにあったかなぁ。

2012年1月30日月曜日

♪マリア、を歌う韓流女優

昨日、「きみはペット」(2011年)という韓国映画を観たが、原作は日本の少女漫画ということで、同パターンの「カンナさん大成功です!」(2006年)を思い出した。2008年には本邦でも映画化されており、残念なことに、日韓の映画製作力の差が明示されることとなった。韓国版は主役に「吹き替えシンガー」という脚色を加え、仕掛けの「全身整形」後に、ブロンディ(Blondie)の「マリア」を歌わせている。コメディとしてのプロット、演出も上々だが、主演女優のキム・アジュンによるキュートでキャッチな歌唱パフォーマンスが観客を吸引する触媒となっている。
「きみはペット」はというと、キム・ハヌルのコメディエンヌ力に期待していたが、ひと昔前のトレンディードラマといった凡庸な感じだった。今日は、雪かきなしで一息。キム・アジュン、ブロンディ、聴いてみようか。

2012年1月29日日曜日

パッツイ・クラインのハンク・ウィリアムス・トリビュート

昨日の大雪で、朝は雪かき。寒波厳しく指が痛い。ここのところ、ハンク・ウィリアムス(Hank Williams)から離れられず、トリビュート続きでCD『タイムレス~ハンク・ウィリアムス・トリビュート』も聴き直す。元々お気に入りだが、今回はライアン・アダムス(Ryan Adams)の「ラブシック・ブルース」を再発見。日本盤なのでライナーノーツ充実していて、これも再勉強、収録曲ごとに歴代のカバー・アーティストを列挙してくれており、探してみたくなったりもする。Lovesick Blues、でも、今一番フィットするのは、コンピレーションCD『 Lost Haighway A Tribute To Hank Williams』パッツイ・クライン(Patsy Cline)バージョンだな。ブルースだけど、明朗で元気なパフォーマンス、楽器編成に懐かしさ、こんなピアノが好き。ロカビリー、ロックにつながる感じがよく分かる。

2012年1月28日土曜日

〈プレイリー・ホーム・コンパニオン〉

マイナス20度以下が連日などと激寒の1週間、昼間も気温が上がらないし。モチベーションを高めようと、ロバート・アルトマン監督の遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006年)のサントラをかける。映画は「ア・プレイリー・ホーム・コンパニオン」というカントリー系ラジオ番組の司会者による企画・原案という、ステージパフォーマンス付き群像劇。パフォーマンスがカントリー・ミュージックの実際をみせてくれている面白みもあるが、死や終幕を示唆したドラマにもかかわらず俳優が躍動、かつ、カタルシスを提供するアルトマンの職人技にひかれる。
巷の映画館で、アルトマンの1975年作「ナッシュビル」が上映されているのに気づき、調べてみると、DVDも近く発売されることを知る(たぶん初めて?)。TV等での放映もほとんど記憶になっかた作品。しばし、再見を楽しみにしましょうか。

◆追記◆
1975年の〈ナッシュビル〉(2012/05/17)
♪フランキーとジョニー(2012/11/10)

2012年1月23日月曜日

グレン・キャンベルが出演した映画

1週間ほど前に、キネマ旬報のベストテン発表。現時点で鑑賞済みは、邦画が大鹿村騒動記八日目の蝉東京公園モテキマイ・バック・ページ、洋画はソーシャル・ネットワーク英国王のスピーチブラック・スワントゥルー・グリットヒア アフター――と、5本ずつ。生活環境変化で9月くらいから、あんまり劇場に通えず、もう少し観たかったという感じ。ほとんど順位には関心ないですがメルクマールとして。
コーエン兄弟の「トゥルー・グリット」のオリジナル「勇気ある追跡」(ヘンリー・ハサウェイ、1969)はTV録画が残っていたので再見。基本的なプロットは一緒、晩年の味わいが出てるジョン・ウェインの主演で、マット・デイモンが演じたテキサス・レンジャーの伊達男はグレン・キャンベル、たぶん、主題歌もと思ったがメモしていなかった。所々エピソード・演出が違い、中でも、オリジナルのエンディングは仇を討った父の墓を訪れた少女マティ・ロスとコグバーン保安官(ウェイン)の泣かせるやりとり。この味わいを再認識できたのは収穫。
昨日は少し緩んで、今夕からまた寒波ですか。

2012年1月22日日曜日

キティ・ウェルズの♪コールド、コールド・ハート

ハンク・ウィリアムス(Hank Williams)のトリビュート続きで、ちょっと変わったコンピレーションCD『Country Stars Salute Hank Williams』という3枚組。ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)、ビル・モンロー(Bill Monroe)、ウィルバーン・ブラザーズ(The Wilburn Brothers)、レイ・プライス(Ray Price)、マーティ・ロビンス(Marty Robbins)、キティ・ウェルズ(Kitty Wells)、ジョージ・ジョーンズ(George Jones)、アーネスト・タブ(Ernest Tubb)の8人・組による47曲だが、このうち、オリジナル12曲は複数のパフォーマー録音が収録され、「アイ・キャント・ヘルプ・イット」、「ユー・ウィン・アゲイン」と「コールド、コールド・ハート」は3人よって競演され、同一ディスク内でのタイトル重複も辞さないといった編集具合だ。
『 Lost Haighway A Tribute To Hank Williams』と違って、CDタイトル通り基本的にカントリー色濃厚なパフォーマーによる演奏。昭和のノスタルジー彷彿ともいえるが、キティ・ウェルズ、ジョージ・ジョーンズの歌のうまさ、歌唱自体に吸引力があり、またまた、しばし繰り返し聴いている。ちなみに、「コールド、コールド・ハート」は、ジョニー、キティ、ジョージが歌っている。

2012年1月21日土曜日

♪ロスト・ハイウェイの作者

寒気が続く中、ハンク・ウィリアムス(Hank Williams)のトリビュートものを聴き流してきた。コンピレーションCD『 Lost Haighway A Tribute To Hank Williams』は、アルバムとしてかなり気に入っている。パッツイ・クライン(Patsy Cline)、マドックス・ブラザーズ&ローズ(Maddox Brothers & Rose)らカントリー畑のほか、ジェリー・リー・ルイス(Jerry Lee Lewis)、ダイナ・ワシントン(Dinah Washington)、ローズマリー・クルーニー(Rosemary Clooney)、ジョー・スタッフォード&フランキー・レイン(Jo Stafford & Frannkie Laine)、ジョニ・ジェームス(Joni James)、ファッツ・ドミノ(Fsts Domino)など、多彩なジャンルから個性豊かなパフォマーが競演。収録24曲のうち、最初と最後は「コルード、コルールド・ハート」で、それぞれトニー・ベネット(Tony Bennett)、ルイ・アームストロング(Louis Armstrong)の歌唱というのもしゃれている。
さて、「アイム・ア・ローリング・ストーン」の歌詞を含んだハンクの歌唱が、ボブ・ディラン(Bob Dylan)の「ライク・ア・ローリング・ストーン」創作にインスパイアしたとの説がある「ロスト・ハイウェイ」。何気に聞き過ごしてきたが、この曲、オリジナルは作者であるレオン・ペイン (Leon Payne)、コンピレーションCDはレオン自身の歌唱収録であることを発掘・発見してしまった。認識不足。

2012年1月15日日曜日

♪ユー・エイント・ゴーイング・ノーホエア

寒波緩まず、今朝もいたい。ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(Nitty Gritty Dirt Band)の『永遠の絆(ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン)』のボリュームⅡ(1989年)に戻ってみると、ボブ・ディラン(Bob Dylan)作の「ユー・エイント・ゴーイング・ノーホエア」が収録されているところに今さらながら逆の意味で意外性を感じた。云、ビッグ・ピンク、ベースメント時代の曲であったか。もっとも、パフォーマーはバーズ (The Byrds)のロジャー・マッギン(Roger McGuinn)がメーン。ディランのオリジナルでは『グレーテスト・ヒット第2集』(1971年)か、「マイ・バック・ページズ」、「見張塔からずっと」などもあるし、こちらも聴き直したい気持ちに、、、いわゆるベスト・アルバムではない編集に特徴と意味があったんだね。
ボリュームⅡ、カーター・ファミリー(The Carter Family)3姉妹がそろったサポートによる、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)の歌唱も感慨深くて繰り返し聴いてしまう。

◆追記◆
□ボブ・ディランの30周年記念コンサート、を拝見(2014/03/20)

2012年1月14日土曜日

♪ダイヤモンドの原石

昨日から真冬本番の寒波到来、日は少しずつ長くなっているのが救い、春が待ち遠しい。ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(Nitty Gritty Dirt Band)の『永遠の絆(ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン)』のボリュームⅢ(2002年)を聴いていて、ジューン・カーターキャッシュ(June Carter Cash)の「ダイヤモンド・イン・ザ・ラフ」が心に響く。ほとんど晩年の録音だし。ギターはアール・スクラッグス(Earl Scruggs)ですか。ジューンの「カントリー・ゴールド」遺産といえる『プレス・オン』(1999年)も引っ張っぱり出して聴く。ジューンのライフステージから拾ったアルバムジャケットの写真集がサウンドが醸す感慨を助長する。
そう、アルバムタイトルを示唆する「ダイアモンド・イン・ザ・ラフ」はオリジナルのカーター・ファミリーのナンバーなんだよね。手持ちのCDを探してみたが、オリジナルバージョンは発見できず。これも聴いてみたいものです。

2012年1月9日月曜日

♪フォギー・マウンテン・ブレイクダウン

今朝はマイナス9度、今冬最低だった昨日のマイナス20度を経験しただけに少し緩んだ気もするが、まだまだ寒気の最中。マ-ル・トラヴィス(Merle Travis)の「ダーク・アズ・ア・ダンジョン」に導かれて、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(Nitty Gritty Dirt Band)の『ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン』(1972年)にもどる。やっぱり、よいなぁ、名演づくし。マール、ロイ・エイカフ(Roy Acuff)、ジミー・マーティン(Jimmy Martin)ら大御所の競演もあるが、アール・スクラッグス(Earl Scruggs)作の「フォギー・マウンテン・ブレイクダウン」も収録。今さらながらだが、この曲ってアメリカン・ニューシネマの嚆矢「俺たちに明日はない」(1967年)のサウンドトラックだったよね。
アメリカン・ニューシネマで育った世代として、バンジョーの小気味よい感じは記憶しているが、初めて見た当時はカントリー&ブルーグラスのミュージシャンまでは意識していなかったなぁ。ジャズやクラシックと映画の関係を説いた本邦の書籍は多々あるけど、カントリー・ミュージックと映画では、西部劇などを除くとほとんどないような気がする。この辺も整理して勉強してみたいものです。

2012年1月8日日曜日

♪ヘイ、グッド・ルッキン

『Bob Dylan's Country Selection』、オリジナルパフォマー別ではハンク・ウリアムス(Hank Williams)9曲、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)5曲、ハンク・スノウ(Hank Snow)4曲、ジミー・ロジャース(Jimmie Rodgers)とスタンリーブラザーズ(The Stanley Brothers)が3曲ずつなどの収録。むべなるかなの印象。カーター・ファミリー(The Carter Family)は2曲で、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン(バイ・アンド・バイ)」はロイ・エイカフ(Roy Acuff)盤となっている。
ハンク・ウリアムス原詞の音楽復刻により、昨年発売されたCD『The Lost Notebooks Of Hank Williams』に中心的に関わったディラン。これは意外性あり。セレクションのノーツによると、ハンクの「ヘイ、グッド・ルッキン」も1回限り披露したことがあるのだそう。セレクションのディランパフォーマンスを並べて聴いてみたくなる衝動がもたげる。また、鈴木カツ氏の著書によると、ディランは最近、カーター・ファミリーのトリビュート企画を温めているとのこと。こちらも楽しみである。

2012年1月7日土曜日

『ボブ・ディランズ・カントリー・セレクション』

ネット上で「こんなのあるんだ」と何気なくみつけて発注し年末に届いたCD2枚組『Bob Dylan's Country Selection』、ディランが録音したりツアー等のカバーパフォーマンスで取り上げた、カントリークラシックのオリジナルバージョン集という趣向。カントリーを集中して聴き始めたのは最近で、ベスト盤やトリビュート盤的なものが多くなっていたが、その意味でこの企画はカントリー・ミュージックの秀逸なベスト盤となっていることに感激した。
鈴木カツ氏の『ボブ・ディランのルーツ・ミュージック』プラスアルファで、ディランのカントリー渉歴がみえてくる。全42曲の解説付き(輸入盤なので英文)もありがたい。カーター・ファミリー(The Carter Family)の「リトル・モーゼス」、マーティ・ロビンス(Marty Robbins)の「エル・パソ」など意外に思える曲も多々、今現在、オリジナルとしてのマ-ル・トラヴィス(Merle Travis)の「ダーク・アズ・ア・ダンジョン」にしびれている。これも炭鉱ソング?

2012年1月4日水曜日

キャリー・アンダーウッドのゴスペル

そういえば、最近のディズニー映画「魔法にかけられて」(2007年)の挿入歌にはカントリー系、キャリー・アンダーウッド(Carrie Underwood)の歌唱が採用されていた?この映画でお姫様を演じたエイミー・アダムス、キャラクター然として生気が抜けて照れや気負いのない感じがよかったなぁ。それからすっかりマイフェヴァレット、注目の女優に。
今朝は雪かきの後、グランド・オール・オプリーでのゴスペル演奏集を聞いているところ。キャリーの「ハウ・グレート・ゾウ・アート」、これも相性がよい。どうも、わが国では「ゴスペルは黒人音楽」のような思い込みがなきにしもあらずか、白人系が歌うとナショナリズムの鼓舞と受け取る向きになる。でも、カントリー・シンガーの歌うゴスペルって、やっぱり心性(信仰より広い意味で生活感覚部分の心持ちも含め)と伝統がある。歴史を踏まえつつ聞いてみたいものである。

2012年1月3日火曜日

♪ベイビー・マイン、ジャンボの想い

「ベイビー・マイン」、ディズニーのアニメーション映画「ダンボ」の挿入歌で、母象・ジャンボの想いを唄う。コンピレーションCDではアリソン・クラウス(Alison Krauss)が歌唱。よく知った曲と思っていたが、考え直して、スタンダードといえるほどカバー録音は手元に発見できなかった。歴史的なサウンドトラックであることには違いないと思う。
フィドラーでもあり、十代から活躍してきたアリソンの魅力はアコースティクにフィットする感性を伴った美声。かなり以前、TV放映でライブをみた印象で失礼ながら田舎(カントリー)っぽい容姿と拝見、そこにも土地に根差した音楽を感じたりして。現在は40歳くらい?アルバムジャケットなど、その後、随分とあか抜けてきたようにみています。

2012年1月2日月曜日

♪サムデイ・マイ・プリンス・ウィル・カム

「いつか王子様が」は、デイブ・ブルーベック、ビル・エヴァンス、マイルス・デイビス、キース・ジャレット等々と、ジャズ大御所の録音による多彩な解釈で知らるスタンダード、これくらいになってしまうと、戦前のアニメーション「白雪姫」のオリジナル挿入歌を知らないひとも多いのかも。
カントリー歌手によるディズニー・コンピレーションCDでは、タニヤ・タッカー(Tanya Tucker)が歌唱。ガラ声に特徴、パワフルで元気に満ちたパフォーマンスは、(希望の?)新年の早朝に馴染んで気持ちよい。

2012年1月1日日曜日

♪サークル・オブ・ライフ

新年、モチベーションを整えるため、カントリー&グルーグラスのミュージシャンたちによるディズニー楽曲集から聴き始める。基本的に相性がいいよね。「ライオン・キング」の「サークル・オブ・ライフ」って、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」の返歌なんだね。(残念ながら現在まで、映画もミュージカルもみていなかった。)一方で、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」はカーター・ファミリー以前のゴスペルとしての前史があるわけだから、国民性に根ざした文化というのは本当に奥が深い。もっと分かりたいと思わずにはいられないのだが、、、