2015年2月26日木曜日

「リトル・フォレスト 冬・春」

4部作の後編なので上映終了が気になったりもしたが(縮小っぽい回転数であったし)、なんらかの期待を抱きつつ、森淳一監督の「リトル・フォレスト 冬・春」を鑑賞。トータルで、これらの映画がつくられる日本映画界は、まだまだ見限るものではない――と自省してとりなすことができたのが成果であり、評価であった。夏・秋編で播かれた、橋本愛が演じる主人公の若い女性と失踪した母との関係の推移や彼女の都会生活での挫折らしき経験といった含みの深層は、必ずしも解き明かされていない。農の営みから糧を得て仕込み、調理し、食する生活を積み重ね、人間の距離感が保たれた孤独な思索に貫かれている。現在進行形、いまどきの産業化と競争力強化から語られる農業では、暮らしとしての本質、生きる力が見失われてしまうとの危惧も感じつつ。
プロットの終局、この回帰は希望と受け止めた。オチてはいないけど、わだかまりも残らず。

「リトル・フォレスト 冬・春」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

◆過去のメモ◆
「リトル・フォレスト 夏・秋」(2014/09/20)

2015年2月14日土曜日

♪ウォーター・イズ・ワイド

NHK連続レレビ小説の「花子とアン」から「マッサン」でもと、劇中で何だか同じような楽曲が使われているなぁはとは思っていたけど、最近まで意識をフォーカスしていなかった。そう、「ザ・ウォーター・イズ・ワイド」という、ブリテン系のフォークであることを再認識する。この間のバラッド探訪で聴いていたコンピレーションCDにはジャック・ハラム(Jack Hallam)のパフォーマンスが収録されていた。その他はあったかなぁと、記憶を探ってはみるが、、、私だけでなく、確かに本邦ではこれまで、さして着目度の高くない曲であったかも。でも、そうか、ボブ・ディラン(Bob Dylan)やピート・シーガー(Pete Seegler)も歌っていたんだ。認識を変えねばである。
ウェブ上には、この曲の成り立ちについて色々と論考があり示唆を得て参考にはなる。スコットランド・ルーツという大筋はあるようだが、北米育ちなのか、またしても、歌詞や旋律の変遷があるような。しばし、いくつかバージョンにあたって整理してみたいものである。

◆追記◆
その後、やっぱりこれもディラン歌唱が気になって、ブートレッグ・シリーズVol.5『ザ・ローリング・サンダー・レヴュー』(2002年)も調達してしまう。商業的なアルバムという範疇からは異彩を放つ楽曲ではあるが、ローリング・サンダーのプロジェクト・コンセプトからすると相応しい楽曲であることがよく分かるパフォーマンスだった。ジョーン・バエズ(Joan Baez)とのジョイントでもあるし。バエズの持ち歌という流れで取り上げたのかな。
『ザ・ローリング・サンダー・レヴュー』のライブも聴き入るにつけ、アプローチが異なるパフォーマンスに満ちている。アルバム・タイトルには「ライブ 1975」との表記も。個人史としては1978年のディラン初来日記念、コンピレーション・アルバムの3枚組LP『傑作』が最も馴染んだディラン体験だけにサウンドとしては違和感なく。
名曲ぞろい。しばし、ヘビー・ローテンションしてライナーノーツに向かうことに。

2015年2月6日金曜日

「ジミー、野を駆ける伝説」

当たりがないな、ちょっと遠ざかり気味だった映画鑑賞。やっぱり、ケン・ローチでしょ。アイルランドものは、いくつかあったが、この「ジミー、野を駆ける伝説」。1930年代、ジミー・グラルトンが働くことと暮らしの享受を語るスピーチは、ケン・ローチのメッセージそのものなのだろう。確かにその通りなだが、現実を顧みて、おそらくは素直に受け取れない思考の病弊が現代のわが邦に宿っているのではとの懸念もよぎる。アイルランドの歴史的・社会的背景の理解に必要な知識をそれほど多くは持ち合わせていないものの、一つのエスタブリッシュメント、コンサバティブの体現としてもカトリック教区神父の心境と態度の変容の兆しに、何かを感じる。
それはそれとして、象徴たるテーマ曲、これが「シューラルー」の正調??!この部分でも反芻して染みてしまう。関連楽曲、もうちょと探索、整理してみたい。

「ジミー、野を駆ける伝説」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

◆過去のメモ◆
♪ジョニーは戦場に行った、なの?(2014/03/02)

2015年2月1日日曜日

「ビッグ・アイズ」

1月は仕事のようなものに忙殺され、劇場で映画を観たのは2回で、31日にはティム・バートン監督の「ビッグ・アイズ」。いちおう土曜の昼なのだが、何とこの札幌郊外のシネコンにて1人貸し切り状態で臨むはめに。ティム・バートン作品にしてこの様、わが邦の現況、同胞らの映画鑑賞姿勢の有り体をあらためて知った気になったことをメモしておく。
昨年はわが邦のアート界でも「私は共犯です」発言が耳目を集めただけに、重ねてこのベイスド・オン・トルー・イベンツのプロット展開にのっかてしまう。まあ、お気に入りのエイミー・アダムスが主演ということで足を運んだのだけど。役柄の面では、全くの当たり。このポップアートは好きか否かは別にしても、ティム・バートン組お得意の色彩設計が存分に発揮できる企画であったことも奏功しているね。エンディング間近、法廷シーンは滑稽すぎるぞ。娯楽喜劇といって過言なし。
キーン夫妻ねぇ、ほとんど知識・記憶はなかったなぁ。

「ビッグ・アイズ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆