2014年5月15日木曜日

「ブルージャスミン」

ウディ・アレン監督の新作で「ブルージャスミン」(2013)。ブルーはブルース(ブルーズ)のブルー、憂鬱の象徴であった。といっても、ウディ・アレンのことだからテーマ曲に据えたのはリチャード・ロジャース&ロレンツ・ハートによるスタンダード中のスタンダード、「ブルー・ムーン」。歴史的に受け入れられているという豊かな含みを有するだけに、この楽曲の選択は確かに適切だった。会話劇の面白みはいつも通り、過去のアレン映画になかったわけではないが、おちゃらかしいコメディに終始しないシリアスな主題が潜む。笑って終わらないリアリティって感じ、まあ、セレブリティ生活の経験はないのだけど。告発口調というのではなしに、金融投資で稼ぐ行為は詐欺と表裏一体と語っているよう。精神安定剤に依存せざるを得ない心の乱れ。ジャスミン、ジンジャー姉妹のネーミングと、彼女とも里親に育てられた血縁(遺伝子つながり)のない姉妹、という設定も妙に現代的で受け入れてしまった。
「ブルー・ムーン」は1934年の作品だそうで、多くのジャズ・ミュージシャンによって取り上げられ、映画ではロジャース&ハートの伝記ものの「ワーズ・アンド・ミュージック」(ノーマン・タウログ監督、1948)が皮切りだそう。エルヴィス・プレスリーの歌唱も知られている。個人的には、『セルフポートレイト』(1970年)でのボブ・ディランの歌声に驚き、「ニューヨーク・ニューヨーク」(マーティン・スコセッシ監督、1977)での使われ方が印象に残っているな。
あと、ビリー・ホリディとかW・C・ハンディのブルーなサウンドトラックもあったね。ビリー・ホリディが歌ったの何っていう曲だったか。

「ブルージャスミン」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2014年5月13日火曜日

「それでも夜は明ける」と、、、

久々に真っ当そうな鑑賞として、「それでも夜は明ける」(スティーヴ・マクィーン監督、2013)と、、、ウェルズ恵子氏の著作『魂をゆさぶる歌に出会う アメリカ黒人文化のルーツへ』(2014・02)に対峙。
「それでも夜は明ける」は。正直どうして今?と心情的に気が進まなかったものの、始ってみると、この間の音楽嗜好とかみ合った、まさにルーツをたどるフォーク、ワーク・ソングやゴスペルの彩りで助けられて感慨を持続しつつ見通すことができた。カタルシスには至らなかったが。感慨をもたらした情景のメモのいくつか、①黒人奴隷をキリスト教の福音をもって教化する比較的マシな部類の農場主②黒人奴隷と同様の労働に従事するまでに落ちぶれた白人によるその境遇を招いた虐げる側にあった心因の吐露③妻にも伍して黒人女を性奴隷としても支配する農場主④サトウキビやコット・フィールズでの農作業、リンチを含め過剰に残酷な奴隷の扱い(描写)、、、等々。
サッカー・バナナ事件のルーツ?、ナイジェリアで現在起こっていること、いわんや、わが国や世界の国のここかしこで拭えていない人間社会の歪み、自虐的であっても歴史は顧みなければという思いに戻しつつ、この上ないタイミングで『魂をゆさぶる歌に出会う』を読み通してしまった。ウェルズ恵子氏にはかなりの部分の関心事が重なるので興味深く読めたが、この岩波ジュニア新書、文字通りジュニア向けで文章表現は平易だけど、歌詞の解釈とか内容は難しい、奥深いねーぇ。
同書で触れている「ラン、ニガー、ラン」って、農場の監督役のポール・ダノが挑発的に歌っていた曲かな??これは、さすがに商業的なサントラ盤には収録していないだろうな。
ハンマーソングのコンセプト解説では「ロスト・ジョン」を例示し、そのパフォーマーとしてブラインド・ミュージシャンのサニー・テリーやそのカバー系統でウディ・ガスリーを紹介していた。あっそうだね、ボブ・ディランが「ウディに捧げる歌」で敬意を示した3人うちのひとりがサニーだったね。

「それでも夜は明ける」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

『魂をゆさぶる歌に出会う アメリカ黒人文化のルーツへ』の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2014年5月4日日曜日

『ジーン・リッチー and ドク・ワトソン at フォーク・シティ』

気になって調達した、CDで『ジーン・リッチー and ドク・ワトソン at フォーク・シティ』をしばし聞き流す。アルバム・リリースとしては1963年か。受け止めた感じとしてはヒルビリーとかカントリーというのでもなく、ソフィストケイテッドな都会のフォーク・リバイバルのパフォーマンスとは対極にある静謐なジョイント、なるほどフォークである。ホワイト・ゴスペルとしての「アメイジング・グレイス」は素朴でさえある。そういえばドク・ワトソン(Doc Watson)は、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(NGDB、Nitty Gritty Dirt Band)の『永遠の絆(ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン)』(1972年)ではインストゥルメンタル版に参加していた「ワバッシュ・キャノンボール」のボーカルが聴かれたのも収穫。17のトラック、吟味を要する。