2013年5月31日金曜日

ヒルビリー・バンド

やっとこさ八重桜も満開。しばし、マドックス・ブラザーズ・アンド・ローズ(The Maddox Brothers and Rose)を聴いてきて、ヒリビリー・バンドというコンセプトがよく合うなと思う。ハンク・ウィリアムス系のカバーは多く、「ホンキー・トンキン」、「バケツに穴があいたなら」など、かなりイケてる。
でもやっぱり、ゴスペルに耳がとまる。茶目っ気ある陽気なサウンドの底流に醸す哀愁が相乗して語りかけるためと思われるのだが、その源は、時代なのか、ローズの声質なのか。とりわけ、「ターン・ユア・ラジオ・オン」、「ギャザリング・フラワーズ・フォー・マスターズ・ブーケット」、「アイル・フライ・アウェイ」、「ファーザー・アロング」といった、カントリー・ゴスペルの定番には楽しんで(?)聴き惚れてしまう。讃美歌のナンバーソングと異なる系統ってニュアンスかな?
そう、この辺りの共通性はロイ・エイカフ(Roy Acuff)のゴスペル歌唱・サウンドにもあるかなぁ。

2013年5月26日日曜日

♪パーティーはそのままに

取りかかり上、カントリー・ミュージックのコンテンポラリーも聴いてみたくなって、比較的最近のコンピレーションCDを選考、ドワイト・ヨーカム(Dwight Yoakam)の『プラチナ・コレクション』(2006年)とロザンヌ・キャッシュ(Rosanne Cash)の『エッセンシャル』(2011年)に着手。予想外にもカントリー・クラシックス嗜好の共通項はあるもので大御所、ドン・ギブソンが、、、いずれもゴールド・スタンダーといえるナンバー、ドワイト「オー・ロンサム・ミー」ロザンヌ「スイート・メモリーズ」ときていた。
ロザンヌのこのCD2枚組では、かつてのパートナー、ロドニー・クロウェル、あるいは、ジョン・ハイアットとの相性のよい音づくりが光る。カバー・バージョンではほかに、父ジョニーの「テネシー・フラット・トップ・ボックス」などとともに、私には意外なところで、ビートルズ『フォー・セール』(1964年)収載の「アイ・ドント・ウォント・トゥ・スポイル・ザ・パーティー」に遭遇。リズム&ブルースとカール・パンキンスらロカビリーへの意識が強い初期ビートルズ楽曲の米国本土帰り。何故に、ロザンヌがこの曲を?という気もするが、うっすら、ビートルズ作品のカントリー・シーンでの受容は結構あるようにも思える(新たな課題?)。
「テネシー・フラット・トップ・ボックス」は、手持ちの『キングズ・レコード・ショップ』(1987年)収載で、初聴時は馴染まなかったものの、割に聴き込めてきた感じ。そのほか、さらに聴き込み中。

2013年5月21日火曜日

マドックス・ブラザーズ・アンド・シスター・ローズのアルバム

エミルウ・ハリス(Emmylou Harris)のCD『エンジェル・バンド』と一緒に調達できたのが、待望のマドックス・ブラザーズ・アンド・ローズ(The Maddox Brothers and Rose)のCD『The Hillbilly Party Band』(2011年)。このファミリー・バンドが活躍したのは1930年代後半から1950年代中葉だそうで、当時の音源によるコンピレーション・アルバムだが、これまでVA・オムニバス版で、つまみ食いにしか接する機会がなかっただけに、しめたりである。
27曲詰まっていて、ジミー・ロジャース、ハンク・ウィリアムス、マール・トラヴィスらのカントリー・スタンダードが耳に止まり、それこそ「ファザー・アロング」、「アイル・フライ・アウェイ」といったカントリー・ゴスペルも交えているが、ファミリー・バンドならではの陽気で楽しいハーモニーとブギウギ・サウンドに満ち、ロカビリーといっても別物でなく、ロックン・ロールの足音が聞こえる感じだ。
一番魅力に感じるのは、やまりローズ・マドックスの明るいボーカル。ベティ・ハットン、ワンダ・ジャクソンといったパワー系の歌唱、女優ならジーン・アーサーを彷彿させる特徴ある声質で、美声でない分、親近感を強く意識する。ホンキー・トンク節でもあり。
その他楽曲の解題・探究は追々として、まず気になったのは「ミルク・カウ・ブルース」。本邦ではやはり、ロバート・ジョンソンのバージョンが著名か。エルヴィス・プレスリーもイケているが、このマドックスズのパフォーマンス、面白いと思う。そういえば、オリジナルは聴いた記憶がなかった。ココモ・アーノルド?

2013年5月20日月曜日

♪エンジェル・バンド

「オー・ブラザー!」を聴き直す(10日付)――の流れできて、以前から気にかけていたエミルウ・ハリス(Emmylou Harris)のアルバム『エンジェル・バンド』(1987年)を入手、音楽の質のよさに聴き入ってしまった。12曲中、表題と同名曲を含めスタンリー・ブラザーズが取り上げたであろう3曲は確認できたものの、クレジットはトラディショナル表記が多いゴスペル・コンセプトの選抜楽曲群で、地味さ加減がシックに響くサウンドが心地よい。
エミルウエモリー・ゴールディ・ジュニア(Emory Gordy, Jr.)の共同プロデュース。エミルウは、ソフィストケイト+インテリジェンス感あるカントリー・シンガーもしくはシンガー・ソング・ライターというのが、私に染みつたイメージであった。新進気鋭であったころのヴィンス・ギル(Vince Gill)らパフォーマーの面々による演奏・コラボレーションが極上で、カントリーサイドのアコースティック・アレンジなのだが、真にもって嫌味なく澄んで聴こえるのが、今にして新鮮に感じる。
収録曲中、最も歌われる機会が多いと思われるのは、おそらく「プレシャス・メモリーズ」か。シスター・ロゼッタ・サープ(Sister RosettaTharpe)も歌っていた。そういえば、アラン・ジャクソン(Alan Jackson)の『プレシャス・メモリーズ』(2005年)というゴスペル集、アルバムタイトルの楽曲が収録されてない?と気になっていた。どうやら、今年発売されたボリューム2に収めたようだ。
何はともあれ、まだまだじっくり聴くことに。家の庭の八重桜はまだ咲かないし。

2013年5月12日日曜日

♪キャン・ザ・サークル・ビー・アンブロークン

旅程その3、カーター・ファミリー続きで、「キャン・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」が録音されたのは1935年。元歌である讃美歌「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」がつくられたのは1907年といい、バイ・エンド・バイ~のコーラス部分はほぼ踏襲しているものの、カーター・ファミリー・バージョンは、母の葬送という個人的な吐露を刻んだA・P・カーターの詩作に妙な味わいを感じる。ニッティ・グリッティ・ダート・バンド経由で邦版化したという、なぎら健壱氏の「永遠の絆」の日本語詞も、なかなかなものだと思う。
カントリー・ミュージック・シーンではA・Pの歌詞が歌われることが多いように思われるが、タイトル表記は、何故かほとんど決まって「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」。先のニッティ・グリッティ・ダート・バンドも1972年に始まるアルバム・プロジェクトのタイトルは『ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン』だ。モンロー・ブラザーズなど讃美歌歌唱はないわけではなく、黒人もゴスペル・シーンでカルテットなどが原詞を歌っているのを聴くことがあるもののの、ステイプル・シンガーズはA・P版だったな。こうした入り組みと交錯、それぞれの意味合いをつかまえるには、未だ至っていない。この辺はさらに探究。
とにかく、とりわけカントリー・シーンで歌い継がれてきたこの楽曲、カール・パーキンスがアレンジを施しジョニー・キャッシュが録音した「ダディ・サング・バス(パパが歌えば)」の派生形を生むなど、パフォーマンスへの取り込み、親しまれ方もさまざま。
讃美歌「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」の旋律はニグロ・スピリチュアルの「グローリー、グローリー(または、レイ・マイ・バーデン・ダウン)」に倣っていると思われるが、そもそもこの両楽曲の相関がよく分かっていない。ニッティ・グリッティ・ダート・バンド『ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン』の3作目(2002年)ではタジ・マハールが加わって、A・P&「グローリー、グローリー」バージョンとして演奏されていて、なるほど。

2013年5月11日土曜日

♪大きなまだらの鳥

旅程その2、カーター・ファミリー「アイム・シンキング・トゥナイト・オブ・マイ・ブルー・アイズ」を録音したのは1929年、ロイ・エイカフのデビュー録音である「ザ・グレート・スペックルド・バード」は1936年で、同じ旋律によるこれら楽曲の歌詞、前者は世俗、後者は旧約聖書にインスパイアされたゴスペルであることと、その後のカントリー・ミュージックへの波及にあらためて驚く。メロディの印象は必ずしも讃美歌には聞こえない。英国古謡らしいが現在の学習状況では、そこまで。
世俗版の「ブルー・アイズ」ジーン・オートリーモンタナ・スリムなど多くのカバーがあるほか、替え歌版でハンク・トンプソン作という「ザ・ワイルド・サイド・オブ・ライフ」があり、それに対する女性からの返歌として「イット・ワズント・ゴッド・フー・メイド・ホンキー・トンク・エンジェルズ」がある。そして、「ホンキー・トンク・エンジェルズ」は、何とあのキティ・ウェルズを初代「クィーン・オブ・カントリー」に導いた楽曲だったとは。ロイ・エイカフも「キング・オブ・カントリー」であるし。
「ザ・ワイルド・サイド・オブ・ライフ」のオリジナルは記憶になかったが、ウィリー・ネルソンレオン・ラッセルのコラボレーション・アルバム『One For  The Rord』にあったので堪能してしまう。

2013年5月10日金曜日

「オー・ブラザー!」を聴き直す

ルーツ・ミュージックたどりの旅程検証ということで、コーエン兄弟「オー・ブラザー!」(2000)サントラ盤を聴き直す。もともとお気に入りのアルバムながら、「ユー・アー・マイ・サンシャイン」「キープ・オン・ザ・サニー・サイド」「イン・ザ・ジェイルハウス・ナウ」などを除くと、採用楽曲はレア・コア系かと思っていたが、やはり、アラン・ローマックス、カーター・ファミリー、スタンリー・ブラザーズ関連の業績後継による歌唱の数々が収められていて、あらためて聴き入ってしまった。T=ボーン・バーネットがプロデュース、21世紀に向けたルーツ・ミュージック・リバイバルの嚆矢であったことは確かだと思う。
個人的な発見と再認識。は映画のグラウンド・テーマ・ミュージックともいえる「アイ・アム・ア・マン・オブ・コンスタント・ソロウ」、トラディショナル・フォークだそうだが、スタンリー・ブラザーズの録音が知られる。そして、ボブ・ディランが1962年のデビュー・アルバムで取り上げていたとと。ピーソール・シスターズが歌う「イン・ザ・ハイウェイズ」はメイベル・カーター作だったこと。昨年入手したアニタ・カーターのCDに収録されいたが、メイベル本人のは聴いた記憶がないなぁ。スタンリーズの弟ラルフのトラディショナル歌唱「オー・デス」も昨年の新刊本『the Carter Family : Don't Forget This Song 』(著作:Frank M. Young/David Lasky)の付録CDで、カーター・ファミリー・バージョンをみつけてしまった。メキシコ国境ラジオ局時代の録音らしい。「エンジェル・バンド」もスタンリー・ブラザーズ、カーター・ファミリーともに録音のある、より以前から歌われていたゆかしい香りの讃美歌。ギリアン・ウェルチとアリソン・クラウスの「アイル・フライ・アウェイ」はグルーグラス・フォーク調の心地よいアレンジ。思い出されるのはロイ・エイカフのバージョンだが、カントリー界では現在も、まま耳にするスタンダードか。
 などなど、映像ドラマとの相乗効果狙いもあるのか、あらためて、カントリー・ゴスペル、スピリチュアル範疇が多いことにも感心する。

◆追記◆
♪エンジェル・バンド(2013/05/20)
♪マン・オブ・コンスタント・ソロウ(2013/07/25)
「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」(2014/06/19)
T=ボーン・バーネットつながり(2014/07/08)
「貧者ラザロ」で、たどってみる(2014/11/26)

2013年5月9日木曜日

「天使の分け前」

ケン・ローチ監督の新作、さて、どう受け取るか、である。樽の中で熟成するウィスキー、毎年、2%が蒸発する行方の暗喩と社会奉仕活動で更生を目指す若者がクライマックスで演じた行動を重ね合わせたモチーフがタイトルの「天使の分け前」。コミカル・キャラクターを配しつつ、前半は社会のシビアな現実に目を向けた従前のローチ調。奉仕活動の取りまとめ役(わが国の保護司みたいだが、制度が異なるので、、、)のよしみを得て、ウィスキー(テイスティング)の魅力に開眼し、親ともなった、この若者のパーソナリティと行動規範が、後半において随分と違った印象を受ける。演出もコメディとサスペンスが交錯し、ベーシックなローチ・ファンにとって終着点の見通しに迷いが生じる。
たぶん、ウィスキー文化を評価しつつ、希少銘柄に多量の資金が投下される市場形成には揶揄の視点を持つというニュアンスで、オチるのだろう。
日本人倫理にはそぐわないかとな思いつつ、わが国との対比で、刑罰偏重ではない更生の仕組み、社会奉仕活動や被害者との対話プログラムなどを興味深く見た。モルトも味わいたくなりました。

「天使の分け前」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆