2013年4月28日日曜日

ジョージ・ジョーンズ逝く

ジョージ・ジョーンズ(George Jones)、81歳にてナッシュビルの病院で26日に死去――との訃報を昨日、ネット上で目にしたが、本日宅配の朝日・日経両紙には記事がなく、?、カントリー・ミュージックの雄への評価レベルは、現代のわが国においてそのようなものかと、少々残念。哀悼を抱きつつ、今年入手したジョージのCDセットからゴスペル歌唱をかけ流してみる。そこで、、あっ、「We'll Understand It」でタイトル表記の曲って、「ファーザー・アロング」じゃん。
南部産カントリー・ゴスペル典型の楽曲で、教会斉唱ではなく民衆伝播系統と思わる、フォーク語りともいえそうな味わいが印象深い。現在、最も繰り返して聴く、ニッティ・グリッティ・ダート・バンド(NGDB)のCD&DVDボックスセット『永遠の絆(Will the Circle Be Unbroken)』、3つのプロジェクトからなるCD]5枚目の最終曲であり、かつ、ライブ収録のDVDではメーン・タイトルとして付されていることは、以前メモしておいた。ボックスセットの表題曲「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」も、旋律はニグロ・スピリチュアルらしいものの、歌詞は「ファーザー・アロング」と同様の視点があり、カントリー・ゴスペルそのものである。ちなみに、ジョージは「We'll Understand It」と同じCD(アルバム)で、この「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」も歌っていた。
「ファーザー・アロング」、社会の疲弊あるいは人間関係の軋みが見えて心持ちも悪い等々といった沈殿した日常世界の現況から、いつかこの先(ファーザー・アロング)、神の世界を理解する日が来ると、モチベーション修正をしっとり歌い上げる内容(だと思う)。もちろん宗教観もあるが、希望を歌う哀感に普遍の魅力を感じる。

◆過去のメモ◆
カントリー・ミュージックって、演歌!?(2011/12/11)
最後に、♪ファーザー・アロング(2012/02/25)
ジョージ・ジョーン(2013/02/11)

2013年4月27日土曜日

「舟を編む」

痛風の発作に痛みながら、本屋大賞受賞作の実写化で「舟を編む」を昨日、鑑賞。本は読んでないけど、たぶん、辞書づくりに携わる人々と彼らのその仕事に関わるモチベーションの有様といった原作小説のテーマはしっかりと押さえた出来栄え、キャスティングの妙と回顧感ある心地よいテンポに堪能してしまった。松田龍平はやはり、「まほろ駅前多田便利軒」(2011)、「探偵はBARにいる」(2011)とか、オフ・ビート系の役どころがフィットするし、掛け合い相手となるオダギリジョーもこのキャラクターがよいね。日本映画、いいじゃない。
下調べはほぼしないので、「川の底からこんにちは」(2009)などで評判を博する若手作家の石井裕也監督であったとは、エンドロールで再認識。これまで最も高額の製作費を計上したと思われる商業的大作映画にもかかわらず、バランスよくクオリティある仕上がりを施した手腕に感心してしまった。過去作品も観てみようか。
大阪芸大OBだとか。大阪芸大の映画作家輩出力にもあらためて驚く。日本の映画界と映画ファンにとって将来の楽しみも広がる。そうか、満島ひかりと結婚していたのね。これも含めて。

「舟を編む」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2013年4月20日土曜日

〈法界坊〉

シネマ歌舞伎化された演目続きで、TV録画ストックから「法界坊~隅田川続俤(すみだがわごにちのおもかげ)」。こちらもシネマ歌舞伎の方は見逃し。中村勘三郎さん追悼番組で昨年末放映された、串田和美演出による平成中村座の2007年ニューヨーク公演。オリジナルはまさに江戸期の上方芝居らしいが、破戒僧の法界坊を演じる勘三郎が英語台詞を交え観客とのコミュニケーションを図るといった、海外お出かけバージョンになっている。小屋がニューヨーク・フィルの本拠地エイヴリー・フィッシャー・ホールだったのも面白い。もちろん花道付き。
世話物なんでしょうが、初見から人物関係と筋立てを見立てるのは厳しい類い。ただ、たいして難しく考えることなく観ているだけで、下世話な悪人、法界坊のキャラクターの躍動が見栄えのする歌舞伎であることには違いない。海外バージョンなり、だろうと思いつつ、これも確かに勘三郎の当たり役、かつ檄演。大喜利・終幕は、一転、趣が変わり、義太夫と常磐津に分厚く支えられた怨霊の舞、、、何度か繰り返し観て、この情緒の意味合い考えてみたくもなる。
さて、さて、これもまた、海外バージョンでないものと見比べたいもの、今回の「月イチ」には予定なしか。その前に、平成中村座のニューヨーク公演、もう一本、別の演目も見ることに。

2013年4月19日金曜日

〈ふるあめりかに袖はぬらさじ〉

歌舞伎座新開場こけら落とし記念で「月イチ」のシネマ歌舞伎、札幌第二弾は「ふるあめりかに袖はぬらさじ」で本日終映、今回も上映時間が合わず断念し、初映も見逃していただけにまことにもって残念。と、やはり正月に放映された舞台版「ふるあめりかに袖はぬらさじ」の録画を思い出し、引っ張り出して視聴する。幕末、横浜の遊郭で繰り広げられる、開国論・攘夷論の衝突と沸騰といった世情をプロットに交えた世話物、思ったよりも見やすいドラマであった。原作から戯曲も手がけたという有吉佐和子氏の才気に納得、台詞の多い狂言回しである芸者を演じた坂東玉三郎は、さすがに当たり役。シネマ歌舞伎化された、「刺青奇偶」「怪談牡丹燈籠」などのドラマものの役どころより、私には、この芸者役がフィットして、感心してしまった。
「ふるあめりかに袖はぬらさじ」は舞台が先で、歌舞伎は後追いということであるが、こうなると、やっぱり、シネマ歌舞伎版も見たくなってしまう。ライブでも、と思いつつ、なかなかね、、、

2013年4月15日月曜日

「コズモポリス」

デヴィッド・クローネンバーグ監督の新作という事前情報だけで、出かけて観てきた「コズモポリス」。近年の活劇作家としての作品品質に信頼、期待していた分、モチベーションとミスマッチな結果に終始してしまった。現代作家の原作ものだそうで、金融に特化した資本主義の権化・主人公の有り体と彼が生きる近未来らしい世界観の描出は想像の範囲で、何ら映画的魅力を感じない。アイロニカル口調だとするなら、その立脚点はどこ?おそらく原作の妙は、形而上学を模した会話と、そのズレ方にあるのだろう。ネイティブではないので堪能できず。
ジュリエット・ビノシュ、サマンサ・モートン、ポール・ジアマッティ、、、キャストは必要十分だが、見どころを挙げるに乏しい。ここのところハズレ続きか。

「コズモポリス」の評価メモ
【自己満足度】=★★☆☆☆
【お勧め度】=★☆☆☆☆


2013年4月9日火曜日

「らくごえいが」

落語ネタ続きで、東京芸大大学院映像研究科が制作を手がけたという「らくごえいが」。「ねずみ」、「死神」、「猿後家」を現代映画に翻案したオムニバスと公言した割には、落語の魅力からかけ離れた凡庸な意欲作にとどまってしまった。冒頭と締めの落語家面々のインタビュー・コメントは、言い訳じみて不要。
噺のプロットを換骨脱胎して現代作品にする作業は、試験問題に取り組んだ結果のよう。あるいはトレーニング・メソッドとしては有効かもしれないが、本作に限っては、原作落語の選択を含め真摯に落語世界の風情を理解するところから始めるべきだったのでは。例えば、「死神」自体が舶来説話の翻案噺なんだし。
映画メイキング内輪話もの、、、って視点なら、まずまず観られるか。しかし、映画づくりを志す若いスタッフたちが、ハナっからそれではねぇ。キャスティングと演出、役者の演技、映像製作技術水準は相当いい感じだっただけに、苦言の方が多くなってしまった。

らくごえいが」の評価メモ
【自己満足度】=★★☆☆☆
【お勧め度】=★★☆☆☆

2013年4月7日日曜日

〈らくだ〉

歌舞伎座新劇場のこけら落とし記念の一環、札幌でも「連獅子」「らくだ」のカップリング再映が1週間行われ、トリビュート・トゥ・勘三郎のモチベーションがもたげ再鑑賞を思い立ったが、意外の盛況で入場かなわず。配給元は一部で延長上映を決めたものの札幌では今のところ予定なし、劇場の方でもより大きい小屋に移すとか、何か対応の仕様があるだろうにと、ストレスの昂じた次第。
踊りがカッコよくてアメイジングな「連獅子」は、山田洋次監督が映画手法を取り入れて編集。古典落語をプロットに据えた「らくだ」をかつて観たとき、そういえば若かりし山田監督には、この同じ落語のネタを交えた「運が良けりゃ」(1966)という快作があったなぁと思い出す。山田監督のフィルモグラフィーとして、「馬鹿まるだし」(1964)などハナ肇とのコラボレーションでアナーキーな喜劇力に満ちていた時代であった。
、、、などの想い巡らしつつ、大滝秀治主演、劇団民藝の舞台「らくだ」のTV放映録画が未見だったと、気分転換に視聴。戯曲は別役実で、落語オリジナルのバックボーンを残しつつ、別役調の不条理演劇に再構築されて、なるほどの感想。フグに中って死んだ長屋住まいのやくざもののあだ名が「らくだ」で、タイトルに掲げているのはそれぞれ共通。さらにコンセプトはゾンビダンスのルーツにも思われ、ネタの肝の「死人のかんかんのう(踊り)」も採用。山田監督の「運が良けりゃ」では、「かっぽれ」だったような気がしたが記憶違いかな?。「かんかんのう」は唐人踊り、この囃子唄の妙な歌詞自体、中国由来らしいが、、、大衆芸能のルーツ探りにも興味が沸いてきた。