2012年11月29日木曜日

「人生の特等席」

クリント・イーストウッド側近の監督デビュー作という「人生の特等席」(ロバート・ロレンツ監督、2012)。エイミー・アダムスが助演ということで早々に鑑賞。IT技術に依存したデータ・マネジメントに贖う現代のベースボール・ビジネス界で、心身に蓄積したキャリアの誇りを抱きつつ頑固に生きる老スカウトの生き様という、ストーリー・テリング自体、わが国のシニア・シルバー世代の消費志向に合致した製作であったと思う。
確かルイジアナ州の州歌で、、、などと、カントリー音楽のファンなら一言発したくなる、「ユー・アー・マイ・サンシャイン」。妻の墓標を前にその歌詞を噛み締めるイーストウッド、あるいは、カーリー・サイモン、レイ・チャールズのバージョン挿入と、この楽曲用い方が、映画のトーンを決め監督の嗜好を想像させる。眼を患った父のサポートと親子関係の再構築のため、ノースカロライナ(だったか?)へのスカウト旅行に同行した弁護士役の娘エイミーが、スカウト業の若者と地元のパブで踊るダンスは「クロッキング」といってたが、これは、アイリッシュ・フォークか。ストリート・ブルースマンのパフォーマンスとか、土地柄の描出が楽しめた。米国流の「ベースボール好き」温度も体感できて納得。
通して、エイミーとこの若者とのラブ・ストーリーのオチ、父娘関係がこじれる契機となった幼女時代の事件の顛末などプロットに、甘さがあるのが惜しいところかな。

「人生の特等席」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆
⇒シニア・シルバー世代はプラス

2012年11月27日火曜日

フォーク・リバイバル

CDショップ、店頭のワゴンセール、輸入もの1,000円盤セールから、ニューポート・フォーク・フェスティバルから拾った1960年、1959年の各3枚セットを聴き流す。ブルースやブルーグラスのパーフォーマーも出演、日本風の「フォーク」とは異なるコンセプトと見受けられれる。
前史の労はあったにしても、1959年スタートのニューポート・フォーク・フェスによって、フォーク・リバイバルはムーブメントに拍車がかかったのかなと思いを巡らしつつ、、、。而して、この「フォーク・リバイバル」というコンセプト、わが国でも同様の動きがあったにも関わらず、普及・浸透していないなぁと惜しい気持ちも。同系の畑から、マスを対象にした流行歌の創作といったシンガー・ソング・ライターの活躍で、音楽産業が膨張していった時流を経て、現在はデジタル複製技術の進化と著作権といった新たな潮目で、音楽のCD媒体が主役を落ちる日が秒読み段階であるように思われるし、複雑な音楽鑑賞ごころ。
繰り返しになるが、同時期のムーブメント中心人物の一人、ピート・シーガー(Pete Seeger)と異母弟妹、マイク(Mike)、ペギー(Peggy)の活躍が味わえて、都会人・インインテリゲンチャによるアプローチとしての「リバイバル」の意味合いに関心。マイクのニューー・ロスト・シティ・ランブラーズ(The New Lost City Ramblers)もよい味わい、ヒルビリー・ブルース調。ピート家はまさにフォーク・リバイバルのロイヤル・ファミリーか!
さて、戦前、ピートが父チャールズと同業が縁で助手をしていたという、フィールド楽曲取集の研究家・ローマックス(Lomax)父子の『American Ballads and Folk Songs』に着手。「フランキーとジョニー」も、「黒人の悪人」の章立てで「Frankie and Albert」として収録されてる。前ふりの注では派生バージョン300との記載も。ゴスペルで課題だったホワイト、ブラックの系統も、この時代、「ホワイト・スピリチュアル」、「ニグロ・スピリチュアル」の章区分に。さて、どういうことでありましょうか。
本日は初冬の嵐、まだ、冬支度終わってないのに、、、

◆追記◆
♪北国の少女(2011/11/15)
アニタ・カーターとミルト・オークン(2012/09/25)
ミシシッピつながりで、(2012/10/30)
♪グランド・クーリー・ダム(2013/03/28)
♪マン・オブ・コンスタント・ソロウ(2013/07/25)
ニュー・ロスト・シティ・ランブラーズに耳を傾ける(2013/10/22)

2012年11月19日月曜日

『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』から

今朝は積雪、いよいよ冬に向かって、、、
レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)のクリスマス・アルバム『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』、アルバム・コセプトを表している導入曲は「ホリー・ジョリー・クリスマス」。馴染んだように聞こえる通俗性のあるつくりは、「赤鼻のトナカイ」で知られたジョニー・マークス(Johnny Marks)の作詞・作曲であった。マイ・ストックで他のバージョンは?と考えてみるが、にわかに思い当たらず。録音は、そう多くないと思われる分、気にかけておくことに。
5番目はのトラックは「ディス・クリスマス」。前曲の延長上にあるコンセプトで、結構最近の楽曲かと思いきや、ダニー・ハサウェイ(Donny Hathaway)作・オリジナルは1978年発表ということ。最も得手ではないソウル系か。アレサ・フランクリン(Aretha Franklin)の歌唱が思い出されるが、オリジナルの記憶は薄く、これも課題に。

2012年11月17日土曜日

今シーズンは、レディ・アンテベラムから

今シーズンのクリスマス・アルバム第一弾として、レディ・アンテベラム(Lady Antebellum)の『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』(輸入盤)を購入、聴き始めたところ。邦盤は出なかったミニ・アルバムの拡充盤だったかな。書下ろしオリジナルは1曲?と定番を中心に12曲で、カントリー・テイストというよりはポップな仕上がりでき聴きやすい。特に、「アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス」、「ファースト・ノエル」、「レット・イット・スノー、レット・イット・スノー、レット・イット・スノー」、「ハブ・ユアセルフ・ア・メリー・リトル・クリスマス」、「シルバー・ベルズ」といった定番中の定番は、原曲のよさが生きつつユニットの持ち味もうかがえる好演と思う。
そのほか2~3曲気になるが、しばし聴き込んでみることに。

『オン・ディス・ウィンターズ・ナイト』の評価メモ
【自己満足度】=★★★★
【お勧め度】=★★★★

2012年11月10日土曜日

♪フランキーとジョニー

手持ちのミシシッピ・ジョン・ハート((Mississippi John Hurt)録音を探してみると、マーティン・スコセッシ・ブルース・プロジェクトのコンピレーションCD集に「フランキー」が収録されていた。オリジナルは1928年らしい。ジョン・ローマックスの採集にもかかった、このトラディショナル楽曲、今では「フランキー・アンド・ジョニー」として、巡り会うことが多く、ロバート・アルトマン監督の遺作「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006)では、リンジー・ローハンが熱唱していたのが思い出される。
『Frankie and Johnny - 15 different accounts of the infamous murder ballad』という、リナ・ホーンやルイ・アームストロングの歌唱、エロル・ガーナー、ベニー・グッドマン、デューク・エリントンらのパフォーマンス・セレクション集の珍しいCDも愛聴しつつ、まことにもって、この「殺人物語唄」というジャンルの存在、そして、「フランキー・アンド・アルドート」など、この楽曲には三桁を超える亜種が存在していることへの理解は進まない。人口に膾炙した俗謡として存在しているよう。成立起源も諸説あるようで、ブルース、ジャズ、カントリー、フォーク等々の広くルーツ系で演奏されていることも興味深い。こんな系統を歌い継ぐ米国人って、どんな人たち?
セレクションCDにはジミー・ロジャースの歌唱も。こちらは1931年採録か。ジョン・ハートのパフォーマンス、あらためて聴き入る。

◆追記◆
TV放映録画で「ナイル殺人事件」(ジョン・ギラーミン監督、1978)を観ながら、既視感がつのりつつ、いつどこでだったか思い出せない。たぶん、封切り間近の映画館だと思うが。「オリエント急行殺人事件」(シドニー・ルメット監督、1974)に続いてのアガサ・クリスティ原作企画で、ベティ・デイヴィスからマギー・スミス、オリヴィア・ハッセー、ロイス・チャイルズら豪華スターキャスト。婚約破棄されて「ストーカー」と化したミア・ファローが略奪婚夫妻の新婚旅行を追ってナイルの船中劇。心情吐露の場面でふた節くらいミアが歌ったのが、この「フランキー・アンド・ジョニー」であった。肝心なのは、最初にこの映画を観た時には、これがバラッドの一節であるなどとはまったく意に介さないということ。齢とともに映画の楽しみ方は深まるようで。もちろん、原作にはないよねと考えつつ、脚本家を調べたらアンソニー・シェーファーだった。「ウィッカーマン」(ロビン・ハーディ監督、1973)は結構面白かったな。そう、ピーター・シェーファーとは双子の兄弟なんだね。
ミア・ファローははまり役でした。贔屓のジェーン・バーキンも出ていたし。(2013/12/24)

2012年11月1日木曜日

マリアンヌ・フェイスフルつながりで、

ロックファンだった知人遺品のレコード・CDを整理していて、エリオット・マーフィー(Elliott Murphy)、グレアム・パーカー(Graham Parker) といったコアかつラジカルで「大人っぽい?」彼の嗜好のマニアックさと重厚感に、あたらためて敬意をいだきつつ、たとえば、ベイ・シティ・ローラズ(Bay City Rollers)といった、ポピュラーな音盤が数枚まぎれ、その意味について、考えさせられることが何度かあった。
たまたま録画で視聴した、「あの胸にもういちど」(ジャック・カーディフ監督、1968英=仏) から、マリアンヌ・フェイスフル(Marianne Faithfull)のアルバムが1枚あったことを思い出す。この意味合いは、、、、そう、エリック・バードン(Eric Burdon)、ジ・アニマルズ(The Animals)の「朝日のあたる家」に触発された、バージョン探究なんだろうなと。彼は意外とディランは薄くて、ジョーン・バエズ(Joan Baez)の音源もなかったが。
「あの胸にもういちど」のマリアンヌは、結構よかった。ゴダールものや同時期の「アンナ」も観ていると記録していたが、にわかに思い出せない。本邦公開作品では近年も多々出演作があるよう。こちらも認識薄かった。歌声から仕切り直してみるか。
アラン・ローマックス採集バージョンが最も人口に膾炙しているという「朝日のあたる家」。さらにさかのぼって、グレート・ブリテンのバラッド起源という説もあるということだが、、、これも今後の課題。