2011年12月31日土曜日

《マイ・バック・ページズ》

本年、劇場で鑑賞できた映画に「マイ・バック・ページ」(山下敦弘監督)がある。平成の世、この物語が受け入れられる余地はそう広くないようだが、連合赤軍に象徴される政治的運動の急激な転化といった、ある意味、現代史の転換点である時代に、若い監督と脚本家らのスタッフが取り組んだ成果としては十分評価できた。
私的には、原作者の川本三郎氏には映画や音楽、街歩きなどで嗜好が重なる部分が多く、若干の思い入れがあるのは確か。川本氏の亡き妻への追想記『いまも、君を想う』の書評を読んでいた記憶がよみがえり、映画に前後して入手。『マイ・バック・ページ』の原作で見えなかった部分も分かり、また、服飾デザイン関係の仕事をしていた夫人との「似たものでない夫妻」の何気ない会話を思い出しつつの、楽しかった生活の回顧と、親しい人との別れることの切なさの率直な吐露に涙した。
表題の元、ボブ・ディランの楽曲は真心ブラザーズと奥田民生のコラボで邦版としてエンドロールでかかっていた。マイ・ライブラリーを調べてみると、レコード版で『グレーテスト・ヒット第2集』(1971年)のみであった。現在、試聴環境が整ってないだけに惜しいところ。

2011年12月30日金曜日

♪タイム・アフター・タイム

「タイム・アフター・タイム」といえば、現在ではシンディ・ローパー(Cyndi Lauper)発の楽曲を指すのかな。やっぱり、サミー・カーン&ジュリー・スティン作も、スタンダードならではの味わいを忘却することはできない。何気に特段の期待もなく、TV放映バージョンでみていた「いつか眠りにつく前に」(2007年)、人生を終えようとする老女の青春ストーリー・交友関係がカットバックされる。老女、ヴァネッサ・レッドグレーヴの若かりしころを演じたクレア・デインズが友人の結婚パーティーで歌唱。さすがにハリウッド女優、キャッチがある。この唄だけで、映画の主題が感じとれる気もした。

2011年12月29日木曜日

〈北国の帝王〉

カントリー&フォークには「ホーボー・ソング」というジャンルが存在する。カーター・ファミリー「ワバッシュ・キャノンボール」などが代表例で、この「ホーボー(hobo)」という米語は、主に無賃で貨車等を使って移動する渡り労働者(ある論述では「鉄道乞食」の表現も)を意味するという。なかなかイメージしづらいホーボーであるが、ロバート・アルドリッチ監督の「北国の帝王」(1973年)を観て納得できた。大恐慌最中の1930年代、ホーボー同士のタダ乗り競争に阻止を図る車掌を加えた三つ巴の対決ドラマ、主演・帝王のリー・マーヴィンと車掌役(?思い出せない)が傑出した存在感、アルドリッチの職人演出が冴えをみせている。

2011年12月25日日曜日

♪ホリー・アンド・ザ・アイビー

ジャネット・サイデル(Janet Seidel)の日本盤『ジャネットとクリスマス!』(2004年)、「アイル・ビー・ホーム・フォー・クリスマス」、「ザ・クりスマス・ソング」など定番もカバーしているが、「ホリー・アンド・ザ・アイビー」、「ザ・シルバー・スターズ・アー・イン・ザ・スカイ」、「ビー・ゾウ・マ・ヴィジョン」など、ポップなクリスマスアルバムではめずらしい楽曲を取り上げ成功している。ジャネットの魅力は温もりを伴い奥行きある優しさ。せわしい師走の最中、ジャネットを聞いてモチベーションを整える。
このアルバム、原題は収録曲から『Hooray for Christmas』となっている。この曲も1992年作と新しい作品、ほかで聞いたことがないような気もする。

2011年12月24日土曜日

♪ザ・クリスマス・ソング、を開いてみる

スタンダード好きなので、村尾陸男氏の『ジャズ詩大全』シリーズには折に触れてお世話になっている。中でもこのシーズン開く回数が多いのが『別巻・クリスマス編』だ。もともと添え物企画のようだったが、読者らの要望で収載曲を増やし『増補・改訂版』(2006年)を出したとかで、私も両書を所有することに。村尾氏が述べているよう「内容は所どころジャズ色がない純粋なクリスマス聖歌、賛美歌に関する本」であるが、楽曲の成り立ちから映画・ミュージカル等による流行の経緯など雑多なエピソードを拾い、あるいは音楽家視点による分析によって丹念な研究成果として提示してくれている。
ジャズ系の定番としては「ザ・クリスマス・ソング」。ジャズシンガーのクリスマスアルバムには大概カバーされているがやっぱり、ナット・キング・コール(Nat King Cole)。村尾氏は、クインシー・ジョーンズ(Quincy Jones)がコール歌唱のレコードから「無人島にもっていく一枚」に挙げたエピソードを紹介。「スターダスト」などと同系、米国人はこよなく愛するが、日本人にはそこまでの贔屓目はないんだろうな、などと考えながら読む。
ちなみに『増補・改訂版』、既刊書1~19巻の「曲目索引」も相当重宝しています。

2011年12月23日金曜日

金曜日だけど、♪サンデー・モーニング・カミング・ダウン

この1週間くらい真冬の寒波、昨晩からは雪でやや寒さ緩む。いろいろあった1年だが、ここにきて身の回りの環境変化がさらに進んで、今朝は「サンデー・モーニング・カミング・ダウン」がフィットする気分。クリス・クリストファーソン(Kris Kristofferson)って、いい曲書くよなーぁて思いつつ、この曲は歌詞も含めて、繰り返し聴いたことで味わいが分かったのも確か。『The Perfect Country Collection』で、ファースト・アルバムの『クリストファーソン』(1970年)とともに、リン・アンダーソン(Lynn Anderson)のアルバム『ローズ・ガーデン』(1971年)にも収録されていた。リンのサウンドはいわば歌謡曲で懐かしさを感じる。しかし、この選曲はどうなんだろう?もう、少し聴き比べていくことに。

◆追記◆
ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)、1970年のヒットで知られ、カントリー・スタンダードの位置にあるといえるが、最初の録音は1969年のレイ・ステーヴンス(Ray Stevens)だそう。

〈白鳥の歌〉~♪アイ・ソー・ザ・ライト(2013/09/22)

2011年12月16日金曜日

チャーリー・ブラウンのクリスマス

邦題は『スヌーピーのクリスマス』だったかも。クリスマスシーズンものジャズ系のポピュラー歌唱は多々あれども、ピアノトリオの定番と言えばやっぱ、ヴィンス・ガラルディ(Vince Guaraldi)のこの盤だ。決して、お子様仕様にはとどまらない粋なジャズパフォーマンス。不勉強で記憶のみで思い起こすが、「クリスマス・タイム・イズ・ヒア」の昨今の隆盛はこの盤が起点となったのでは。この曲、ダイアナ・クラール(Diana Krall)のブレーク過程、1998年であったかミニ・アルバム収載版にも凝ったし。
それぞれ繰り返し、繰り返し聴いて飽きるわけではない。夜半、一杯の酒を引き立てるこの調べ、今年のどんな記憶の琴線を増幅するのか、年末までお世話になりたい気分である。

2011年12月15日木曜日

〈イツノヒカキミカエル〉

思い出したのでメモ。RUPの舞台で何日君再来ーイツノヒカキミカエルー」(2007年)というのが、筧利夫、黒木メイサ、石川梨華らの出演でありました。演出は岡村俊一氏、脚本は「パッチギ!」などの映画シナリオでも知られる羽原大介氏。テレサ・テン(鄧麗君)の半生をベースに置いたと思われ、李香蘭ものとは言えないが。でもたぶん作者は、『何日君再来物語』で中薗英助氏が考証した歴史経緯も踏まえたのかなという、換骨奪胎のエンターテイメント。幸か怠惰か某局のTV放映で鑑賞、映画ではない演劇的な躍動感がある刺激的な舞台ではあったと思う。

2011年12月14日水曜日

李香蘭と山口淑子の記憶

李香蘭、平成の世もこのくらいになると、この名前に反応できる人は至極限らてきているようだ。1990年代に劇団四季がミュージカル「李香蘭」を制作したのはつなぎとなっているのだろうか。最もこのミュ―ジカルは終戦まで、山口淑子の「李香蘭」時代を描いたもので、昭和の中後半の記憶は薄れてしまうのではとの危惧がもたげる。
映画好きの関心事としては、李香蘭時代に満洲映画協会の甘粕正彦、中華電影股份有限公司の川喜多長政をはじめとした現地で仕事をともにしたの日中映画人に関する当人の発言、いわゆる「歴史認識」を深める上での考えてみるべきな当時の日中の間での役回り、諜報工作を担った川島芳子(金璧輝)や将校・山家亨らとの交流に関する告白に興味が尽きないものがある。あるいは、文人・田村泰次郎との交流など。
戦後は、日本映画界への復帰、香港やハリウッド、あるいは、ブロードウェイを目指すといった活動やTVキャスター、国会議員としてなど話題はつきない。自伝によると、クライマックスはやはり、少女時代に中国北部で知り合い、上海の「漢奸裁判」にて命の恩人の働きをしたユダヤ系ロシア人、リゥバ・モノソファ・グリーネッツ(戦後、ボルシェビキとして活動)との50年を超えての再会だろう。TVドラマ化も何度かあったように記憶しているが、戦後については薄い。国産の映画にはならいのかと、不思議に思っている。

◆追記◆
♪何日君再来(2011/12/13)
〈イツノヒカキミカエル〉(2011/12/15)
《李香蘭と原節子》(012/06/21)

◆訃報◆
2014年9月14日、7日午前に亡くなられていたことが報道される。94歳。朝日新聞の慰安婦報道+αで記事取り消しと謝罪を巡る話題が沸騰する最中。戦後世代としては慰安婦問題をはじめ、時代を生き抜いた人として歩みと発言を思い起こし心にとどめねば。

2011年12月13日火曜日

♪何日君再来

ちょうど1年くらい前に勤め先を辞して、時間は使えたこともあり、以前から気にかけていた中薗英助氏の『何日君再来物語』を古本で入手、暇人ならではの感慨を獲得できたのが本年の収穫。版元では重版をしておらず、この物語が現代日本において薄れていってしまうのは、あまりにも惜しいと確認できた。
「ホーリイチェンツァイライ」、近年ではテレサ・テン(鄧麗君)、日本ではかつての渡辺はま子、李香蘭(山口淑子)などの歌唱が知られているが、日本と国民党・共産党その他を含めた中国が戦闘状態にあった1940年代誕生でスタンダードソングとしての実績を有していると思われるのだが、歴史的に中華文化圏での受け入れらえ方は政治(権力者意図)の恣意性に翻弄されたとういう、検証のルポルタージュである。
作詞・作曲者の特定に中薗氏は1980年代の中国でフィールドワークとして接近。オリジナルを歌ったと思われる映画女優・周璇(シュウシュアン)の「映画より劇的な」人生も描写される。確か、「玲玲の電影日記」(2004年)で伝説の女優扱いでストーリーに織り込まれていたのが周璇であったと記憶している。「映画愛」ストーリーを超えて、「玲玲の電影日記」どう読むか、私にはまだ、準備が十分でないようだ。

2011年12月12日月曜日

♪テネシー・フラット・トップ・ボックス

ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)のリズムって特異じゃないかとと思う。この曲もテネシー・ツーあるいはスリーなのか、バランスを伴ったライブ感覚のシンプルなキザミが引き立つユニークな語り歌だ。娘のロザンヌ・キャッシュ(Rosanne Cash)の録音を聴きたいと思っていたところ、『The Perfect Country Collection』の収載『King's Record Shop』(1987年)にて拝聴できた。
当該歌唱には満足できたものの、このアルバム、インストルメンタル強調のシャカシャカサウンドで、トータルでは好みと違っているなぁーと、思った次第。「テネシー・フラット・トップ・ボックス」のバリエーションは聞きたいわけですが。

2011年12月11日日曜日

カントリー・ミュージックって、演歌!?

カントリー・ミュージックって、演歌!?と紛うことがある。ウイリー・ネルソン(Willie Nelson)のこぶしは典型、ジョージ・ジョーンズ(George Jones)に至っては三橋美智也を想起せずにはいられない。『The Perfect Country Collection』、タミー・ウィネット(Tammy Wynette)は1968年の『Stand By Your Man』、これも演歌だなーぁ。たぶんこのころのカントリーポップって、わが国も積極的に輸入していてサウンドが同時代の流行歌に影響しているせい?カントリー、イコール保守本流と思っているわけではないが、タイトル曲の「スタンド・バイ・ユア・マン」、モチベーションの保守性がまた演歌に共通しているようにも思う。

2011年12月10日土曜日

マルチナ・マクブライド、クィーン・オブ・カントリー

『The Perfect Country Collection』マルチナ・マクブライド(Martina McBride)の収録は初期の『The Way That I Am』。力強くて元気が出る感じ。それにしても、女性カントリー・シンガーって何で美女が多いんだろう、基本的に実力も伴っているし。中でも、私のお気に入りはマルチナ。『LIVE IN CONCERT』を愛聴しているが、CDのつもりで買ったが付録?のDVDがこの上なく充実、CDの方が付け合せだったのか。確か2,000円台のはずで超お買い得。
DVDのライブを見ると聴衆は圧倒的に女性が多いことが分かる。輸入盤・字幕なしですべての歌詞を理解できている訳でないものの、マルチナの歌世界に対する支持の結果か。「インディペデンス・デイ」、独立記念日を祝しているのではなく、男に委ねない女性の自立の決意なんだろうな。

2011年12月9日金曜日

♪オールウェイズ・ラブ・ユー

メールマガジンに反応して、発注してしまった『The Perfect Country Collection』という25タイトルのCDボックスセットが予定より遅れて届く。ベスト盤ではなく歴史的名盤集という趣向、一部は既に所有していたものもあったが、もう少しカントリー・ミュージックを傾聴してみようとの思い。とりあえず、女性陣から聞き流していくことに。
ドリー・パートン(Dolly Parton)は1974年の『ジョリーン』アルバム名と同名曲は、オリビア・ニュートン=ジョン(Olivia Newton-John)の歌唱の記憶あり。そう、オリビアはカントリー歌っていたね。ホイットニー・ヒューストン(Whitney Houston)が主演した1992年の映画「ボディガード」で、自ら歌った主題歌「アイ・ウィル・オールウェイズ・ラブ・ユー」のオリジナルもこのアルバムでしたか。この曲、確か朝日新聞の「うたの旅人」で1年ほど前に取り上げられていて、ナッシュビル訪問や音楽プロデューサーのデヴィッド・フォスター(David Foster)の取材を踏まえるなど充実した内容だった。
ドリーのアルバムはサウンドが一貫していて現在の私にもフィットした。
今朝は今冬一番の冷え込みで真冬並み。明朝はどうでしょう。

2011年12月8日木曜日

やっぱり、ドリス・デイ

東京で暮らしたのは、1980年代の終わりから8年くらいであったか。当時、やはりこのシーズン、街角でクリスマス・ソングとりわけドリス・デイ(Doris Dayの歌声が聞こえてくると、孤独?郷愁?、「仕事は○日までにメドをつけないと」、「今年もどうにか1年過ごせそう」など、何とも言われぬ複雑な感慨が湧いてきたものだ。「シルバー・ベルズ」、この歌詞は日本における都会の師走のせせこましさとも重なり、速足がかりで年末年始休暇を前に浮つき加減の人波と、その時の余裕を欠いていた自分の心情が対比される。陽な人柄がにじみ出た暖かでスローな歌いっぷりが基本、やっぱり、クリスマス季にはドリスを聞きたくなる。

2011年12月7日水曜日

♪リング・オブ・ファイアー

CD『A Tribute To Johnny Cash』「リング・オブ・ファイアー」は、ジューン・カーター・キャッシュ(June Carter Cash)のソロとして収録。ジューン自身が創作に携わったラブソングで、映画「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」では、リース・ウィザースプーン(Reese Witherspoon)の情感を込めたパフォーマンスが印象深かかった。ジューンメイベル・カーター(Maybelle Carter)が産んだ3姉妹の次女だが、3女のアニタ・カーター(Anita Carter)のバージョンに、これも偶然にも遭遇、その歌唱に涙してしまった。アニタのソロの録音って手元になかったのだけど、その清廉な歌声によるアコースティクな演奏は讃美歌であるかのよう、敬虔さが漂う。カントリーのシングル盤を集めたCDの1曲で、アニタの発売は1962年とあった。アニタの歌唱、もっと聴きたい。

◆追記◆
ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)の評伝本『Johnny Cash : The Biography』(著作・Michael Streissguth氏)を読みながら(フォルサムからクレセント・シティにもどる、2014/08/07)、そうか、「リング・オブ・ファイアー」の録音・リリースはジョニー・キャッシュよりもアニタの方が早かったんだと、あらてめて。キャッシュ版はマリアッチ風のホーン・セッションとコラース入りアレンジが印象的で、アニタ版とは見事に対照をなしている。(2014/08/15)

2011年12月6日火曜日

♪アイ・スティル・ミス・サムワン

ジェームズ・マンゴールド監督の映画「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」( 2005)公開を機に本邦でも、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)ゆかりのCD等ソフト類の流通が格段に増え、たぶん、その結果として、たまたま手にできたのが1999年録音で18のトラックからなるCD『A Tribute To Johnny Cash』。ボブ・ディラン(Bob Dylan)の「トレイン・オブ・ラブ」、クリス・クリストファーソン(Kris Kristofferson)とトリシャ・イヤーウッド(Trisha Yearwood)との「サンデー・モ-ニング・カミング・ダウン」などに伍して、意外にもウイリー・ネルソン(Willie Nelson)の「アイ・スティル・ミス・サムワン」に引きつけられてしまった。これまでウイリーには特段魅力を感じていなかったのに、しかもラブソングで、である。ジョニーのオリジナル、マルチナ・マクブライド(Martina McBride) with ドリー・パートン(Dolly Parton)バージョンも発掘して「旋律の美しいうた」を再確認してしまった。
ちなみに、ウイリーはシェリル・クロウ(Sheryl Crow)と「ジャクソン」の掛け合いも演じている。

2011年12月5日月曜日

ボブ・ディランとジョニー・キャッシュ

鈴木カツ氏の著作を拝読し、ボブ・ディランの1969年『ナシュビル・スカイライン』における、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)との共演による「北国の少女」収録の経緯を概ね理解できた。ジョニーの自伝映画「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道」( 2005)では、ディランとの親交が描かれつつも、「実はどんな関係だったの?」と、こもっていたのでしたが。映画の主題ではないかもしれないけど、ボブとジョニーともに、ルーツ・ミュージックへのこの上ない敬意にあふれている本質は共通と、各々のパフォーマンスから理解できる。しかし、不思議な絆であるとの印象はぬぐえないですなーぁ。

◆追記◆
再び、ボブ・ディランとジョニー・キャッシュ(2013/07/14)
ボブ・ディランの30周年記念コンサート、を拝見(2014/03/20)

2011年12月4日日曜日

マーダー・バラッドに秘められた謎

アメリカン・ルーツ・ミュージックの成り立ちを知る上で、今年お世話になったもうひとつの著作は東理夫氏の『アメリカは歌う。歌に秘められた、アメリカの謎』。①ジョン・ヘンリーと悲しみのナンバー・ナイン②アパラチア生まれのマーダー・バラッド③北行き列車に乗りたい―ニグロ・スピリチュアルに隠された暗号④ドアマットからの脱出―カントリーの中の女性たち―――の4章立てで、これまで音楽を聴きながらこもっていたモヤモヤのいくつかに実証的な解説を提示していただいた。「マーダー・バラッド」、1人称の殺人物語り歌などという、下層のジャンル・コンセプトが何故存在しているのか不思議に思わざるを得なかったのだから。既存の研究文献にとどまらず、合衆国当地で一次資料の探索を行った成果であることにも敬意を表したい。
パフォーマーとしてのキャリアが長い東氏。以前、TV番組でナッシュビルを訪問した東氏が、若き日にグランド・オール・オープリー(ライマン公会堂時代?)で「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」を歌い、ステージの袖で、何とその日が同じくオープリーデビューだったロレッタ・リンと励ましあったというエピソードを語っていたのを思い出す。この辺の話もあらためて聞いてみたいものです。

◆追記◆
♪ジョン・ヘンリー(2014/11/03)

2011年12月3日土曜日

《ボブ・ディランのルーツ・ミュージック》

鈴木カツ氏の著書『ボブ・ディランのルーツ・ミュージック』を読み始める。ある時期から、ディランはクリエイターというより研究家+伝道師の役回りが色濃いのではと思っていた。自伝やマーティン・スコセッシの「ボブ・ディラン ノー・ディレクション・ホーム」(2005)も、けっこう最近の渉歴だったこともあり、私にとってはタイムリーな内容で、ページごと「そうそう、むべなるかな」と読み進んでいる。ディランのデビュー時の担当プロデューサーはジョン・ハモンド、かつて、ビリー・ホリディも手がけている。自伝の記述でも意外性があったが、ディランがロバート・ジョンソンを知ったのは、ジョン・ハモンドから復刻盤のデモをもらったからだという。
この1~2年くらいの嗜好はカントリー・ミュージックの比重が高く、鈴木氏のその他著作にも随分とお世話になっている。水先案内、あるいは、音楽を咀嚼して消化するときの評価指標として。日本での「カントリー・ミュージック」に対する認識は残念ながら極マイナー、和文の情報も至極限定されている。氏の幅広い見識、業績に感謝である。

◆追記◆
♪マン・オブ・コンスタント・ソロウ(2013/07/25)
♪コカイン・ブルースって、、、(2013/08/02)
〈ブロークバック・マウンテン〉を聴いてみる(2013/10/06)
□ボブ・ディランのコンスタント・ソロウ(2014/02/28)
♪1913年の大虐殺(2014/01/17)
再び、♪北国の少女(2014/04/29)
ディランの♪フェアウェル(2014/06/01)
ディラン、ファースト・アルバムの元歌対比集(2014/06/08)
「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」(2014/06/19)
♪ジョン・ブラウン、って誰だ?(2014/06/27)
♪ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン(2014/07/23)
♪スペイン革のブーツ、ってバリアントも(2014/08/02)
『時代は変る』のだが、、、(2014/08/28)

2011年12月2日金曜日

意外な、♪フロスティ・ザ・スノーマン

もう1枚、カントリークリスマスのVA盤を拝聴。『Ultimate Christmas Country』のタイトルで2007年の発売だが、ブレンダ・リー(Brenda Lee)、パティ・ペイジ(Patti Page)、コニー・フランシス(Connie Francis)のコアとはいえないカントリー系を含め18曲。アーネスト・タブ(Ernest Tubb)の「ブルー・クリスマス」をはじめ古くは1940~1950年代の録音もあるが、明朗でポップなパフォーマンスに共通性があると思う。リー・アン・ウォーマック(Lee Ann Womack)の「ホワット・アー・ユー・ドーイング・ニュー・イヤーズ・イヴ」は、「歌い込む」感じに引きつけられリピートして聴いてしまう。これが最も新しく2002年の録音。ロレッタ・リン(Loretta Lynn)は1966年の「フロスティ・ザ・スノーマン」、意表をつかれた選曲で親しみがわく陽気さに悦に入るとともに、「ロレッタのクリスマスアルバム」を探してみたくなる。

2011年12月1日木曜日

カントリーのクリスマス

スタンダード好きで、クリスマスといえばナット・キング・コール(Nat King Cole)の「ザ・クリスマス・ソング」を筆頭としたジャズ系の録音を聴いていたが、2003年発売だったか、いわゆるVA盤の『A VERY SPECIAL ACOUSTIC CHRISTMAS』というCDを何気に店頭でみつけ、カントリー畑のクリスマス・ソングに魅せられてしまった。私の嗜好であるアコースティク基調ということに加え、トラッド、スタンダードとオリジナルがほどよいバランスで、ウィリー・ネルソン(Willie Nelson)、アラン・ジャクソン(Alan Jackson)、アリソン・クラウス(Alison Krauss)、アール・スクラッグス(Earl Scruggs)、ロンダ・ヴィンセント(Rhonda Vincent)、ノラ・ジョーンズ(Norah Jones)ら参加ミュージシャンが新旧にもかかわらず、アルバムコンセプトの一貫性が心地よい。
アリソンやロンダはオリジナル、パティ・ラブレス(Patty Loveless)の「オー・カム・オール・フェイスフル」、リッキー・スカッグス(Ricky Skaggs)の「アウェイ・イン・メインジャー」など讃美歌でも、調和と敬虔さを醸すアコースティク力を感じる。ダン・ティミンスキー(Dan Tyminski)は「フロスティ・ザ・スノーマン」、楽しさも両立している。