2013年3月28日木曜日

♪グランド・クーリー・ダム

ウディ・ガスリー(Woody Guthrie)続きで再認識、カーター・ファミリーを経由したバラッドには「グランド・クーリー・ダム」もあった。旋律は「ワバッシュ・キャノンボール」だな。ホーボー・ソングでホラ話の語り歌、ロイ・エイカフ(Roy Acuff)の十八番であり、カントリー・クラシック中のゴールド・スタンダードだと思う。ビル・ヘイリー(Bill Haley)の「ジュークボックス・キャノンボール」という派生バージョンも楽しくてとても好き。
ウディのこの楽曲は調べてみると、前記のアルバム『ダスト・ボウル・バラッズ』(1940)に続いて録音した楽曲で『The Columbia River Collection』(1941)に収載、フランクリン・ルーズベルト大統領時代のいわゆるニューディール政策で中西部のテネシー川などとともに大規模公共事業施策のターゲットとなった太平洋に注ぐ西部のコロンビア川が舞台の書下ろしバラッド集らしいが、この製作経緯にはまったく見識がなかった。これは課題。『The Columbia River Collection』はCDがあるようだが、邦盤はないみたい。

◆追記◆
その後、『The Columbia River Collection』(アルバムCDの発売は1987年ってことなのかな?)を入手。気分次第で流し聴きしている。「ロール・オン・コロンビア」、これもまた、レッドベリー(Leadbelly)の歌唱で知られ、フォーク・リバイバル醸成の象徴でもある楽曲「グットナイト・アイリーン」の旋律。エリック・クラプトンEric Clapton)が最新のアルバムで唄っているのを耳にし、思い起こしてしまった、、、(2013/05/01)。

2013年3月24日日曜日

♪トム・ジョード

友人遺品から、ジャック・エリオット(Jack Elliott)のアルバム『シングズ・ザ・ソンズス・オブ・ウディ・ガスリー』を聴いていて、「トム・ジョード」って、カーター・ファミリーのバラッド「ジョン・ハーディ・ワズ・ア・デスペレイト・リトル・マン」と旋律一緒じゃんと気づいた。
確か、「トム・ジョード」は放浪の徒であったウディ・ガスリー(Woody Guthrie)が、ジョン・フォード監督の「怒りの葡萄」(1940)を観ていたく共鳴、インスパイアされてつくり上げたアルバム『ダスト・ボウル・バラッズ』の1曲(たしか2バージョン収録)で、ヘンリー・フォンダが演じた主人公の名にちなんだ楽曲と記憶していた。「わが祖国」はカーター・ファミリーの「ホエン・ザ・ワールズ・オン・ファイア」に対応し、ゴスペル・ルーツ。今回はバラッドということで。旋律借用して新たな歌詞で歌う手法が多かったというウディ・ガスリー、本歌を意識してもう少しちゃんと聴いてみなくては。歌詞ともども。

2013年3月22日金曜日

ボ・ディドリー

ジョージ・ジョーンズ(George Jones)のあとは、やはり同じシリーズのコンピレーション4枚組みCDでボ・ディドリー(Bo Diddley)。1958年から1960年代半ばの録音で、6枚のクラシック・アルバムにシングルやセッション、ライブからの集成。色褪せのない素直によい音楽、よいノリ。
おそらく、ロックを中心としたポピュラー・ミュージックが好きな私たち日本人には、実像が最も遠かったオリジネイターかな?ビートルズ世代は容易に、チャック・ベリーやリトル・リチャード、カール・パーキンスにつながるように、ローリンズ・ストーンズのファンならボ・ディドリーに行き当たるが、その認知度とオリジナルへの遭遇機会に違いがあった気がする。ロックに関しては、走りだった1978年当時に出版されたディスク・ガイドをめくり返してみてもそう思う。
ストーンズのカバーなら、「アイム・ア・マン」、「クラッキン・アップ」、「モナ」など、彼の楽曲群とパフォーマンスは、どちらかというとブリテッシュ系に愛されている度合いが高いのかな。

2013年3月20日水曜日

「シュガーマン」

何気に思い立って「シュガーマン 奇跡に愛された男」(マリク・ベンジェルール監督)。アメイジング!!!1970年代の初頭、アルバムを1、2枚を録音した後、消息不明となっていた米国のシンガー・ソングライター。アパルトヘイトに抗する機運に合致したがゆえ南アフリカではアフリカーナら中心にその楽曲が絶大な支持を得るが、人物像はレジェンドに。この伝説を解き明かすドキュメンタリー映画なのだが、インパクトは期待以上であった。
ミシガン州デトロイトのロドリゲスというこのミュージシャン、生業は解体現場などの肉体労働。才能は最も詩作にこそ発揮され、名前が示すようラテン系の歌声とサングラスの風貌からは、ホセ・フェリシアーノを彷彿とさせる。およそ20数年の歳月を経て、埋もれた才能が発掘され、南アでの復活コンサートにかかる部分がドラマツルギーの肝であることに違いはないが、3人の娘を地元で育てていたロドリゲスの静謐な生き様にこそ、人の暮らしの手本を垣間見る思いがした。
デトロイトを舞台にしたワーキングクラス、プア・ホワイトの暮らしぶりを描いたローカル映画としては、カーティス・ハンソンの「8Mile」(2002)やクリント・イーストウッド 「グラン・トリノ」(2008)に比肩する秀作。

「シュガーマン 奇跡に愛された男」の評価メモ
【自己満足度】=★★★
【お勧め度】=★★★☆☆
シンガー・ソングライター、1960年代から70年代のフォーク・ロック音楽に反応する方には、プラス

2013年3月16日土曜日

「アルゴ」

アカデミー賞受賞記念の再映最終日に「アルゴ」(ベン・アフレック監督)。「ゼロ・ダーク・サーティ」(キャスリン・ビグロー監督)よりは、エンターテイメント仕様といえるが、必ずや米国史観といった非難はついて回るのだろうなとも思う。米国とその諜報機関による活動の成果を描いてる点で両映画は共通、抑制を意識しつつもヒロイズムの鼓舞と受け取れる印象が強いのは「アルゴ」の方。
とはいっても、ハリウッドの映画人を演じたジョン・グッドマンとアラン・アーキンの快演によって、ハリウッド内幕物?といった妙な雰囲気が漂う微妙なバランス感覚に面白みがあり、情報通信機器などメカニカルやファッションといった美術仕様をはじめ30数年前の時代復刻も醸す。主人公の諜報部員を孤独で静謐に演じたベンのパフォーマンスも、まずまず。
でも類推で思い出すのは「カプリコン・1」(ピーター・ハイアムズ監督、1977)かな。

「アルゴ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2013年3月13日水曜日

「ルビー・スパークス」

これもまた、ロードショー(って最近いわないか)終了間際に観た「ルビー・スパークス」(監督:ジョナサン・デイトン&ヴァレリー・ファリス)。ファンタジック・スタイルのラブコメということで、気分転換、暇つぶしに映画館に出かける分には、可もなく不可もなくの予想の範疇の出来栄えであった。落としどころは、あんまりスッキリしない後味かな。
而して、ラブコメの肝、ヒロインを演じたゾーイ・カザンは役中ファッションといい、よい感じで、当たり、救い、見どころといえる。サム・メンデス監督の「レボリューショナリー・ロード、燃え尽きるまで」(2008)なんかに出ていたらしいが、ほかの出演作品ではあんまし記憶に残っていなかったな。例によって、エンドロールを観終えたてのちに再確認、ゾーイ嬢、この映画で脚本を担当しているほか、製作にも噛んでいるという才気にも感心。うーむ、エリア・カザンの孫なの!?
どこを観るかだが、デビュー作でブレイクしたものの、なかなか2作目が創作できないという主役・青年作家のキャラクター設定も味わいがあったかな。

「ルビー・スパークス」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2013年3月4日月曜日

「ライフ・オブ・パイ」

封切り上映はそろそろ終了かというところで、「ライフ・オブ・パイ トラと漂流した227日」(アン・リー監督)。ほとんど予告編程度の予備知識にて鑑賞、予測を超えて相当度インパクトを感じた映画ではあった。この感度の強さは、モンスターやエイリアンといった想像や空想の産物ではない猛獣へのシンプルな恐れ慄き。意外と普段の映画には、こんな感じはなかなかないけど、「ロザリンとライオン」(ジャン=ジャック・ベネックス監督、1898)を思い出した次第。
ストーリーが面白い。旧仏領インドで動物園を開いた父、母と兄のもと、多感な宗教感覚を育んだ変わりものの少年、家族と動物たちを伴ってカナダへ移住の航路途中、海難にあった漂流生活の後半、「ミーアキャットで埋まる人喰い浮島」にたどり着いて、一転、ファンタジーに展じるのは、どうなんだろう。主調は、表題通りに「トラとの漂流」によって、自分の存在・運命に関する節理を得るに至った哲学的なアクション・アドベンチャー・ムービーに受け取れたが。
回想譚形式のシナリオ構造。映像による回顧が一通り終わり、海難事故処理のため訪ねてきた日本人保険調査員が信じてくれなかったとして、語ったというアナザー・ストーリーも意味深長。たぶん、原作小説はクリアーに面白いのでしょう。少なくとも、以上の示唆と余韻で思考を巡らし感慨に浸るのもよい。

「ライフ・オブ・パイ  トラと漂流した227日」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2013年3月2日土曜日

再び、♪スタンド・バイ・ミー

本日2日付の朝日新聞「うたの旅人」は、ベン・E・キング(Ben E. King)の「スタンド・バイ・ミー」だった。記事によると、ロブ・ライナー監督の同名映画(1986)の舞台となったオレゴン州ブラウンズビルにロケ地観光で訪れるのは圧倒的に日本人が多いのだそう。映画も好きだが、個人的にはアルバム『ロックン・ロール』(1975)収載のジョン・レノンのパフォーマンスが、ベンのオリジナルと甲乙つけがたく好きだ。
今回の記事では、この曲が一般の日本人にはあまり知られていないと思われるゴスペル・ルーツであることを指摘し、ベンへの取材からサム・クックが歌う「オー・ロード、スタンド・バイ・ミー」にインスパイアされた経緯を聞き出しているのが興味深かった。漠然と元祖本歌は、チャールズ・アルバート・ティンドレー(Charles Albert Tindley)作の「スタンド・バイ・ミー」ではないかと思い込んでいたが、果たしてこれらに連関はあるのか?サム・クック歌唱曲は、にわかに思い出せないものの、今後の探究の楽しみに。