2014年7月26日土曜日

「私の男」

海外映画祭で受賞したからという話題性はあったものの、道内ロケーションを肝として熊切和嘉監督であるという動機で観てみた「私の男」。正直、文字の方が分かりやすいのだろうとの感想。おそらく、プロットは映画仕様に再構成されているのだう。画像・映像的に不満はないが、描こうとしたドラマと情念に共鳴するところがなかったのが分からなさの原因。映画話法には敢えて不足気味に語ることでの心象効果という手法があるが、多分に不足し過ぎではとも。
背中に引っ掻き傷?あったよね。
ドラマツルギーの成否の一方で、モチーフ旋律のドボルザーク引用は通俗すぎると受け取ったし。

「私の男」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★☆☆☆

2014年7月23日水曜日

♪ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン

いまさらながら、これほどにはと、ボブ・ディラン(Bob Dylan)にのめり込んでしまい、ブートレッグ・シリーズの一部へと食指を伸ばしてしまい聴き始めるはめに。CD3枚組みの1枚め第1集(1991年)は、初期のアルバム・アウトテイクや出版登録用のデモが主で、ピアノ弾き語りがあったりのシンプルなサウンドと楽曲群は今現在の私の嗜好にフィットするもので大満足。「ブロークバック・マウンテン」(アン・リー監督、2005)で書き留めた「ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン」のディラン・バージョンを通して聴けたわけだし(〈ブロークバック・マウンテン〉を聴いてみる、2013/10/06)。ディラン自身はこの曲の元歌はブラインド・アーベラ・グレイ(Blind Arvrella Gray)というシカゴのストリート・ミュージシャンに教わったと言ってるそうだが。確かに、レッドベリー(Leadbelly)の「ショーティ・ジョージ」からは飛躍がある意義深きバージョン、パフォーマンスだと思う。
由緒ある、これぞトラッド「ハウス・カーペンター」があり、メロディ・ラインが「風に吹かれて」に援用された、オデッタ(Odetta)のスピリチュアル歌唱にならったであろう、「ノー・モア・オークション・ブロック」もしみじみ聴けた。ピアノ+ハーモニカを自ら奏でる「パス・オブ・ヴィクトリー」は、どこかハンク・ウィリアムス(Hank Williams)の「アイ・ソー・ザ・ライト」を思い起こさせる印象が強い。さて、ルーツ?は、、、
と、、、「パス・オブ・ヴィクトリー」、このタイトルに限ってはCD付帯のブックレットには示唆が乏しく、しばし思い出して、DVD「ダウン・ザ・トラックス:ザ・ミュージック・ザット・インフルエンスド・ボブ・ディラン」(スティーヴ・ガモンド監督、2008・英)によると、元歌はカーター・ファミリー「ウェイウォーン・トラベラー」だと指摘、さらなる発展形が「時代は変る」だとの説にも言及していた。

◆追記◆
ブートレッグ・シリーズ第9集は『ザ・ウィットマーク・デモ』(2010年)という、デモ・パフォーマンスの集成でCD2枚セット。かなりの楽曲が第1集と共通していて聴き比べるのが楽しい。「パス・オブ・ヴィクトリー」、こちらはギター&ハーモニカ伴奏だぞ。押し並べて音質がこもっているのが惜しいかな。
第9集のブックレットは音楽著作権ビジネスの実際、例示として幾ばくかの疑問には答えてくれた。惜しむらくは、私の関心度合いの高い楽曲の発生とバージョンの妙へのフォーカスが不足であったこと。(2014/07/27)

◆参考◆
たまたまの配信にあり、「ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン」、YouTubeからデイヴ・ヴァン・ロンク(Dave Van Ronk)歌唱の引用、紹介です。

2014年7月8日火曜日

T=ボーン・バーネットつながり

ボブ・ディラン(Bob Dylan)のルーツ・ミュージックと初期の楽曲パフォーマンスに思いのほか、のめり込んでしまい、、、渉猟しているうちに、1970年代半ばの特異なツアー「ローリング・サンダー・レヴュー」への随行はT=ボーン・バーネット(T-Bone Burnett)の初期のキャリアになっていることに気づく。なるほど、なるほど。残念なことに「ローリング・サンダー・レヴュー」のライブ音盤化は手元にストックしていなかった。
あと、このツアーは言われるように1975年が米国の建国200年である節目に際して、ミンストレル風の興業っていうモチーフがディランにはあったんだろうな。ここは日本人感覚では及びづらいところ。ディランはミンストレルをどうとらえていたかとか、なかなか興味は尽きない。
T=ボーン・バーネットの映画音楽での仕事、「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」(2014/06/19)〈コールド・マウンテン〉も聴いてみる(2013/10/25)「オー・ブラザー!」を聴き直す(2013/05/10)〈クレイジー・ハート〉(2012/06/10)――で言及していた。
そのほかでも、「アメリカ、家族のいる風景」(ヴィム・ヴェンダース監督、2005)、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 」(ジェームズ・マンゴールド監督、2005)の音楽プロデュースと作曲で、とてもよい仕事をしている。調べてみると、「ハンガー・ゲーム」 (ゲイリー・ロス監督、2012) ではエグゼクティブ音楽プロデューサーであった。こっちも観ているけど音楽の印象が思い出せない。ちなみに、「コールドマウンテン」(アンソニー・ミンゲラ監督、2004)ではサウンドトラックのプロデューサー?だったか。映画音楽の作者が別のクレジットでもサントラ系、エグゼクティブ音楽プロデューサーでの業績はまだまだありそう。この辺りの再リサーチしてみるか。

◆追記◆
T=ボーン・バーネットは、マーティン・スコセッシ総指揮によるブルース・プロジェクトの連作映画の一つ「ソウル・オブ・マン」(ヴィム・ヴェンダース監督、2003)ではミュージシャンとして出演し、J・B・ルノアー(J. B. Lenoir)の「ドント・ドッグ・ユア・ウーマン」を演奏していた。それにしてもアルバム、音盤のプロデューサーとしてのキャリアは傑出しているなぁ。ギリアン・ウェルチ(Gillian Welch)からエルヴィス・コステロ(Elvis Costello)、カントリー、ブルーグラスやブルース界の御大たち等々と、確かに嗜好がフィットする。
リサーチして分かったのでは、矢野顕子やディランの子息も手がけていたとは。
さらに、
「貧者ラザロ」で、たどってみる(2014/11/26)