2014年3月30日日曜日

「バックコーラスの歌姫たち」

しばらく、スクリーン通いが薄くなっていたけど、やっとメモっておきたい作品に遭遇できたのが「バックコーラスの歌姫たち」(モーガン・ネヴィル監督、2013)。その名前がクレジットされることは稀だけど、彼女たちのパフォーマンスがなかったらポピュラー・ミュージックは何と味気ないものになっていたことだろうか。黒人系の牧師の娘が多いという個人史の音楽ルーツと、ロックを中心としたポピュラー・ミュージックの隆盛にはR&Bおよびゴスペルが培った音楽的背景があるアメリカン・ルーツ・ミュージックの成り立ちが重なりよく分かる。
アルバム『レット・イット・ブリード』(1969年)収載され、ツイン・ボーカルで傑出さに磨きがかかるローリング・ストーンズの「ギミー・シュエルター」、確かにメリー・クレイトンがクールだ。ドキュメンター映画の「ギミー・シェルター」(1970)も見直してみたくなった。そういえば、最近観たTV放映版「ボブ・ディランの30周年記念コンサート」(1992年)のハナで、ジョン・クーガー・メレンキャンプの「ライク・ア・ローリング・ストーン」は、似たようなボーカル編成だけど、女性シンガーのクレジットなかったよね?
「バックコーラスの歌姫たち」、米国ドキュメンターのつくりでありがちな、登場人物(発言者)と情報量が多くて受け止め方に惑う構成になっているだけに、もう何度か観て読解を進めたいというのが現在の感想である。

「バックコーラスの歌姫たち」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2014年3月26日水曜日

♪ジェシー・ジェームズ

録画ストックから、ウォルター・ヒル監督の「ロング・ライダーズ」(1980)を観る。音楽はライ・クーダーでシブくてよい感じ。何とタイミングよく、というべきか、ピート・シーガーもよく歌っていたバラッドの「ジェシー・ジェームズ」ストーリーだった。西部劇によく出てくるビリー・ザ・キッドとかワイアット・アープ、ドク・ホリディと同様にジェシー・ジェームズは、一般の日本人とって、映画の中の(悪漢)ヒーロー・キャラクターとしては知っているものの、実在の人物像や史実に関する認識は薄くって、宮本武蔵とか清水次郎長みたいな位置にある。最近の映画で「ジェシー・ジェームズの暗殺」(アンドリュー・ドミニク監督、2007)もあったけど、こちらは出来栄えもあってか、バラッドとの関係その他、心に響いて残るものはなかったな。
「ロング・ ライダーズ」ではウォルター・ヒルらしさがにじむ映像と演出に満足。強盗団の構成に史実をなぞって、キーチ、キャロダイン、クエイドの3組の兄弟による8人を充てたキャスティングもフィットしていて面白かった。
エンディング、ブロードサイド・バラッドでありマーダー・バラッドの範疇ともいえるこのバラッドが流れるが、歌っているのはライ・クーダー?、ロールに表示はなかったなぁ。楽曲のバージョンはピート・シーガーなんかが歌っている系統だと思うけど、そういえば、ウディ・ガスリーのって、別な楽曲に聞こえるけど、どうなんだろう、、、いくつか探ってみて、レッドベリーが歌っているのはタイトルが違っているね。「ホエン・ザ・ボーイズ・ワー・アウト・ザ・ウエスタン・プレーンズ」
バージョンの吟味と、ジェシー・ジェームズものの映画の視聴歴も見直してみなければと、たくさん課題ができてしまった。

2014年3月20日木曜日

ボブ・ディランの30周年記念コンサート、を拝見

1992年にニューヨークのマディソン・スクエア・ガーデンで行われたボブ・ディラン(Bob Dylan)の30周年記念コンサートがNHK‐BSで放映され、まず、パート1を拝見。アルバムもビデオも持っていなかっただけにに嬉しい限り。やっぱり、だれがどの曲をどんな風に歌っているのかというのが、トリビュートものの楽しみかな。ん、しかし、もう20年以上も前の出来事だったんだ。ニール・ヤング(Neil Young)がすっきり若く見える。音だけでなく動き付きで観るならニール・ヤングのパフォーマンスが好き。ジューン・カーター・キャッシュ(June Carter Cash)とジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)の「悲しきベイブ」は画的に貴重にも思えたり、クリス・クリストファーソン(Kris Kristofferson)のMCは意外でもあり、ディランとジョニー・キャッシュの出会いは1964年って言った?、、、印象的なパフォーマンスとしてはこの前半までではジョニー・ウィンター(Johnny Winter)の「追憶のハイウェイ61」かな。まもなくのパート2が楽しみ。

◆追記◆
パート2はというと、ロザンヌ・キャッシュ(Rosanne Cash)、メアリー・チェイピン・カーペンター(Mary Chapin Carpenter)、ショーン・コルヴィン(Shawn Colvin)の当時若手の面々による「ユー・エイント・ゴーイング・ノーホエア(どこにも行けない)」はカントリー・テイストが活きていた。終盤、コアな面子のジョイントによる「マイ・バック・ページズ」が、このコンサートの象徴かな。結構はまりそう。たぶん、初めて聴いたのは十代のころで『グレーテスト・ヒット第2集』(1971年)、初出は4枚目のアルバム『アナザー・サイド・オブ・ボブ・ディラン』(1964年)であったか。30年を経て、このコンサートのためにつくられたかのような含蓄に引き付けられる。一方でディランのソロ・パフォーマンスは素直に初視聴ではフィットしないと思いつつ、どう受け止めてよいのかと。
みうらじゅん氏が、エンディングでのディランとニール・ヤングの握手の意味に着目していたが、トム・ペティ(Tom Petty)も「雨の日の女」の歌詞にニール・ヤングを歌い込んでいたな。これはディランのオリジナルか?

2014年3月8日土曜日

この春はローズ・マドックスで、

廉価盤のCD4枚組シリーズでマドックス・ブラザース・アンド・ローズ(Maddox Brothers & Rose)を見つけてしまう。これはおお買い得だね。後半の2枚はローズ・マドックスのソロ・クレジット4枚を収載、これまで入手できていなかった『シングズ・ブルーグラス』(1962年)も入っていて嬉しい限り。「コットン・フィールズ」も歌っていたんだね。レッドベリー(Leadbelly)に近いサウンド解釈かな。
このファミリー・バンド、ヒルビリーからカントリー・ミュージックの王道を体現した明朗な大衆音楽なんだけど、ローズのボーカルには妙に引かれる。ガール・ネクスト・ドア的な親しみやすさと明るさに、ちょっと縮れた感じの声質あるいは生活の柄からにじむものなのか、心に響く(日本人が好きそうな)哀愁が潜んでいる。私にとっては元気が出る歌声。
一気に4枚聴いてしまう。3枚目にはローズ『グローリー・バウンド・トレイン』(1960年)ってアルバムもあるしゴスペル多いね。「グレート・スペックルド・バード(大きなまだらの鳥)」は初めて聴いた収穫、もちろん、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」も。朗々と歌詞を歌うのが味わいかな。

2014年3月2日日曜日

♪ジョニーは戦場に行った、なの?

ウィーバーズ(The Weavers)のCD4枚組廉価盤は、4枚目の『アット・カーネギー・ホール第2集』(1960年)までたどり着いて、第6トラックの「バターミルク・ヒル」に聴き当たる。ロニー・ギルバート(Ronnie Gilbert)がリード、しっくりと「ジョニー・ハズ・ゴーン・フォー・ア・ソルジャー」と歌っている。
この「バターミルク・ヒル(ジョニー・ハズ・ゴーン・フォー・ア・ソルジャー)ピーター、ポール&マリー(Peter Paul & Mary)の「虹と共に消えた恋(ゴーン・ザ・レインボー)」に直結するバージョンだねぇと考えつつ、ここで前に、ミルト・オークン(Milt Okun)とPPMのモダン・フォーク化の功績として、アイリッシュ系フォークが元歌の「悲惨な戦争(クーエル・ウォー)をメモしたことも思い出す。同一ルーツ?、たぶん、「バターミルク・ヒル」をベースにオークンPPMチームはこの2つモダン・アレンジ、姉妹曲を創作したという理解でよいのだろう。
アイルランドのルーツ・ソングとしては、コーラスに残っている「シューラルー」というタイトルで呼ばれることが多いよう。英語なら「スロリー・ラン」かな??英語歌唱でない、よりオリジナルに近いものの聴いてみたくなる。ところで、バターミルク・ヒルって何?、どこ?、イメージわかなかった。
あと、何故に戦場に行くのはジョニーなのか?という課題も。ドルトン・トランボ監督の映画「ジョニーは戦場に行った」(1971年)の原題は「ジョニー・ゲット・ヒズ・ガン」で、オリジナルは自身が1939年に発表した同タイトルの小説という。そして、このタイトルの文言は第一次大戦中によく歌われた米国製軍歌に由来しているととも。さらに、アイルランド・ルーツの「ジョニー、アイ・ハードリー・ニュー・イェー」から南北戦争時代の帰還兵凱旋マーチにアレンジされたホエン・ジョニー・カムズ・マーチング・ホーム(ジョニーが凱旋するとき)っていうのもあるし。「バターミルク・ヒル」と「シューラルー」、「ジョニー、アイ・ハードリー・ニュー・イェー」、そして映画の「ジョニー・ゲット・ヒズ・ガン」の三つの系譜、直接的な関連はこそは今のところ見えてこないが底流にある厭戦・反戦のモチーフは受け止められる。

◆過去のメモ◆
アニタ・カーターとドクター・ストレンジラブ(2012/09/28)