2012年5月31日木曜日

「ミッドナイト・イン・パリ」

アキ・カリウスマキケン・ローチウディ・アレンと、劇場公開で9割方観てきた、お気に入り監督連の新作を続けて鑑賞。はずれはなし。米国音楽とパリというと、「ラウンド・ミッドナイト」(ベルトラン・タヴェルニエ監督、1986)を思い出すが、アレンの「ミッドナイト・イン・パリ」(2011)は、自身のフェイヴァリット、コール・ポーターを据えて(出演させて)対照的な夜の世界を創造、米国知識人が抱く力みのないフランス文化リスペクトであった。
ニューヨーカーのアレン、イギリス、スペインと国(東海岸)外ロケ作品が続いているが、パラノイア気質と自虐ネタベースの語り口は健在。20世紀的な教養主義はネット時代へのアンチテーゼという訳ではなく、嫌味に感じず、文豪や画家ら文化人に遭遇するエピソードの描出は、シネマオマージュとの観方も可能だ。心地よい軽さにまとまっているのは、老境にかかってきたからこそか?
キャスティングも見もの。いつの間にか、アレン映画には俳優たちが集まるようになってしまった。セーヌ河岸で思い出したのは、アレン旧作の「世界中がアイ・ラヴ・ユー」(1996)。この作品のキャストもすごかったけど、河岸でのダンスシーンはアレン本人とゴールディ・ホーンだったか。
音楽担当はステファン・レンベル、音楽監督ではなく?そう、コール・ポーター自身の演奏音盤は手元になかった。これも探して、流してみたくなる。

「ミッドナイト・イン・パリ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年5月24日木曜日

「ファミリー・ツリー」

「ファミリー・ツリー」「サイドウェイ」(2004)のアレクサンダー・ペイン監督ということで食指が動く。エキセントリックな人物描出に特徴。ジョージ・クルーニーの娘の姉妹役など、あまり心地よいキャラクターと受け取れないが、物語が進んでいくにつれて、ほどほどに落ち着いていくのが脚本・脚色の手腕と納得できる。
「わが母の記」に次いで家族劇、原題は「THE DESCENDANTS」だそうで、ハワイを舞台とする一族劇でもある。尊厳死や妻の不倫の発覚といった、シビアなプロットが柱となっているものの、この土地の風土と音楽によって醸されるトーンで、ほどよいコメディに仕上げている。
コンテンポラリーのハワイアン・ミュージックも満載。確かに、劇中のヨーデル歌唱が入ったライブは「イカしていた」。ハワイ州も、もちんUSA。伝統音楽と本土・大陸音楽の出会いによるハワイアン成立のルーツついて、あらためて興味を抱く。キーパーソンであるスラック・キー・ギターのギャビー・パヒヌイ(Gabby Pahinui)の演奏も使われているみたい。学習のため、サントラ盤も欲しくなった。
スティール・ギターもハワイアン発だった?カントリー(ヒルビリー)ミュージックとも関係が深い。そう、「何でヨーデルなの」ってこともありますし。

「ファミリー・ツリー」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年5月22日火曜日

「わが母の記」

当面、暇になったからか、モチベーションの移ろいか、やっと最近、劇場スクリーンで映画を観る機会を増やせるようになった。先日は「わが母の記」。冒頭から矢継ぎばやの家族会話、原田眞人監督の演出が冴えている。描かれている昭和の暮らし、森田芳光監督の「阿修羅のごとく」(2003)を彷彿させ、落ち着いてしまう。VFXは用いているのだろうが、「ALWAYS 三丁目の夕日」(2005)ほどではない。サイエンス・フィクション、アクション、ファンタジーやホラー系等々の濃厚な映画が隆盛かつ嗜好される現代にあって、この昭和の暮らしものの映像描出にこそ、映画的な興奮を覚えてしまう。
「東京物語」(小津安二郎監督、1953)へのオマージュ表現は、原田監督の志の表明か。「クライマーズ・ハイ」(2008)以来の好調を堅持、森田監督亡き後、昭和も徐々に薄れて行く中、「日本映画」の継続と展開で大いなる活躍が期待される人材である。

「わが母の記」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
【お勧め度】=★★★★☆

2012年5月21日月曜日

「カルテット」ではディキシー・ハミングバーズ

CD4枚組のゴスペル・コンピレーションアルバム『GOOD NEWS』の2枚目は、ゴールデン・ゲート・ジュビリー・カルテット(Golden Gate Jubilee Quartet)、ディキシー・ハミングバーズ(The Dixie Hummingbirds)ら、カルテットものを中心に構成。そう、現代日本では「ア・カペラ」と呼ばれることが多い、主に無伴奏の合唱演奏スタイル「カルテット」は、ゴスペル・ミュージックの発展期に確立したという。日本でカルテットというと、クラッシックの四重奏(唱)を思い浮かべ、まして、ア・カペラでは宗教感覚が払拭されポップな印象すらある。しかしながら、ア・カペラの原義は宗教(キリスト教)音楽の範疇なのだろう。カルテット、ア・カペラともにイタリア語が原語。さかのぼったところで宗教性で交錯に、また気づく。
録音をみると1930~1940年代。この辺りの奥行き、カントリー・ミュージック以上に、本邦では希薄だったのではと、よぎりつつ、まさに、その後の、ソウル、R&Bといったポピュラー音楽への影響を一考してしまう。
ゴスペルへの旅で、多彩なミュージシャンの録音で聞いてきた「ジャスト・ア・クローサー・ウォーク・ウィズ・ゼィー」、ここにきて、ディキシー・ハミングバーズのバージョンに味わいを見い出せたのが収穫。

2012年5月17日木曜日

1975年の〈ナッシュビル〉

ロバート・アルトマン監督の「ナッシュビル」(1975)、昨年のリバイバル上映には行けなかったものの、今年2月発売のDVDを入手、先日の「カントリー・ストロング」(2010)に続いてDVD鑑賞。20数年ぶりに観た感想は、あせない衝撃力とロケ撮影によるフィルムの質感。約2時間40分、主だっては24人という群像劇で、まず、初見時の人物像記憶はかすれていたこともあって、引き込まれるように観た。記憶との相違は思っていたより歌唱・演奏シーンが多くて長く、いわゆるカントリー調ミュージック以外に、讃美歌・ゴスペルのシーンも、よく出てきたこと。
一般には「米国の縮図」みたいな映画評が多いように思うが、私は「カントリー・ストロング」に前後して観たので、「ナッシュビル人はどう見てるの?」と考えてしまった。
そこで、DVD。普段はほとんど利用しない特典機能から、「監督の音声解説(字幕)」をオンにして再視聴。地元(出来合い)のカントリー・ミュージックを映画で使わなかったから公開時は不評だが、現在は人気がある、などのコメントで、疑問の一部を監督自身に解説していただいた。便利な世の中、繰り返し見る時間があればですね。繰り返し見るに足る映画ではあります。
それで、そうでした。描かれているライブ・パフォーマンスの楽曲のほとんどは、ヘンリー・ギブソン、カンレン・ブラックらミュージシャン役で登場している俳優自身による作品。音楽監督のリチャード・バスキンによるアレンジは、あるというのだが。これも今回の認知、収穫。

2012年5月16日水曜日

「カントリー・ストロング」

「カントリー・ストロング」(シャナ・フェステ監督)、2010年製作、グウィネス・パルトロウ主演、架空(?)のカントリー・ミュージック女王物語なのだが、本邦では劇場未公開。店頭で目にとまったサウンドトラックCDは、ためらいなく購入し、しばしの後、日本版DVDも発売され手元に置いたものの、諸般の事情からやっと視聴できた。
想像していたような、コンテンポラリー・カントリーの世界が描かれていたというのが率直な感想。ティム・マッグロウ、レイトン・ミースターの若手男女の役どころも含めて、ソフィストケイテッドとは対極の人物像の描出で、安易な二分法には固執しないが、ニューヨーカーとはいわないまでも米国の都会人は、この映画をどう見るのだろうか(そもそも、見ないのか)、興味が沸いてくる。
ちょっとベタっとしているが、もちろん私は嫌いではない。
サントラ盤にはサラ・エヴァンス(Sara Evans)、リー・アン・ワーマック(Lee Ann Womack)、フェイス・ヒル(Faith Hill)ら、物語の主役に匹敵する実力者の録音が収載、映画には登場していないと思ったのであるが、ちょっと注意散漫だったか。次回は心して観ましょう。
製作の一人がトビー・マクガイアとなっているのも、気になるところ。

「カントリー・ストロング」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

2012年5月15日火曜日

『グッド・ニューズ』

『GOOD NEWS』というタイトルの4枚組CD、ゴスペル100曲集に食指が動いてしまう。何故かレジで半額と、お値段も私にとって相当の福音。4枚目は、ソウル・スタラーズ(The Soul Stirrers)、ピリグリム・トラベラーズ(The Pilgrim Travelers)、ファイブ・ブラインド・オーイズ・オブ・アラバマ(The Five Blind Boys of Alabama)、ファイブ・ブラインド・ボーイズ・オブ・ミシシッピ(The Five Blind Boys of Mississippi)ら、カルテットもので構成。ソウル・スタラーズはサム・クック(Sam Cooke)が在籍していた?この輸入盤、シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)の4枚組と同様、PROPERブランドで、ブックレットのライナーが充実しているのもお買い得。サム・クックの録音か、英語力アップも念頭に、じっくり読んでみなくては。
天候、上向きかと思ったら、雨模様に。桜も八重に移行かな。

2012年5月8日火曜日

♪スタンド・バイ・ミーのルーツ?

私の住む街もやっとこさ桜の季節に。
「スタンド・バイ・ミー」、世代的にはスティーブン・キング原作、ロブ・ライナーの1986年監督作品で印象づけられたが、元来、ベン・E・キング(Ben E. King)のオリジナルはR&Bクラシックとして好みのパフォーマンスであった。もちろん、ジョン・レノン(John Lennon)のアルバム『ロックン・ロール』収載バージョンも大のお気に入り。そして、なんとなく、そんな気もしていたけど、この間の学習でこの楽曲もゴスペルが下敷きになっているのではと思い当たり、シスター・ロゼッタ・サープ(Sister Rosetta Tharpe)のCDの同タイトル曲パフォーマンスで再認識できた。
もっとも、ゴスペルでは「ダーリン、ダーリン」という唄い回しがあるわけでなく、そばにいてほしいのは、もちろんジーザス。歌詞の本歌取り、大衆消費社会・ミュージックシーンでの創作手法として聖から俗へという体裁、認識薄かったけど結構埋もれているんだろうなと心に止めておく。

◆追記◆
再び、♪スタンド・バイ・ミー(2013/03/02)

2012年5月3日木曜日

♪スイング・ロウ、スイート・チャリオット

札幌は昨日、桜が開花したそう。連休後半は好天が期待できずかな。5月もスピリチュアルで。「スイング・ロウ、スート・チャリオット」、われわれ邦人にも最も知られた黒人霊歌の一つ。私もよく知っているつもりでいて、旧約聖書の世界から引かれた歌詞は、これまであまり気にかけたことがなかった。チャリオット、単に「馬車」とする訳出が多いものの、「戦車」としている例が散見される。戦闘用の2輪馬車だそうで、「ベン・ハー」に出てくる形状を思い浮かべてしまうのも常であった。
最近やっとこさ、ユダヤの民の試練を奴隷の境遇に重ね合わた隠喩の味わいに目覚め、また、これも白人によって演奏されることが多いことを再認識した。何故に白人が黒人霊歌をという素朴な疑問から手持ちのCDのライナー・ノーツを読んでいると、新たな謎に遭遇。この楽曲、ワリス・ウィリス(Wallace Willis)という作者がいるのだそう。さて、この人物とは?本日までのところ、よく分からなかった。