2013年1月19日土曜日

《昭和演劇大全集》を読む

『昭和演劇大全集』(2012・12)を読み通してしまって、ひとしきりの満足。2007年4月から2年ほど、NHK‐BSによる同名の舞台放映番組の案内人、渡辺保高泉淳子の両氏による対談採録・編集本である。概ね、高泉氏が聞き手役として、放映する演劇の解題とその歴史背景に関する渡辺氏の発言、問答が毎回30分程度収録されていた。その対談が妙に面白くて、当初は観たい演目だけチェックしていたが、結局はほとんどを録画して視聴することに。
映画に軸足がある人間の私は、都会文化?身体性とライブ感の優位?など、演劇人とその文化には妙なコンプレックスを感じていただけに、史的視座から演劇を学ぶ機会を与えてくれた示唆に富む対談、よい番組であったと思う。
あらためて、個人的な面白さの度合いは、ほぼ同世代で地方出身者いった高泉氏との共通基盤が多いことによる共鳴によるもの。東宝で演劇製作を仕事にしていたキャリアにもまして、古典劇・現代劇、双方に関する知見が厚く、批評眼と批評言質が確かな渡辺氏の率直な言葉によってまた増幅された。演劇には、まだまだ評論が成り立っているんだとも思ったりも。本当は、渡辺氏の『明治演劇史』が刊行されたと知り、書店でみつけて合わせて購入、昭和を先に読んでしまった次第。
あと、舞台上演やTV中継の映像化・保存という技術革新過程での経緯。そう、TV放送開始しばらくは確かに劇場中継が多かったような記憶がかすかにあるな。録画テープが比較的安価にな1980年前後までは、せっかくの放映は行われていても安定して保存を残すことができなかったなんて、、、今は昔、隔世の感、、、、。惜しいに尽きる。一方で、NHKも2011年度の放送波・番組再編で、舞台・芝居物が著しく減少しているのも残念。

『昭和演劇大全集』の評価メモ
【自己満足度】=★★★★★
※対談を読んで、また、舞台を観たいという気にもなるが、さて、録画ストックはすべてビデオテープ。デジタル化、ディスクに慣れた現在は、ちよっとセッテイングなど腰が重いが、、、。
【お勧め度】=★★★★☆
※昭和の映画をある程度好んで観ている方には、お勧め。戯曲や原作文学の同根、舞台の映画化など共通演目はもちろん、映画でも活躍した多くの役者の出自とバックボーンが見えてきますし。


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