2013年1月28日月曜日

《明治演劇史》も読む

『明治演劇史』(著者・渡辺保氏、2012・11)も朝日新聞の書評掲載直前に読了(日経はしばらくく前に載っていた)。この書が史論として成り立つのは、著者がエピローグで提示しているように、①急激な近代化②強く推し進められた天皇制③三度にわたる戦争の体験―の3の視座をもって明治の演劇が説かれる姿勢が貫かれていることによる。3つの視座はそれぞれ、政治史のテーマであること、演劇芸能とその関わりが明朗に描写されていることに、あらためて目を開かせられる。
歌舞伎の九代目・市川団十郎、人形浄瑠璃の摂津大掾、あるいは、新演劇の川上音二郎といったキーパーソンへのフォーカス、あるいは新しい演劇の胎動や「能楽」誕生の描写も興味深く読めた。「壮士芝居」程度の認識だった川上音二郎の人物像と生き様に接近できたのは、今回が初めてだったかも。あたりまえのことだが、この時代、動画・記録映像は残されていなく、劇評をはじめとした文字アーカーブと写真、著者の観劇キャリアを基に史論が組まれている。メディア機能に大きな役割を果たした演劇、このあと、映画が隆盛する時代に突入する時代についても、演劇・映画史論を聴きたいとも思った。

『明治演劇史』の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★☆☆

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