2013年1月9日水曜日

《ミシシッピ・ブルース・トレイル》

新年、カントリー・ブルース志向を意識してすぐ、書店店頭で『ミシシッピ・ブルース・トレイル ブルース街道を巡る旅』(著者・桑田英彦氏、2012・09)に遭遇してしまう。これは啓示と、購入して途中まで読んでいた洋書を横に置いて流し読みを始める。ミシシッピゆかりのブルースマンにまつわるマーカー(記念碑)設置を担う現地の財団による文化プロジェクトの名称が「ミシシッピ・ブルース・トレイル」なのだそう。このマーカーをたどった文字通りの音楽の旅本で、写真がふんだんのビジョアルが楽しく、やはり、土地に暮らす人となりまでがインスパイアされるイメージに触れてこそ、その音楽に関する理解も深まると納得する。
音楽雑誌の編集者・ライターとしてキャリア豊富な桑田氏の知見には興味をそそられる部分が多い。ロバート・ジョンソン(Robert Johnson)の、悪魔と取り引きでギターの技術を得たといういわゆる「クロスロード伝説」とその場所、そして彼の「三つの墓」など然りである。ミシシッピ州のデルタ地方が中心であるがもちろん、隣接するメンフィス、ニューオーリンズ、あるいはブルースマンにとどまらず、ボ・ディドリー、アイク・ターナー、エルヴィス・プレスリー、サム・クックといったゆかりの面々も言及され、あらためて、大都会ではないこの土地に由来する音楽の豊かさに驚くばかりだ。実際にはなかなか出かけられないだけに、ひたれる紙上旅。インターネット優位なITの浸透に伴う出版苦境にあって、この書籍の体裁には、まだ魅力を感じた。

『ミシシッピ・ブルース・トレイル ブルース街道を巡る旅』の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
※広域地図とマッピングの掲載、写真説明の情報量を多くして欲しかったとの希望はあり
【お勧め度】=★★★★☆
※コアなブルースマニアではないアメリカ音楽やロックの愛好家の関心とリンクするとも思うが、一般の邦人ブルースファンはどう感じるか、興味のあるところ。

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