2012年7月5日木曜日

♪マザーレス・チルドレン

カーター・ファミリー(The Carter Family)の「マザーレス・チルドレン」は、「ウィル・ザ・サークル・ビー・アンブロークン」などと同様、ニグロ・スピリチュアルからゴスペルへの脚色と昇華を歩んだ楽曲だった。ライナーノーツなどの解説によると、.A..P.カーターは黒人労働者が歌った「マザーレス・チャイルド・シーズ・ア・ハード・タイム」に着想を得ているという。この曲は、ブラインド・ウィリー・ジョンソ(Blind Willie Johnson)がマザーズチルドレンハブ・ア・ハード・タイム」として録音している。
ブラインド・ウィリーのこの楽曲についても、『黒人霊歌は生きている―歌詞で読むアメリカ』(2008年)で、たウェルズ恵子氏の考察がある。ご指摘の通り元歌は、スピリチュアルの「サムタイム・アイ・フィール・ライク・ア・マザーレス・チャイルド(時には母のない子のように)」。「マザーレス・チャイルド」という言葉の含蓄に注目したカーター・ファミリーの翻案バージョンのほか、ジョージ・ガーシュインGeorge Gershwin)がフォーク・オペラ「ポギーとベス」にフューチャーし、スタンダード・ソングの定番となった「サマータイム」はスピリチュアルの旋律にインスパイアされていることが知られる。あるいは、ウェルズ氏も言及したように本邦では寺山修司の作詞があり、つながりが見えてきた分、その時代と心性を読むことに興味をそそられる。
「マザーレス・チルドレン」、近年の録音ではロザンヌ・キャッシュ(Rosanne Cash)の歌唱が気に入っている。

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