2012年7月26日木曜日

ゴスペルの迷路

『魂のうた ゴスペル 信仰と歌に生きた人々』(1997年、原題:GOSPEL LEGENDS)という邦訳本を読んでいるところ。著者はチェット・ヘイガン氏。対比して今さらながら、本邦では、出版物をはじめとしたゴスペル関係言説が、黒人に軸足を置いたものであることに疑念を抱く。米国人の研究においても、白人のそれを「コンテンポラリー・クリスチャン・ミュージック」とするなど、コンセプト整理と分類に諸説があるようだが。
この1年くらいは、そこそこ、ゴスペル・ミュージックにアプローチしてきたつもりで、、前掲書では若干の回答を提示してくれるが、繰り返して、当初抱いていたいくつかの課題にもどり、考え込むことになる。①個別のゴスペル楽曲の起源、あるいは、歴史的成り立ち②黒人、白人が歌うゴスペル楽曲の相違と交歓③ゴスペルの世俗昇華―などの課題である。
キリスト教に根差した歌の範疇には聖歌、讃(賛)美歌、祝歌、霊歌などのコンセプトがあり、それらと重なる部分を持ちつつ、20世紀に「ゴスペル」が成立、辞書的には、(教会に立脚するのではなく)民俗的な宗教歌とする意味を有するというが。
一般のポピュラー・ミュージック同様、楽譜集の出版、ラジオやレコードなどマスメディアによる流通システムの形成を通じた小産業体の成立過程や、ライブ・コンサートにあたる伝道集会のイメージが見えてきたのが収穫。特に後者、やはり、宗教そのものと宗教社会的な理解が足りないということが一番か。

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