2012年12月13日木曜日

アラン・ローマックス

今年は冬の仕上がりが早いなぁと、最寒期に向けて気合いを入れ直すこのごろ。
『American Ballads and Folk Songs』に前後して、『アラン・ローマックス選集 アメリカン・ルーツ・ミュージックの探究 1934―1997』(ロナルド・D・コーエン編、柿沼敏江訳)が届き、さすがに日本語の方が得意なので、こちらを先に読み通してしまう。何よりも、アラン・ローマックス著作ということで、邦訳自体が画期的だったのでは(2007年発刊)。
『American Ballads and Folk Songs』は、父ジョンとの共著で、ディスクに直接焼きつけるディクタフォンという録音機材で現地収集したフィールドワークが基になっており、この選集では、それら収集の経過の実際が語られ、フィールドのイメージが浮かび上がってきたのが、予習としても収穫だった。
レッドベリーを刑務所から解放するためのはたらきかけといった、よく知られた逸話などのほかで、認識が薄かった経歴も概括できた。民俗音楽の収集は北米にととまらず、カリブの島嶼や西欧などワールドワイドに及び、これらの経験と蓄積が「計量音楽学」、「計量舞踏学」の学際的研究傾倒に結びついていったという。たぶん本邦ではほとんど知らていなかった、アランのこうした学究活動は、マーガレット・ミード、グレゴリー・ベイトソンらに連関する文化人類学として、見識は真っ当に思えた。基底にエコロジカルな思考が流れているのも確か。
技術の進歩に支えられた録音・録画機材を駆使し、失われつつある楽曲・民俗パーマンスの記録、保存、研究に取り組む一方、もちろんテクノロジーの限界も心得る。都会のカントリー演奏家を「シティビリー」というのだそうだが、民俗音楽にこそ、そのヴァナキュラーな価値を一貫して最も重視するアランの慧眼に肯かせられる。
この書籍もサンプルCD付き、これから楽しむことに。

◆追記◆
放送録画ストックからジョン・ウー監督の「M:I‐2(ミッション・インパッシブル2)」(2000)を流し観して、内容としては「どうでもよかったな」と引けた感想を抱きつつエンドロールの楽曲クレジットをみると、スペイン語かと思われるタイトルに「アラン・ローマックスのアレンジによる」の記載を発見。3曲くらいはあったか。ローマックス収集曲が散りばめられていたとは。「どの曲?」と認識しないままに鑑賞を終えて、録画自体も消去してしまった。その後、サウンドトラック盤のデータなどをリサーチしてみたが、ローマック関係は収録されていないようだ。オリジナルスコアはハンス・ジマーだけど、どんな経緯でアラン・ローマックスが取り上げられたのやら。(2015/08/26)

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