2013年6月20日木曜日

「奇跡のリンゴ」から「くちづけ」へと、

「奇跡のリンゴ」(中村義洋監督)、「ローマでアモーレ」(ウディ・アレン監督)、「くちづけ」(堤幸彦監督)と、賛否分かれそうな映画の鑑賞が続くが、それぞれに味わいがあって私は楽しめた。「くちづけ」に関しては、「楽しめた」というのは不適切か。東京セレソンデラックスという劇団の宅間孝之氏の戯曲が原作ということで、この映画化まで認識がなく不見識を思い知る。映画は、知的障害者のグループホーム・セットや宅間氏本人ら役者達の台詞回しと芝居、あるいは挿入歌として「グッド・バイ・マイ・ラブ」の採用などが、舞台を踏襲しているように見て取れる。ローカル・モードを醸した橋本愛嬢の埴輪ファッションも。監督の色は導入くらいで薄く、オリジナルへのリスペクトがあるのかなとも。ちょっと考え直して、カットバックに適してた映画表現に対しオリジナル戯曲の時制構造はどうなっているの?と気になるところ。いつか観る機会があれば。
で、映画の演出は「笑いを取る」台詞と演出をベースにしつつ、障害を抱えて生きる当事者と家族を巡るさまざまな問題が浮き彫りされるのは、たぶん舞台と共通なのだろう。現実社会へのアイロニーなのか、「差別」への感度が高まり表現が縮こまってきたように感じる昨今にあって、「障害(者の特徴)を演じる」ことの是非を含めて、相当踏み込んだパフォーマンスを提示していると思う。この辺も舞台がオリジナルであればこそか。
私的な映画鑑賞では、竹中直人は最も避けたいキャラクターを有する俳優だが、この作品では、さして気にならなかった。これも幸い。
「奇跡のリンゴ」「くちづけ」で賛否の分かれ目は、映画に求めるエンターテイメントの質のとらえ方とシナリオ素材の考証にあるのかな。それを置いておいても、「奇跡のリンゴ」中村監督は職人技の無難なつくりをしたと思う。阿部サダヲ、相変わらずの怪演、プログラム・ピクチャーのヒロインを装うような菅野美穂もコントラストになっている。こちらも、農業の営み、農家の働き方と暮らしを知るという、問題提起がこもっている。

「くちづけ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆
※創作のあり方で刺激を受けて感じて(考えて)みたい方には★プラスで

「奇跡のリンゴ」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★★☆

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