2013年9月5日木曜日

「もうひとつのアメリカ史」

原爆投下の日に前後して、オリバー・ストーン氏が来日、再放映ではあったが、アメリカン大学で歴史を教えているというピーター・カズニック准教授とのコラボ・ドキュメンタリーオリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史」第1~10回と関連の番組をようやく見通すことができた。フランクリン・ルーズベルの下で副大統領であった、ヘンリー・ウォレスね。確かに興味をそそられる人物。NHKの番組内でも指摘されていたように、このアメリカ史は、ハリウッドを中心とした多くの劇映画、さらに言うと劇映画だけでなく、当時のニュース映画やドキュメンタリー、の引用を多用、コラージュ的なモーション・ピクチャーともいえる手法で、間を置かずエモーションをかき立てるつくり。マイケル・ムーアとか、米国産の「主張があるドキュメンタリー」(?)は、同じようなつくり方だよね。
それはそうと、このヘンリー・ウォレス、「スミス都へ行く」(1939)でジェームズ・スチュワートが演じた、若くして政治家となり国会で孤軍奮闘する純粋無垢な理想家に比定した演出がなされていた。経済苦境の時代、失職してホーボー生活をおくる元野球選手役のゲイリー・クーパーが大衆の代弁者としてヒーローに祭り上げれる策謀内幕を描いた「群衆」(1941)が、出てきた回もあったし。どうやら、オリバー・ストーンはフランク・キャプラ作品への評価・感心の程度が高いと見受けた。
私個人としても、キャプラが第2次大戦中、軍に志願して、「ホワイ・ウィー・ファイト?」として一連のドキュメンタリー、戦意高揚のためのプロパガンダ映画を製作したとか、理想主義と人情喜劇でバランスを取っていたキャプラ調の盛衰とか、「素晴らしき哉、人生!」(1946)を巡る神話(いかに受け入れられたか)など、映画作品とあわせてその人物像にも、かねがね興味を抱いていた。オリバー・ストーン監督には、フランク・キャプラに焦点を当てた作品を是非つくっていただきたいと頭をかすめたのだが。

「オリバー・ストーンが語る もうひとつのアメリカ史」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★★★☆
※僭越ながら、私を含めて戦後世代には必修との思いが。

◆追記◆
「素晴らしき哉、人生!」の本邦初公開は1954年ということだが、「スミス都へ行く」は何と!、対米宣戦布告前の1941年。以前メモった(2011/11/23)『素晴らしき哉、フランク・キャプラ』(著作・井上篤夫氏)の前談で山田洋次監督が、1970年代、「男はつらいよ」シリーズに客演した故・宇野重吉氏から、軍国主義の世相と新劇運動に対する侵食を悲嘆していた当時、たまたま観たこの映画で自殺を思い止まったと伝え聞いたエピソードを紹介している。開戦前の映画公開とその時代のキャプラ評価、さらに山田監督がフランク・キャプラを意識するようになったのは宇野氏の話を聞いて以降ということと合わせ、興味深いところである。

0 件のコメント:

コメントを投稿