2014年8月23日土曜日

「めぐり逢わせのお弁当」

インド映画を観ながらいつも感じるのは、現実日常会話にもこんなに英語が混淆(チャンポン)しているのーってこと。舞台はムンバイ(私世代ではボンベイ)のか、「めぐり逢わせのお弁当」(リテーシュ・バトラ監督)は最近、本邦で公開されるインド映画にしてはめずらしくダンスのない(音楽はあるけど)、近代化あるいは産業社会化(インダストリアリゼーション)の狭間で幸福感を自問せざるをえなくなる、市井を写し撮ったよくできたヒューマン・ドラマであった。カセット・テープで聞く映画音楽の愛好者で、悩めるヒロインの弁当クッキングの指南役である「おばさん」は声のみのキャスト。而して、ヒロインと弁当が誤配送された先の会社勤めから引退間近のやもめ初老男とのシリアス基調の手紙交換を軸に、伏線は彼の後継となるらしい、自称「孤児」でつかみどころのない青年の狂言回しが塩梅至極のスパイス。ほとんど、この3人の描写あるいは掛け合いで構成されたプロットとその演出・編集に妙が見て取れる。
シナリオの法則というか、男女のすれ違い重ねで「切なさへの収斂」が予感される展開は、どこに落ち着くのか?興味はつながれるが、おそらくは鑑賞者のモチベーションに委ねられる。
一般論として、幸福感を見詰め直すようになれるのは社会が成熟を希求し始めた兆しとして好ましく思う。わが国ではどうなんだ。グローバールな経済社会でローカル各地のテイク・オフには、どんなランディングの諸相があるのかと。

「めぐり逢わせのお弁当」の評価メモ
【自己満足度】=★★★★☆
【お勧め度】=★★★★☆

2014年8月20日水曜日

♪リング・オブ・ファイアーつながりてアニマルズへ

ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)の評伝本『Johnny Cash : The Biography』(著作・Michael Streissguth氏)がらみて「リング・オブ・ファイアー」を調べていると、アニマルズ(The Animals)バージョンがあることに気づく。アニマルズ、とりわけエリック・バードン(Eric Burdon)のボーカルに心酔いていた友人の遺品を掘り起こしてみると、1968年の録音で聴くことができた。最近聴いてなかったけど、もともと好みのブリティシュ・インベンションの雄、CD2枚組のコンプリート・コンピレーション盤へと進む。やっぱ、サウンド、クールだね。
「ザ・ハウス・オブ・ザ・ライジング・サン(朝日のあたる家)」は、キーボードのアラン・プライス(Alan Price)となっているなど、やっぱり楽曲のクレジットが気になるなぁ。ボブ・ディラン(Bob Dylan)のファースト・アルバムより2年遅れの1964年の録音で、ちょうど渡英していたディランをかえって鼓舞したロック・テイストたっぷりの味わいが魅力だが、まあ、基本的にはデイブ・ヴァン・ロンク(Dave Van Ronk)の曲調がベースなんでしょうとも。
ほか、「アイム・マッド・アゲイン」はボ・ディドリー(Bo Diddley)の「アイ・アム・ア・マン」が元歌かと思うが、クレジットはジョン・リー・フッカー(John Lee Hooker)とか。マディ・ウォーターズ(Muddy Waters)の「マニッシュ・ボーイ」はじめ派生バージョンやカバーは多々耳にするが、フッカー版は記憶にないような、、、通して、聞き飽きないことに違いはないのだが。

◆過去のメモ◆
□♪リング・オブ・ファイアー(2011/12/07)
□「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」(2014/06/19)

2014年8月7日木曜日

フォルサムからクレセント・シティにもどる

思い立って、ジョニー・キャッシュ(Johnny Cash)の評伝本『Johnny Cash : The Biography』(著作・Michael Streissguth氏)を読み始める。そうか、ジョニー・キャッシュがレコード会社との契約に向けてポイントとなった楽曲「フォルサム・プリズン・ブルース」って、ポピュラーなジャズ系アレンジを手がけていたゴードン・ジェンキンス(Gordon Jenkins)作の「クレセント・シティ・ブルース」が元歌だったのか。ゴードン・ジェンキンスの主要なオーケストレーションの仕事は1950年代が中心で、ナット・キング・コール(Nat King Cole)、フランク・シナトラ(Frank Sinatra)など王道ですなぁ。
別にもう少々調べてみると、ゴードン・ジェンキンスが1953年にレコード化したこの楽曲のさらなるルーツは、ブギウギ・ピアノマンのリトル・ブラザー・モンモゴメリー(Little Brother Montgomery)が1930年代に奏でた「クレセント・シティ・ブルース」の旋律にさかのぼることができるという。そこそこのジャズ・スタンダード愛好者でいたつもりであるが、「クレセント・シティ・ブルース」、スタンダードというほどには認知されていないよなぁーとか考えつつ。フォルサムもクレセント・シティもカリフォルニア州にあると思ったが、クレセント・シティはおそらくニューオーリンズの別称なのだろう。この楽曲の変遷も面白すぎ。
評伝本にもどって、列車、監獄、殺人、アウトロー、ブルーな心情など米国バラッドに特徴的に好まれる素材で編まれた「フォルサム・プリズン・ブルース」の歌詞には、ジミー・ロジャース(Jimmie Rodgers)の「ブルー・ヨーデルNo. 1 (T・フォー・テキサス)」を下敷きした部分もあるとも。
ジョニー・キャッシュ、実際にフォルサム刑務所等でのライブを行い、それらの音盤化でキャリアの中興を築くわけだから(カントリー・レジェンド、2013/06/24 & フォルサム・プリズンのレジェンドといえば、2013/06/26)、この曲のなおさら意義深さに想い入ってしまう。

◆参考◆
「クレセント・シティ・ブルース」、YouTubeから引用、紹介です。


◆余談◆
「クレセント・シティ・ブルース」と同じように意外とスタンダードではない楽曲で思い出したのは、「マレフィセント」(ロバート・ストロンバーグ監督)でエンディング・テーマで採用されていた「ワンス・アポン・ア・ドリーム」。もちろん、アニメーション版「眠れる森の美女」(1959)の主題歌のカバーであるが、例えば、「白雪姫」(1937)の「いつか王子様が」ほどには受け入れられていないよね。「ワンス・アポン・ア・ドリーム」のムーディなオールド・ファッション、私は好きです。作詞・作曲者はそれぞれクレジットされているわけだが、アニメ版はチャイコフスキーのバレエ音楽をベースにしており、この楽曲のその一編をなすワルツ(いわゆる、ガーランド・ワルツ)がモチーフ。「マレフィセント」、特にコメントはないけど、「眠れる森の美女」は見直したくはなる。

2014年8月2日土曜日

♪スペイン革のブーツ、ってバリアントも

♪ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン(2014/07/23)のタイトル曲、「パス・オブ・ヴィクトリー」の流れできて再会、ボブ・ディラン(Bob Dylan)のブートレッグ・シリーズ第9集は『ザ・ウィットマーク・デモ』(2010年)には、「ガール・フロム・ザ・ノース・カントリー(北国の少女)」、「ブーツ・オブ・スパニッシュ・レザー(スペイン革のブーツ)」が続きで収録されており、血縁性がむべに把握できる(ディランの♪フェアウェル、2014/06/01)。
「スペイン革のブーツ」の詩作は、ディランがニューヨークで出会ったミューズであるスージー・ロトロの渡欧というパーソナルなイベントとトラディショナル・フォークの「ブラック・ジャック・デヴィッド(またはデヴィー)」のヒントが化学反応したものであったか。これが本邦においては松本隆氏によって「木綿のハンカチーフ」に編み直されるとは面白すぎ。ディランにバリアント創作のきっかけを与えたマーティン・カーシー(Martin Carthy)版の「スカボロー・フェア」、そろそろ聴いてみるか。

◆参考◆
YouTubeから引用、紹介です。

◆追記◆
11月だったかなBS‐TBSの番組「SONG TO SOUL One piece of  the eternity―永遠の一曲」で取り上げられたサイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)の「スカボロー・フェア/詠唱」の回(たぶん再放送)を拝見。マーティン・カーシーもコメントを述べ、「スカボロー・フェア」の演奏も披露していた。マーティンの功績は、伝統のバラッド「エルフィンナイト」のバリアントの一つにギターによる伴奏を付けた旨の解説で、イワン・マッコール(Ewan MacColl)だったか無伴奏のレコードも流されていた。なるほどね。等々、英国でのバラッド研究者らの話は、あまりにも興味深い内容で一言一句、検討してみたくなる。マーティンによると、「北国の少女」はディランによる「アレンジ」の範疇として語っていたようだが、メロディーの由来については語っていなかったと受け止めたが、いかがなものか。(2014/12/02)

2014年7月26日土曜日

「私の男」

海外映画祭で受賞したからという話題性はあったものの、道内ロケーションを肝として熊切和嘉監督であるという動機で観てみた「私の男」。正直、文字の方が分かりやすいのだろうとの感想。おそらく、プロットは映画仕様に再構成されているのだう。画像・映像的に不満はないが、描こうとしたドラマと情念に共鳴するところがなかったのが分からなさの原因。映画話法には敢えて不足気味に語ることでの心象効果という手法があるが、多分に不足し過ぎではとも。
背中に引っ掻き傷?あったよね。
ドラマツルギーの成否の一方で、モチーフ旋律のドボルザーク引用は通俗すぎると受け取ったし。

「私の男」の評価メモ
【自己満足度】=★★★☆☆
【お勧め度】=★★☆☆☆

2014年7月23日水曜日

♪ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン

いまさらながら、これほどにはと、ボブ・ディラン(Bob Dylan)にのめり込んでしまい、ブートレッグ・シリーズの一部へと食指を伸ばしてしまい聴き始めるはめに。CD3枚組みの1枚め第1集(1991年)は、初期のアルバム・アウトテイクや出版登録用のデモが主で、ピアノ弾き語りがあったりのシンプルなサウンドと楽曲群は今現在の私の嗜好にフィットするもので大満足。「ブロークバック・マウンテン」(アン・リー監督、2005)で書き留めた「ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン」のディラン・バージョンを通して聴けたわけだし(〈ブロークバック・マウンテン〉を聴いてみる、2013/10/06)。ディラン自身はこの曲の元歌はブラインド・アーベラ・グレイ(Blind Arvrella Gray)というシカゴのストリート・ミュージシャンに教わったと言ってるそうだが。確かに、レッドベリー(Leadbelly)の「ショーティ・ジョージ」からは飛躍がある意義深きバージョン、パフォーマンスだと思う。
由緒ある、これぞトラッド「ハウス・カーペンター」があり、メロディ・ラインが「風に吹かれて」に援用された、オデッタ(Odetta)のスピリチュアル歌唱にならったであろう、「ノー・モア・オークション・ブロック」もしみじみ聴けた。ピアノ+ハーモニカを自ら奏でる「パス・オブ・ヴィクトリー」は、どこかハンク・ウィリアムス(Hank Williams)の「アイ・ソー・ザ・ライト」を思い起こさせる印象が強い。さて、ルーツ?は、、、
と、、、「パス・オブ・ヴィクトリー」、このタイトルに限ってはCD付帯のブックレットには示唆が乏しく、しばし思い出して、DVD「ダウン・ザ・トラックス:ザ・ミュージック・ザット・インフルエンスド・ボブ・ディラン」(スティーヴ・ガモンド監督、2008・英)によると、元歌はカーター・ファミリーの「ウェイウォーン・トラベラー」だと指摘、さらなる発展形が「時代は変る」だとの説にも言及していた。

◆追記◆
ブートレッグ・シリーズ第9集は『ザ・ウィットマーク・デモ』(2010年)という、デモ・パフォーマンスの集成でCD2枚セット。かなりの楽曲が第1集と共通していて聴き比べるのが楽しい。「パス・オブ・ヴィクトリー」、こちらはギター&ハーモニカ伴奏だぞ。押し並べて音質がこもっているのが惜しいかな。
第9集のブックレットは音楽著作権ビジネスの実際、例示として幾ばくかの疑問には答えてくれた。惜しむらくは、私の関心度合いの高い楽曲の発生とバージョンの妙へのフォーカスが不足であったこと。(2014/07/27)

◆参考◆
たまたまの配信にあり、「ヒー・ワズ・ア・フレンド・オブ・マイン」、YouTubeからデイヴ・ヴァン・ロンク(Dave Van Ronk)歌唱の引用、紹介です。

2014年7月8日火曜日

T=ボーン・バーネットつながり

ボブ・ディラン(Bob Dylan)のルーツ・ミュージックと初期の楽曲パフォーマンスに思いのほか、のめり込んでしまい、、、渉猟しているうちに、1970年代半ばの特異なツアー「ローリング・サンダー・レヴュー」への随行はT=ボーン・バーネット(T-Bone Burnett)の初期のキャリアになっていることに気づく。なるほど、なるほど。残念なことに「ローリング・サンダー・レヴュー」のライブ音盤化は手元にストックしていなかった。
あと、このツアーは言われるように1975年が米国の建国200年である節目に際して、ミンストレル風の興業っていうモチーフがディランにはあったんだろうな。ここは日本人感覚では及びづらいところ。ディランはミンストレルをどうとらえていたかとか、なかなか興味は尽きない。
T=ボーン・バーネットの映画音楽での仕事、□「インサイド・ルーウィン・デイヴィス」(2014/06/19)、□〈コールド・マウンテン〉も聴いてみる(2013/10/25)、□「オー・ブラザー!」を聴き直す(2013/05/10)、□〈クレイジー・ハート〉(2012/06/10)――で言及していた。
そのほかでも、「アメリカ、家族のいる風景」(ヴィム・ヴェンダース監督、2005)、「ウォーク・ザ・ライン/君につづく道 」(ジェームズ・マンゴールド監督、2005)の音楽プロデュースと作曲で、とてもよい仕事をしている。調べてみると、「ハンガー・ゲーム」 (ゲイリー・ロス監督、2012) ではエグゼクティブ音楽プロデューサーであった。こっちも観ているけど音楽の印象が思い出せない。ちなみに、「コールドマウンテン」(アンソニー・ミンゲラ監督、2004)ではサウンドトラックのプロデューサー?だったか。映画音楽の作者が別のクレジットでもサントラ系、エグゼクティブ音楽プロデューサーでの業績はまだまだありそう。この辺りの再リサーチしてみるか。

◆追記◆
T=ボーン・バーネットは、マーティン・スコセッシ総指揮によるブルース・プロジェクトの連作映画の一つ「ソウル・オブ・マン」(ヴィム・ヴェンダース監督、2003)ではミュージシャンとして出演し、J・B・ルノアー(J. B. Lenoir)の「ドント・ドッグ・ユア・ウーマン」を演奏していた。それにしてもアルバム、音盤のプロデューサーとしてのキャリアは傑出しているなぁ。ギリアン・ウェルチ(Gillian Welch)からエルヴィス・コステロ(Elvis Costello)、カントリー、ブルーグラスやブルース界の御大たち等々と、確かに嗜好がフィットする。
リサーチして分かったのでは、矢野顕子やディランの子息も手がけていたとは。
さらに、
□「貧者ラザロ」で、たどってみる(2014/11/26)